バイクのマフラーが多くのモデルで右側に出ているのはなぜか

バイクを前から見ると左右対称のように見えます。しかし、実際にはバイクは左右非対称の構造をしています。すべてのバイクが当てはまるわけではありませんが、マフラーはそのなかでも左右非対称を印象づけるパーツではないでしょうか。

バイクのマフラーが右側にあるのはなぜ?

 バイクを前から見ると左右対称のように見えます。しかし、実際にはバイクは左右非対称の構造をしています。特にマフラーはバイクの右側から出ている場合が多いです。なぜ右側にマフラーが出ていることが多いのでしょうか。

バイクのマフラーは右側に出されているモデルが多い

 後ろからバイクを見ると、その左右非対称さがわかる部分があります。それは後輪です。多くのバイクは後輪の左側にドライブチェーン、スプロケットが装着されています。ドライブチェーンやスプロケットを外してみるとその重さがわかりますが、想像以上に重く感じると思います。

 多くのバイクは、それを後輪の左側につけているため、右側にバランスをとる何かが必要です。この場合、マフラーがその役目をしていると言えるでしょう。

 さらにスプロケットとドライブチェーン、マフラーを分けておくことは、他にもメリットがあります。それは騒音軽減とバンク角の確保です。走行時のドライブチェーンのノイズとマフラーの排気音を、車体の左右に分けることで騒音の軽減を図っています。

 バイクの特徴の1つでもある車体を倒しながら曲がる。これをより深く倒すためには、バイクの車体から突起している部分を減らす必要があります。もし、スプロケットとドライブチェーンがある左側にマフラーまで重ねると、その分だけ左側に飛び出した部分ができることになるでしょう。それではバイクの左側のバンク角が制限されてしまうことになると言えます。

スズキ「HAYABUSA(隼)」のマフラーは左右二本出しマフラーを採用

 では、左右でマフラーを出している場合はどうなるかという疑問がでるかもしれません。例えばスズキの大型スポーツバイク「HAYABUSA(隼)」は車体の左右からマフラーを出しています。左右のバランスを取るという観点で見ると不適切のように見えます。

 しかし、左右二本出しマフラーもバランスを取るため、車体からマフラーまでのクリアランスが左右非対称になっています。具体的には右側ほうが車体より離れて配置され、左側のほうがスプロケットやドライブチェーンに近い配置になっています。

センターアップマフラーを搭載しているホンダの「CBR600RR」

 バイクの真後ろからマフラーが出ているように見えるセンターアップマフラーも左右対称ではありません。ホンダのスポーツバイク「CBR600RR」はエキゾーストパイプの取り回しの一部を右側に配置して、最終的に排気口が座席の下に通っています。

マフラーにも様々な種類がある!

 一言でマフラーといっても種類があります。大まかに分けるとフルエキゾーストマフラーとスリップオンマフラーの2つです。フルエキゾーストマフラーは、エンジンの排ガスが通るエキゾーストパイプ(通称エキパイ)と排ガスの音を静かにさせるサイレンサーが一体なったものをいいます。

 スリップオンマフラーは、エキゾーストパイプとサイレンサーを分けることができ、サイレンサーだけカスタムパーツにすることが可能です。一般的に「マフラー」という言葉はサイレンサーのことを指して使われていることが多いと言えます。

 エキゾーストパイプとサイレンサーが一体になっているフルエキゾーストマフラーは値段が高くなる傾向があります。ですが、バイクの見た目の変化と軽量化ができると言われています。ただし、フルエキゾーストマフラーを取り付けるとセッティングの変更が必要なる場合があります。純正のものに比べて、高回転向けなるからです。

KAWASAKI「Z900RS」用のフルエキゾーストマフラー「手曲ストレートサイクロン Duplex Shooter」

 カスタムパーツブランドの「ヨシムラ」から販売されているKAWASAKIのZ900RS用のフルエキゾーストマフラー「手曲ストレートサイクロン Duplex Shooter」は高速域のパワーが上がり、中速域のパワーが少しダウンするようになっています。

 バイクをパーツに合わせて調整し、セッティングを変えないと、交換したカスタムパーツの特性を活かしきれません。例外的ですが、フルエキゾーストマフラーのなかには左側にマフラーを出すものがあります。

 カワサキのゼファー用にカスタムパーツを販売するAnny’s(アニーズ)は、手曲げ集合管で左側から出るフルエキゾーストマフラーを扱っています。

 一方でスリップオンマフラーは、サイレンサーとエキゾーストパイプを個別にカスタム可能です。そのためエキゾーストパイプは純正、サイレンサーはカスタムパーツということができます。注意点はバイクの純正パーツがサイレンサーとエキゾーストパイプに分けることができるかどうかです。もし分離できなければ、エキゾーストパイプもカスタムパーツに変更しないと、スリップオンマフラーは取り付けができません。

YOSHIMURA チタン Slip-On B-77 サイクロン

 フルエキゾーストマフラー、スリップオンマフラー、両方に言えることですが、マフラーをカスタム化すると排ガスの放出の仕方が純正とは違ったものになります。その場合はバイクの性能がダウンしないように調整をするようにしましょう。「排ガスの抜け」が良くなるという表現がされたりします。理由は純正サイレンサーとカスタムパーツのサイレンサーは構造が違うからです。

 サイレンサーの構造は大きく分けると2つ。「隔壁」と「ストレート」と呼ばれるタイプがあります。隔壁とは、名前の通りでサイレンサーのなかに排ガスが通る空間が仕切られており、排ガスは仕切られた空間を蛇行するように流れ、排気口から放出されます。

左右2本出しマフラーの内部構造をチューニングしたホンダの「Gold Wing」

 この仕切りの間を通り抜けているうちに、排ガスの音の小さくなっていく仕組みです。消音効果が大きいですが、サイレンサーが重くなるのが欠点とされています。純正マフラーは「隔壁」の構造をしているのが多いとされます。

 もう1つのストレートは、サイレンサーのなかが筒状に一直線になっており、エキゾーストパイプから流れる排ガスがまっすぐ排気口に向かっていく構造になっています。高回転域の性能が求められるスポーツバイクのサイレンサーとして使用されることが多いです。欠点は消音材で音を吸収する前に大気中に排ガスが放出されるため、騒音の問題になりやすいことです。

 純正の「隔壁」のサイレンサーから、カスタムパーツの「ストレート」サイレンサーにすることで、排ガスの抜けがよくなります。この「抜けがよくなる」ことで、エンジンの高回転域の馬力が上がります。それは中低速域をよく使うビックスクーターでも同様です。

 ヨシムラから販売されているヤマハT-Max用のスリップオンマフラー「TRI-CONE サイクロン EXPORT SPEC」の説明書には、高回転域の馬力が上がるグラフが記載されています。

 単純にマフラーを換えるだけでなく、調整も忘れずに行いましょう。

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 バイクは左右非対称、その左右のバランスをとるため、マフラーやエキゾーストパイプの配置は適切な位置に取り付けられています。

 マフラーをカスタムパーツに交換するときは、エンジン特性が純正と変わる場合があります。そのときは専門のチューニングが必要になるため、専門の技術があるカスタムショップに頼むようにしましょう。

【了】

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