ポイント獲得率と完走率でトップ! “ホンダカップ”の中で見えてきた中上貴晶の真価

近年のMotoGPはドゥカティが圧倒的な強さを誇り、日本メーカーは不振をかこっている。それに伴い、ホンダで苦境にあえぐ中上貴晶もここ何年かの表面的なリザルトで、とかく実力を過小評価されてきた。だが、RC213Vを走らせるレギュラーライダー4人の成績を比較する中で、侍ライダーの真価が見えてきた。

RC213Vで走るレギュラーライダーの4人を比較

 スポーツの世界では「チームメートは最大の敵」という表現がよく使われる。特に同じ道具を使って争われるモータースポーツでは同僚との比較が自身の評価に直結し、チーム内でのポジションはもとより今後のキャリアにも大きな影響を与える。隣にいるチームメイトを倒さないと始まらない……それがモータースポーツの残酷な一面だ。

 近年のMotoGPはドゥカティが圧倒的な強さを誇り、優勝のみならず、しばしば表彰台を独占し、さしずめ“ドゥカティカップ”とでも表現すべき様相を呈している。その一方で長らく最強の名を欲しいままにしてきたホンダは低迷。陣営のライダーが揃ってポイント圏を出入りするようなレースも見られ、そんな状況を揶揄してブービー争いの“ホンダカップ”と皮肉る声すら聞こえてくる。

IDEMITSU Honda LCR 中上貴晶選手(第15戦インドネシアGP)
IDEMITSU Honda LCR 中上貴晶選手(第15戦インドネシアGP)

 日本のエース、中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)も苦境にあえいでいるが、ここ何年かの表面的なリザルトで、とかく実力を過小評価されがちなのも確かだ。

 新型エアロパーツの投入がひとり遅れてインドネシアGPになるなど、完全なイコールコンディションで戦ってきたとはいえない部分もあるが、ちょうどシーズンの3/4を消化した段階でレギュラーライダー4人の成績を比較し、中上の真価を明らかにしていこう。

ポイント獲得率と完走率がホンダ陣営のトップ

 まず第15戦インドネシアGP終了時点でのランキングを確認すると、31ポイントを獲得しているヨハン・ザルコ(LCRホンダ・カストロール)が17位でホンダ勢最上位。26ポイントの中上が18位、20ポイントのジョアン・ミル(レプソル・ホンダ・チーム)が19位と続き、ルカ・マリーニ(レプソル・ホンダ・チーム)は5ポイントの24位。ワイルドカードで計5戦にエントリーしたテストライダーのステファン・ブラドルが2点の25位だ。

CASTROL Honda LCR ヨハン・ザルコ選手(第15戦インドネシアGP)
CASTROL Honda LCR ヨハン・ザルコ選手(第15戦インドネシアGP)

 獲得したポイント数では陣営2位の中上だが、決勝レースでのポイント獲得率は15戦中10回の66.7%でホンダ勢トップ。入賞9回で60.0%のザルコを上回っており、サバイバルレースになってもしっかり最後にポジションアップし、ポイントを持ち帰る展開も多い。レプソル・ホンダに所属するミルとマリーニの獲得率がそれぞれ42.9%と14.3%と低いので、LCRホンダふたりのしぶとさが光る。

 完走率も中上とザルコが共に13完走の86.7%で同率1位。12完走したマリーニの85.7%がそれに迫るが、本来エースであるべきのミルは8完走の57.1%と低調。

 スプリントレースの完走率でも中上が93.3%でトップ。ザルコとマリーニが80.0%で並び、こちらも71.4%のミルが最下位だ。スズキでチャンピオンに輝いた2020年はポイント獲得率と完走率が両方とも78.6%だったので、いかに今季のミルが苦しんでいるか分かる。

Repsol Honda Team ルカ・マリーニ選手(第15戦インドネシアGP)
Repsol Honda Team ルカ・マリーニ選手(第15戦インドネシアGP)

 ホンダ陣営の中で最上位になった回数を比べるとザルコの7回が最多で、中上は4回で2位。後はミル3回、マリーニ1回の順になっており、ランキング通り、2番目に貢献しているライダーと評価することができるだろう。

安定感抜群も爆発力で埋没する2024年シーズン

 安定感抜群だが、爆発力の面でやや物足りないのが今シーズンの中上だ。ザルコの決勝レース最高位が9位なのに対し、中上とミルは11位、マリーニは12位と水を開けられている。9位まで入賞のスプリントレースでもザルコとミルは1回ずつポイントを獲っているが、中上とマリーニは1回もない。

Repsol Honda Teamジョアン・ミル選手(第15戦インドネシアGP)
Repsol Honda Teamジョアン・ミル選手(第15戦インドネシアGP)

 レースの平均順位も日曜の決勝が14.3位で2番目、土曜のスプリントが16.4位で3番目と少し埋没してしまっている印象だ。

 一発の速さが問われる予選の平均順位はザルコの15.7位、ミルの19.3位、マリーニの20.2位に対し、20.5位。予選最高位でもザルコの7位、マリーニの15位、ミルの16位に及ばない17位といずれも4番目。予選最上位になった回数も1回だけだ。ちなみに金曜午後のプラクティスで上位10名に入ったライダー+予選Q1の上位2名が進める予選Q2へのホンダライダーの進出は、ザルコの2回のみとなっている。

 ウォームアップ走行で快走を見せることもあり、単独走行の速さには定評がある中上。予選上位にも食い込みたいところだ。

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