お買い得なのに自慢できる欧州産スクーター プジョー「ツイート150」試乗!

1810年、フランス東部のエリモンクールを拠点に製鉄業をスタートしたプジョー。創業210周年という、じつに長い歴史を持ち、現代ではクルマのメーカーという印象が強いですが、スクーターも古くからラインナップし、欧州を中心に人気を博しています。バイクジャーナリストの青木タカオが乗りました。

クルマだけでじゃないプジョーの伝統

 プジョー・ブランドにモーターサイクルが存在することを説明すると「知らなかった」と驚かれることがよくありますが、じつはその歴史は長く栄光に満ちたものです。

プジョー「ツイート150」に乗る筆者(青木タカオ)

 プジョー初のモーターサイクルは1893年に誕生し、1907年には現在でも開催されている“最も危険で最も崇高なレース”マン島ツーリストトロフィの2気筒クラスで勝利を収めています。1914年には122.49km/hで二輪での世界最高速記録を樹立し、ボルドール耐久レースで2800km以上を走行した1934年にはツール・ド・フランスなどでも優勝して世界記録を3つ打ち立てるなど、ライオンマークのプジョーはモーターサイクルブランドとしても輝かしい歴史があるのです。

 初のスクーターは1953年に登場し、現行の「DJANGO(ジャンゴ)」シリーズは50年代のクラシカルなデザインを踏襲し、伝統と先進性を融合させていますが、今回乗ったのは「TWEET(ツイート)」と名乗る新しい系譜となります。

1953年に登場しプジョー「S55」

 国産スクーターと明らかに異なる点は足まわりで、ホイール径が大きいこと。同じ軽二輪スクーターで比較すると、ヤマハ『NMAX155』は前後13インチ、ホンダ『PCX150』が前後14インチであるのに対し、ツイート150は前後16インチです。

 悪路や段差においてもハンドルを取られることが少なく安定した走行ができる大径ホイールスクーターは、石畳など凸凹のある路面が多いヨーロッパでは主流で、タイヤサイズも前後とも110/70と比較的細め。ヒラヒラとした軽快なハンドリングと、ゆったりとしたライドフィールが味わえます。

 ブレーキは前後ディスク式で、前輪はABS搭載。ステンメッシュホースが採用され、制動力やタッチも申し分なし。四輪同様、スクーターでも走りに対する装備は疎かにしていません。

高速道路も走行可能な軽二輪枠

 搭載される空冷SOHC2バルブ単気筒エンジンは151ccの排気量を持ち、最高出力11.56PS/8,000rpmを発揮。ゼロ発進からの加速は国産スクーターと比較すると穏やかですが、速度レンジが上がってからは排気量によるアドバンテージが得られ、ゆったりと余裕ある走りに。流れの速い欧州の道路事情に合わせたセッティングと言えるでしょう。

プジョー「ツイート150」。グリップ部まで覆う大型のウインドスクリーンが高い防風効果を生み出します

 日本で販売されるスペシャルエディションでは、防風効果の高いウインドスクリーンも標準装備し、速度域が上がっても快適な走りを実現。グリップ部も半分以上隠し、ライダーの上半身だけでなくハンドルを握る両腕も風から守ります。

 シート下のトランクはジェットタイプのヘルメットが1つ入る程度で、広くありませんが、容量30Lのトップケースを備えて積載性を飛躍的にアップ。ラインマークのエンブレムがつく純正オプションパーツで、オーナーの所有欲も満たしてくれるはず。また、シート下にはサーキットブレーカーのスイッチがあり、「LOCK」の位置にするとエンジンが始動できなくなり盗難防止に役立ちます。

 ステップボードがフルフラットで、乗り降りしやすくフットスペースも広々としているのもコンフォート性の向上に貢献しました。ライディングポジションに自由度があり、シートも足つき性を考慮し絞り込まれているものの座面が前後に広く着座位置を選ぶことが可能。大径ホイールながらシート高は770mmと低く、足つき性も良好です。

身長175cmの筆者(青木タカオ)がシート高770mmの車体にまたがった状態

 クルマでも人気のあるプジョー。フロントマスクのエンブレムは誇らしげで、見た目にもプレミアム感があります。オーナーとなれば、自慢のできる日常の足となってくれそうですが、さぞかしお高いのでしょう。と思いきや、ビックリ! 価格設定は驚くほどにリーズナブルで、なんと税込み29万7000円と、30万円切りを実現。ウインドシールドとトップケースを標準装備していることを考えると、このプライスはとてつもなく大きな強みと言えるでしょう。

ホンダ PCX150=38万600円
ホンダ PCX150<ABS>=40万2600円
ヤマハ NMAX155 ABS=385,000円

【了】

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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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