ホンダ「スーパーカブ」がベースとは思えない! 世界のカスタム・カブ事情に迫る

世界中のユーザーから愛されているホンダ「カブ」は、実用的な使い方以外にもカスタムバイクの素材として広く活用されています。ここではそのカブ・カスタムの一例を紹介していきましょう。

米国と日本、インドネシア。それぞれの国に見るスーパーカブ・カスタム

 1958年に発売されたC100を皮切りに2017年には累計で1億台の販売台数を突破したホンダ「スーパーカブ」は、2019年現在も新型が販売され、その販売台数を伸ばし続けているベストセラーモデルです。

ホンダ「スーパーカブ」をベースにしたカスタムバイク

 日本はもとより、世界中で愛され、様々なステージで活躍するこのモデルですが、やはり新聞配達や郵便配達、蕎麦屋や中華料理屋の出前のアシとして活躍する“実用車”というイメージを抱く方が多いでしょう。

 現行モデルにおいては、定地燃費(時速30km)105km/L(50ccモデル)という高い経済性と、カブならではのタフな耐久性など、このマシンが世界中から愛される要因は様々あるのですが、その一方でカスタムバイク製作のベースとして“趣味のバイク”に姿を変えたものも多く見受けられます。

 ここでは、日本とアメリカ、そして小排気量車のカスタムが盛んに行われているインドネシアのショップで製作された様々なスタイルの“世界のスーパーカブ・カスタム”たちを紹介していきましょう。

●Chabott Engineering(チャボ・エンジニアリング)/アメリカ

米国「チャボ・エンジニアリング」によるカスタム・カブ

 1992年に愛知県岡崎市でパーツメーカーのPROTOの一部門としてZero Engineering(ゼロエンジニアリング)を立ち上げ、日本はもとより世界から注目を集めるカスタム・ハーレーを製作した木村信也氏は、2006年からは独立と共に拠点をアメリカへ移動。様々な車種をベースにしたカスタムを生み出し続けています。

“Handsome SS”と名付けられたこのカスタム・カブは、米国で開催されたジャパニーズ・クラシックバイクを中心としたショーへの出展を依頼された際に製作したもので、ハンドメイドらしい味わいが残る“チャボ”らしいスタイルに仕上げられています。

 ステムからテールにかけて製作された燃料タンクを兼ねたボディワークは、あえて板金跡が残る荒々しい仕上げですが、これは板金後の表面を整える工具“イングリッシュホイール”を、あえて使用しないゆえのものです。

 そこには“カスタムマシン=世界で唯一の存在”という木村信也氏の哲学が強く込められているといえそうです。また前後に装着されたHoosier(フージャー)製ドラッグスリック・タイヤもアメリカで作られたカスタムバイクらしさを感じさせる一因でしょう。

●2%er(ツーパーセンター)/日本

滋賀県のショップ「2%er(ツーパーセンター)」によるカスタム・カブ

 1970年代後半、リアタイヤが路面を掘る(Dig)するドラッグレーサーをモチーフにしたといわれるDigger(ディガー)スタイルのカスタムですが、それをスーパーカブという素材で見事に表現したものが、滋賀県のショップ、ツーパーセンターによる一台です。

 このカスタムバイクは強度を確保するという部分を大前提にしてメインフレームを大胆にモデファイし、その上でスイングアームを残しつつリア周りをリジッド化(懸架装置なし)。それらの加工によって“低く長い”ディガーらしいシルエットが構築されています。

 その他、各部に目をやっても鋭角的なデザインのタンクや手前に引かれたハンドルなどもディガーの定義に則ったもので、ご覧のとおり、かなり高い完成度を誇っています。

 車検制度がない小排気量車ゆえの……と書いてしまうと、あらぬ誤解を受けてしまうかもしれませんが、製作者である山口隆史氏の自由な発想と遊び心を強く感じさせる一台です。

●ZAT BESI CYCLES/インドネシア
HONDA SUPER CUB 70

インドネシア「ZAT BESI CYCLES」によるカスタム・カブ

 国内で流通するバイクが小排気量車中心のインドネシアですが、そうした状況が起因となってか、今やスーパーカブ等の車両をベースにしたカスタムバイクに関していえば、同国は世界最高峰のレベルといえるかもしれません。

 写真の車両はインドネシアのZAT BESI CYCLESが手がけた一台で、特徴的な形状にモデファイされたメインフレームやエンジンに施された装飾、そしてスイングアームが片側にしかない“プロアーム”化されたリア周りなどは純粋にカスタムとして見ても、かなり高いレベルに仕上げられています。

 現地ではハーレー・ダビッドソンをはじめとする大排気量車のカスタムも存在しますが、やはり現実的にはカブのような小排気量車がシーンの中心であることは紛れもない事実です。たとえば日本や他の国ではセカンドバイク的なものとしてカブのカスタムを手がけることが多いのに対して、インドネシアでは良い意味で“本気”であることが伺えます。

 これらのカスタム・カブを見る限り、ベース車両の排気量、その大小に関わらず創り手が注ぐ情熱の熱量こそがカスタムの完成度を左右することを示しているでしょう。

【了】

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Writer: 渡辺まこと(チョッパージャーナル編集長)

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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