ホンダ「CBR400R」 空白の時間を埋めるのに最適なスポーツモデル

ホンダ「CBR400R」とマツダ「ロードスター」2台のライトスポーツモデルに、レーシングドライバー木下隆之氏が試乗。クルマのプロがスポーツバイク「CBR400R」を上手く操れるのか!

空白の時間を埋めるには最適なCBR400R

 バイクのない空白の40年を埋めるべくリハビリ中の僕にとって、レーサータイプは荷が重いと思っていました。立ちゴケだけはしたくありませんし、発進時のエンストもご法度です。そもそも、フロントカウルに潜り込むような前傾姿勢でライディングなどして、腰痛でも引き起こしたら身も蓋もありません。まずシート高の低いレブル250あたりから徐々にバイク感を取り戻そう・・と計画的に考えていたわけです。

クルマから見たCBRは、発進する様子がとてもリズミカルな印象

 ですが、ある日のこと、突如してレーサータイプへの興味が芽生えました。その日僕はマツダ・ロードスターでドライブしていたのですが、赤信号待ちで並んだCBR400Rに気持ちが吸い寄せられたのです。空は青く晴れ渡り、そよぐ風が気持ちいい日曜日の午後のことでした。

 跨るライダーはそれほど長身には思えませんでしたが、両足の靴裏をペタリと地面につけていましたし、信号が青に変わったタイミングで発進する様子がとてもリズミカルだったのです。そうです、立ちゴケの心配もなさそうでしたし、なによりもロードスターの中で取り残された僕に、爽やかな風を残していったことが印象的だった。これなら僕でも操れるのではないかと思った。今回の試乗は、僕のそんな淡い思いからスタートしました。

実に爽快にライディングを楽しむことができるCBR400R

 実際に走らせてみると、想像通り軽やかな印象です。「CB」といえばホンダ伝統のブランドですし、さらに「R」の文字が二文字も加わります。かなり激しいライディングになるのではないかと怯んでいたのですが、それも杞憂(きゆう)に終わりました。

 サイドカウルには、MotoGPを彷彿させるエアロフィンが装着されています。いったいどれほど高い速度を出せばその効果を体感できるのか、リハビリ中の僕には想像もできませんが、そんな物々しさも走り出してしまえば忘れてしまいます。

 資料によると、先代よりもさらに前傾姿勢を強めたライディング姿勢を強いるとのことでしたが、それに対しても違和感はありません。というよりもむしろ、タンクを抱え込むような姿勢こそ、僕が憧れていたスタイルです。これぞレーサーと思えるようなフォームでライディングするわけですからテンションはMAXになります。

水冷4ストロークDOHC4バルブ直列2気筒・399ccエンジン搭載

 水冷並列2気筒400cc 4ストロークエンジンは、最高出力46ps/最大トルク38Nmにとどまりますからから、いきなりウイリーしてしまうような獰猛な加速でもありませんでしたし、低回転にもトルクを満遍なく散りばめているようで、心配していたエンストの不安もありません。

懐の広い「CBR400R」は、リベンジライダーやビギナーを優しく包み込む

 CBR400Rには、アシスト&スリーパークラッチと呼ばれるシステムが採用されています。3速から2速に不用意にシフトダウンするような場面でも、ガクンと前のめりにならないように細工されています。クラッチ操作も軽いので、ロングドライブでの握力を心配する必要もありません。慣れるがゆえのラフな操作を、CBR400Rが賢く吸収してくれるのです。リハビリライダーにとっては都合のいいバイクと言えますよね。

 雰囲気は本格的レーサーなのに、乗り味は優しい。まさにバイク浦島太郎のリベンジライダーや、あるいは免許取り立てのビギナーには魅力的なバイクなのです。

ホンダCBR400R / マツダ・ロードスターと筆者(木下隆之)

 ロードスターで信号待ちする僕の脇で、颯爽と走り去っていたCBR400Rはとても軽やかに見えましたが、それはライディングレベルが高かったことに加え、そもそもバイクが優しい乗り味に仕立てられていたからなのです。春のよく晴れた日の爽やかな記憶が、また輪郭を伴って蘇ってきました。

 しばらく、目をキョロキョロさせながら、CBR400Rを探す日々が続きそうです。

【了】

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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