ジャガー初のピュアEV「I-PACE」はサウンドつき!? これはバイクにも…… ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.111~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、英国ジャガー初の電気自動車に搭載される疑似音機能はバイクにも有効では? と言います。どういうことなのでしょうか?

EV化の波に乗りジャガーが選んだ潔い機能、電動バイクにも?

 英国スポーツカーメーカーを自認する「JAGUAR(ジャガー)」も、EVを販売する時代になった。英国は2030年までに全てのガソリン車の販売を禁止するとしているから、スポーツカーメーカーとはいえ、ハイパワーエンジンだけに固執してはいられない。そんな脱炭素化の流れを受けてデビューした「I-PACE(アイ・ペイス)」は完全なる電気自動車だ。

ジャガーの新しい電気自動車「I-PACE」

「ジャガーもEV化を進める時代になったんだなぁ」と、その新型車登場のニュースを聞いて、多くの内燃機関派はガックリとうなだれたに違いない。かく言うこの僕(筆者:木下隆之)も、ガソリンエンジンがなくなるのは“寂しい派”である。回転の上昇に比例して躍動感を高め、サウンドが同調していくガソリンエンジンの魅力は格別であり、この味が得られないEVにはどうも魅力を感じられない。

 そんな気持ちを見越してか、ジャガー「I-PACE」は基本的に無音のはずなのだが、豪快なエキゾーストノートを響かせる。

 もちろん動力は電気モーターだから、加速サウンドはほとんどないのだが、「アクティブサウンドデザイン」を装備している。擬似的にガソリンエンジンの咆哮を作り出し、その電気的サウンドをスピーカーから響かせる、いわばシンセサイザーである。

 これが痛快極まりない。シンセサイザーだから、音量も音質も自在にコントールできる。穏やかな気分でいたのなら、低音でドライブしていればいい。ハートを爆発させたいのならば高音にチューニング、加速度に比例して「ガオガオ」と猛獣のように吠える。

 面白いのは、音源は車内のスピーカーだから車外にはまったく響いていないにもかかわらず、盛大に爆音を轟かせて疾走している気分になることだ。外から「I-PACE」の加速する姿を目にしても、ほぼ無音。車内はガオガオとやかましいのに、駆け抜ける姿は平穏なのだ。

BMW Motoradが2017年にリリースしたスクータータイプの電動バイク「C evolution」と筆者(木下隆之)。ほとんど無音で驚愕の加速を体験させてくれた。普通二輪免許で運転可能

 この技術をぜひ、バイクで大音量のエキゾーストノートに酔いしれるライダーの皆様へ提供していただきたいもの。バイクも電動になる時代が来るわけで、ヘルメットの中で「アクティブサウンドデザイン」を楽しむ。いくら音量を上げてくれてもいい。沿道の僕らには無音なのだから。

【了】

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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