【バイクのニュース × 9-GATE コラボ企画 1回目/全3回】世界で40年以上も愛され続けてきたヤマハのキッズ向けファンバイク「PW50」の初代モデルをカスタムでオマージュ!

ヤマハのPW50は子供向けのオフロード入門モデル。実は初代から40年以上も続くロングセラーモデルで、モトGPライダーをはじめ、モトクロスやスーパークロスレーサーなど、数多くのプロライダーが子供の頃に親しんできました。その初代モデルをカスタムペイントで再現するプロジェクトが始動!

世界のモーターファンに愛され続けているキッズ用ファンバイク「PW50」

 ヤマハの「PW50」は体重25kg以下のキッズ向けファンバイクです。子供の平均体重でいえば小学校低学年くらいまでが対象で、オフロード入門モデルとして根強い人気があります。実は初代から40年以上も続くロングセラーモデルなのです。

キッズ向けファンバイクとして根強い人気があるヤマハの「PW50」

 10月28日には2022年モデルが発売。新モデルではヤマハの上級オフロードレーサー「YZシリーズ」の2022年モデルのカラー&グラフィックを採用しています。YZシリーズのミニチュア版のような感じがあって、可愛らしく楽しい印象です。

 主な特長は、スロットルを回すだけで走ることができるオートマチックミッションを採用した空冷2ストローク単気筒49ccエンジン。ブレーキは自転車と同じく、左右レバー式のハンドブレーキを採用しています。自転車に乗れる子供だったら違和感なく操作に慣れることができます。

軽量でコンパクトなPW50は、大人なら簡単にトランスポーターなどに積み込むことができます

 また、軽量でコンパクトな車体で、子供でも扱いやすく、大人なら簡単にトランスポーターなどに積み込むことができるのも魅力。トラブルが少なくてメンテナンスしやすいシャフトドライブが採用されているところが、親にとっても維持しやすいポイントになっています。

軽量でコンパクトな車体は、子供でも扱いやすいように設計されています

 その操作性のよさから多くの子供たちがオフロードバイクに親しむようになり、モトGPライダーをはじめ、モトクロスやスーパークロスレーサーなど、数多くのプロライダーが育ってきたと言われています。

 その隠れた名車、初代モデルをカスタムペイントで再現するプロジェクトを東京都東久留米市にあるバイクショップ「9-GATE(ナインゲート)」が敢行。その様子をご紹介します!

隠れた名車、PW50の初代レプリカをカスタムで再現!

「ヤマハのロングセラーモデルといえば、今年で生産終了となったシングルスポーツのSRが知られていますが、実は他にもあったんです」

今回のプロジェクトを進めていただいた「ナインゲート」代表の細井啓介さん

 今回のプロジェクトのキッカケを語ってくれるのは「ナインゲート」代表の細井啓介さん。ヤマハのSR400、SR500などをメインに国内外のバイクのメンテナンスやカスタムを手掛ける人気店です。

「以前、ヤマハの関係者とお会いする機会があり、話しをしていた時に『ロングセラーモデルはSRだけじゃないんです。PW50が実は40年以上も販売され続けているんですよ』って教えていただいたんです」

 1978年に誕生したSR400は、排ガスや騒音などの環境問題にも時代とともに仕様変更を繰り返しながら進化を続けてきましたが、2020年にユーロ5同等の排ガス規制強化に伴い、2021年モデルで生産終了。43年間の歴史に幕を閉じることになりました。PW50はシーンが違えど、ほぼ同じ時代を走ってきたモデルなのです。

「PW50が誕生したのは1980年。40年以上経った今も販売され続けています。実は隠れた名車なんです」

 PW50は子供向けということもあってか、意外と一般的に知られていないのですが、SRと同様にロングセラーモデル。しかも、デビュー当時から車体の基本構成はほとんど一緒。大きな仕様変更はされていない…という共通項があったのです。

モトクロスブームを次世代へ繋ぐ子供たちのために誕生したPW50

 PW50が誕生する少し前、1960~1970年代頃。アメリカ西海岸を中心に世界的なモトクロスブームが巻き起こりました。ヤマハは1968年に発売したトレールモデル「DT-1」が日米で大ヒット。1973年のモトクロス世界選手権ではファクトリーマシンYZM250を駆るハカン・アンダーソン選手が優勝。1977、78年にはファクトリーマシンYZM400をヘイキ・ミッコラ選手が優勝と、シーンを沸かせていました。

1968年に発売したトレールモデル「DT-1」は日米で大ヒットしました

 当時のアメリカのレースシーンの盛り上がりっぷりは、俳優スティーブ・マックイーンが登場する1971年に製作されたアメリカのドキュメンタリー映画「栄光のライダー(On Any Sunday)」でも知ることができます。しかし、1970年代の後半になるとやや市場が落ち着き、ブームに陰りが見えはじました。そこで、ヤマハはあらたに次世代のモトクロスファンを獲得するための企画を模索し始めたのです。

