バリ伝のグンと秀吉のように峠を熱く走りたくなる!? 「CB1000R」と「KATANA」に乗ってみた

ホンダ「CB1000R」とスズキ「KATANA」の2台で走ってみました。どちらも両メーカーを代表するブランドで、心臓部は水冷DOHC4バルブ並列4気筒のリッターエンジン。名車をルーツにするという意味でも、ライバル関係にあると言っていいでしょう。

“バリ伝”の世界に浸れるCB vs KATANA

 CBとKATANAの2台で走って、思わず“バリ伝”の「グン」と「秀吉」を思い出してしまいました。漫画『バリバリ伝説』が週刊少年マガジン(講談社)に連載されたのは1983年から1991年までですから、登場キャラクターの「巨摩郡(こまぐん)」が“しび子ちゃん”ことホンダ「CB750F」、“裏六甲のウンチーニ”こと「聖秀吉(ひじりひでよし)」がスズキ「GSX750S KATANA」を愛車にしていた、なんてハナシで盛り上がるのは、1980年代のバイクブームを知る世代だけかもしれません。

スズキ「KATANA(ブラック)」(左)とホンダ「CB1000R」(右)

 グンや秀吉がそうだったように、ライダーたちは峠に集まり腕を磨きましたが、ローリング族や若年層の事故死が社会問題となったのもまた事実です。同じ過ちは、決して繰り返してはなりません。

「行きますか、かる~くね」なんてセリフで2台で出発しますが、漫画のようになってしまってはイケマセンので、安全運転を心がけてCB1000RとKATANAを走らせます。

 KATANAは「スズキイージースタートシステム」によって、ワンプッシュで素早くエンジンが目覚め、発進もエンジン回転の落ち込みを制御する「ローRPMアシスト機能」でスムーズです。

 CB1000Rだってエンジンは一発始動、極低回転域のトルクがあって半クラを意識せずともスタートできるので同じことが言えますが、KATANAは始動や発進を驚異的に簡単にしています。

スズキ「KATANA」(2019年型)車体色はミスティックシルバーメタリック

 スターターボタンを深く押し込まなくとも、エンジン始動状況を32-bit ECMが認識するまで一定時間スターターモーターを稼動させてくれる「スズキイージースタートシステム」のおかげで、かけ損ねの心配がありませんし、発進時もアクセル開度が足りなくともエンジン回転の落ち込みを電子制御し、エンストしないようサポートしてくれます。渋滞時のノロノロ運転やUターンなども気を遣わずに済み、心強いサポートシステムといえるでしょう。

キャスター/トレール同寸で、軽快なハンドリング

 シート高はCB1000Rが830mm、KATANAが825mmと腰高です。小柄な人には足着き性に難ありと感じますが、ライディングポジションから普段使いに重点を置いて開発されていることがわかります。幅広なアップハンドルを装備し、リラックスした快適な乗車姿勢で、市街地からワインディングまで幅広いシチュエーションで操る楽しさを味わえます。

ホンダ「CB1000R」(2018年型)

 足まわりはどちらも前後17インチで、キャスター角25度、トレール100mmも同一です。ハンドリングは軽快で、ライダーが荷重を意識せずとも視線を向けた方向へ車体が寝ていくスムーズさがあります。

 とくにCB1000Rの素直さは特筆もので、シートのイン寄りに荷重を掛けるだけで後輪のトラクションをはっきり感じつつ、フロントタイヤの接地感も手に取るようにわかるのです。

スズキ「KATANA」に乗る筆者(青木タカオ)

 KATANAは前後サスペンションが硬めのセッティングで、積極的に乗り手が入力できればキビキビと走ってくれます。ライダーがダイナミックに体を動かすスポーティなライディングをマシンが待っているかのようで、いつの間にか走りがエキサイティングになっていくのでした。

普段づかいを考慮し、常用回転域が主役!!

 常用回転域で力強いエンジンを持っているのが、両車の大きな魅力といえます。CB1000RはCBR1000RR、KATANAはGSX-R1000、最高峰スーパースポーツ譲りのパワーユニットを低中速寄りにリチューンし、街乗りやワインディングでアクセルを積極的に開けて楽しめるよう味付けし直したのです。

排気量998cc水冷直列4気筒DOHC4バルブエンジンを搭載するKATANA

 とはいえ、キャラクターは少し異なります。KATANAはスロットルの開け始めで穏やかにパワーが立ち上がるよう、スロットルグリップでのケーブルの巻き取り形状を最適化し、扱いやすさをより重視しています。ギクシャクしたりトルクが唐突に出ないよう配慮されているのです。

 CB1000Rはヨーロッパの公道で加減速を多用するスピードレンジで、もっともトルクが上昇する6000rpmから8000rpmをより使えるよう、ギアレシオを先代(日本未導入)より約4%ローレシオ化し、1速から3速までの速度域においては、CBR1000RRより高い駆動力を発揮するアグレシッブさです。

 また、日常走行時に多用するアクセル開度50%以下の領域におけるスロットルバタフライ開度特性を右手のグリップ操作に対し、リニアに回転上昇するよう作り込まれた点も見逃せません。

「ちょっと過激かも?」という人も心配無用です。ライディングモードを搭載し、乗り手の好みや技量、天候などによる路面コンディションの変化に合わせて走行モードを瞬時に切り替えられ、まさにオールマイティとしました。

排気量998cc水冷直列4気筒DOHC4バルブエンジンを搭載するCB1000R

 カタナはライディングモードこそ搭載しませんが、感度レベルを3つのモードから選べるトラクションコントロールシステムを採用しています。スリップを感知すると、点火タイミングとセカンダリスロットルバルブの開度を制御することでエンジン出力をコントロールしますので、大きな安心材料となることは間違いありません。

峠へ出掛けたくなる2台

 高揚感あるドラマチックな出力特性を持ちつつ、誰にでもコントロールしやすく、さらに路面状況にシビアではないという利点を電子制御によって獲得している両車は、理想的なロードスターではないでしょうか。

2台がそろえば自然と峠を走りに行きたくなる?

 もしオーナーとなれば、グンと秀吉のように熱くワインディングを駆け抜けたくなるでしょう。

【了】

“バリ伝”の「グン」と「秀吉」を彷彿!? 「CB1000R」と「KATANA」を画像で見る!

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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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