 1979年、ヤマハはヨーロッパやアメリカで人気を博していたジュニアモトクロスシリーズに向けYZシリーズの最小モデル「YZ50」を発売。5速ミッションを採用した本格仕様で人気を得ましたが、競技用だったため、あまり初心者の子供向けとは言えませんでした。

 バイクに乗ったことのない子供たちが親しめるようにするには、もっとハードルを下げる必要がありました。ターゲットはようやく自転車に乗れるようになった5~6歳くらいの子供たちへのクリスマスプレゼント! プレゼントを抱えたサンタクロースが、煙突の中を通れるようなコンパクトなサイズ感をイメージしていました。

50ccスクーター「パッソル」とソフトバイク「キャロット」

 そこで、車体はすでに生産されていた2台のスクーターがベースになりました。ひとつは1977年に日本で発売された50ccスクーター「パッソル」の10インチホイール。もうひとつは、1979年に発売されたソフトバイク「キャロット」のシャフトファイナルドライブ付き49cc単気筒オートマチックトランスミッションエンジンです。

 エンジンは子供が安全に扱えるように、アクセル開度をネジで制限するストッパーと、エキパイにプレートを設けて出力を制限。出力を2.7ps以下に抑え、より優しくソフトなパワーでありながらも、キチンと走れるように配慮されました。

 また、ホイールとエンジンをつなぐボディワークの設計には、部品点数を少なくしてコストを抑えつつも、オモチャのようなワクワクするデザインにするための試行錯誤が重ねられました。そこでリアフェンダー、クリーナーボックス、ゼッケンプレートは樹脂製の一体成形を採用。タンクも軽量で加工しやすい樹脂製で、汎用性の高いブロー成形で製作され、低コストと丸みのある愛らしいデザインを実現しました。

1981年に発売された初代「PW50」

 そうして迎えた1980年の夏、アメリカのディーラーショーでPW50がデビュー。PWは「Peewee(ピーウィー=おチビさん)」という意味で、アメリカではYZのイメージから「YZinger」(ワイジンガー)とも呼ばれて親しまれました。ヤマハの狙いは見事的中! 1981年モデルが発売開始されると、子供たちへのスペシャルなプレゼントとして大人気となったのです。

新世代の名ライダーを生み出したPW50の初代をオマージュ

 PW50は競技用レースバイクとして開発されたワケではありませんでしたが、キッズ向けのレースの盛り上がりに大いに貢献することになりました。1980年代のスーパークロス会場では、普及活動の一環としてPW50の模擬レースが開催されるようになり、アマチュアモトクロスレースのピーウィー(子供)クラスにもPW50で参戦する子供たちが増え、多くのタイトルを獲得しました。

モトクロス/スーパークロスレーサーのライアン・サイプス選手

 近年のモータースポーツシーンで活躍するライダーで、幼い頃にPW50に乗っていたという選手は多く存在します。元MotoGPチャンピオンのニッキー・ヘイデン、元SBK(世界スーパーバイク選手権)チャンピオンのコーリン・エドワーズ、スーパークロスとモトクロスのタイトルを何度も獲得したチャド・リード、モトクロス/スーパークロスレーサーのライアン・サイプス、そしてMotoGPで6度のチャンピオンに輝いたマルク・マルケスもPW50に親しんでいたと言われています。 

 1990年代になると子供向けのモトクロスレースはよりパワー志向となっていき、古い仕様のままのPW50で優勝することが難しくなってきましたが、ヤマハはレースに勝つためではなく、より多くの子供たちにバイクに親しんでもらうことを重視。価格帯を抑えるために大幅な仕様変更しないようにしています。

 大きく変わっているのは足まわりやグラフィックがメインで、操作しやすさ、親しみやすさはそのまま。物価の上昇、材料費の高騰などの問題を時代に合わせてクリアしながら、現在も人気モデルとして販売され続けているのです。

「現在のモータースポーツシーンに貢献してきたモデルなのですが、ヤマハでも初代モデルがないらしいのです。そこで、現行モデルをベースにして初代をオマージュしたカスタムを製作しようと思ったんです」

2021年に「PW50」は、発売から40周年を迎えました

 モータースポーツの楽しさと夢を多くの子供たちに与えて続けてきたPW50。1980年にアメリカのディーラーショーで発表されて41年、2021年モデルがイヤーモデルの40年目です。新世代を担う、数多くの名ライダーを育ててきた功績を讃え、カスタムプロジェクトが始動することになりました。

【了】

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