ホンダ「クロスカブ110」がモデルチェンジ 環境規制に適合しつつレジャー要素がさらにアップ、とにかく楽しい夢広がるバイクだった!?

ホンダ「クロスカブ110」は、ビジネスモデル「スーパーカブ110」をベースにアウトドアイメージのスタイリングと装備で2013年に登場した原付2種レジャーモデルです。2022年のモデルチェンジで新エンジンを搭載し、前後キャストホイール、前輪にディスクブレーキが装備されるなど大きく進化しました。乗り味はどうなのでしょうか。試乗しました。

ビジネス組からの見事な転身、モデルチェンジでさらに楽しく!!

 ホンダ「スーパーカブ110」をベースに、アウトドアトランスポーター的なルックスと装備を施した「クロスカブ110」は、日常と休日を文字通りクロスオーバーするコンパクトモデルとして人気を集め、1980年代に国内でも販売され人気を集めた「CT110」、通称ハンターカブの再来とささやかれ、このバイクの人気こそ「CT125・ハンターカブ」登場の原動力になった、と私(筆者:松井勉)は考えています。

ホンダ「クロスカブ110」(2022年型)に試乗する筆者(松井勉)
ホンダ「クロスカブ110」(2022年型)に試乗する筆者(松井勉)

 そんな「クロスカブ110」がこの春、大きな改良を受けモデルチェンジしました。小さい排気量だけど頼もしい相棒は、どう変化したのでしょう。

 モデルチェンジの趣旨は、新しい環境規制に適合すること。そのためにこれまでJA10Eという空冷OHC単気筒だったエンジンは、JA59Eという新エンジンに換装。排気量は同じ109㏄です。パワーとトルクは、5.9kW(8.0PS)/7500rpm、8.8N.m/5500rpmと、最大トルク値がわずかに0.3N.m増量していますが、ほぼ同値です。

 両エンジンでもっとも違うのがボア×ストロークです。

・従来型(JA10E)50mm×55.6mm
・新型(JA59E)47mm×63.1mm

 ボアとは、エンジンのピストンの直径とほぼ同値であり、ストロークはシリンダー内をピストンが上下する距離のこと。つまり、新型はピストンを小径にして、長い距離を移動することになるのです。一般的に、ピストンを小径にするとシリンダーとの接触面積が減り、フリクションロス低減や爆発火炎が素早く広がることで効率が上がる、スロトーク量を伸ばすと、低い回転域でもトルクが出やすい、などの定説があります。

2022年型でモデルチェンジし、2022年4月14日に発売されたホンダ「クロスカブ110」カラー:マットアーマードグリーンメタリック
2022年型でモデルチェンジし、2022年4月14日に発売されたホンダ「クロスカブ110」カラー:マットアーマードグリーンメタリック

 また、新型は外観にも大きな識別点があります。スポークホイールからキャストホイールへ、さらに前輪にABS付きディスクブレーキを採用。これは「スーパーカブ110」も同様ですが、大きな変更と言えるでしょう。

 他にも、メーターに液晶モニターを新設し、ギアポジション、時計、トリップメーター、平均燃費計、そしてオドメーターを表示可能に。いわゆるスポーツバイクに搭載されているリターン式のミッションとは逆に、ニュートラルから1速、2速、3速、4速と前に踏み込むカブの自動遠心クラッチ付きトランスミッションは、クラッチ操作が不要なのでAT限定免許でも運転出来るのですが、信号待ちで、例えば3速のまま停止した場合、メーターに「1」とか「3」など現在のギアポジションが明示されるのはとっても便利です。

黒い文字盤の指針式スピードメーターの下には液晶ディスプレイが追加され、ギアポジションや時計、平均燃費などを表示
黒い文字盤の指針式スピードメーターの下には液晶ディスプレイが追加され、ギアポジションや時計、平均燃費などを表示

 走り出しましょう。エンジンはスタータースイッチを押せばイッパツで始動。バッテリーが上がっても始動出来るよう、キックスターターも標準装備するのが「スーパーカブ110」系の流儀です。コレもクロスカブでは、サバイバルツールのよう。

 アイドリングはスムーズ、とても静かです。もうこの段階でなにやら先代よりも進化を実感。滑らかで振動も少ない印象です。様々なフリクションロス低減技術を盛り込んだカブ系エンジンにして、アイドリングだけで「ち、違う!」と思わせる技術に驚きます。

 加速もスムーズ、やはり静か、そして一般道の60km/hの流れに乗っても余裕すら感じるのです。その感じは兄貴分的モデル、CT125のようですらあります。で、あちらより車重がグッと軽い107kgに収まっているので、まっすぐ走っていても身軽さはしっかり享受出来るのです。

 シフト操作は従来通り。アクセルの開閉のタイミングとシフトタイミングを合わせると、さらに滑らかな走りを引き出せます。ここがスクーターとは異なるMT風味を楽しめるカブ系の面白さ。

 ブレーキ性能も軽いタッチのまま欲しい減速力が手に入れやすく、安心感が増しました。それと、キャストホイールを履いた恩恵なのか、ホイールの回転する感じすら滑らかでフリクションロスが減った印象です。遠くで交差点の赤信号が見えた瞬間、アクセルを戻しても長い距離を“スー”っと走ってくれるので、燃費にも効きそうです。

「スーパーカブ110」よりも少し長いサスペンションストロークを持つ「クロスカブ110」ですが、その効果は荒れたアスファルトを通過してもフワっと乗り切ってくれます。この日は空荷で走ったので、遊ぶ道具を積んでも頼もしい足まわり、エンジンの力強さと静かさをもって遠出は楽しいに違いありません。

砂利道に入ると、ついはしゃぎたくなる楽しさ
砂利道に入ると、ついはしゃぎたくなる楽しさ

 オフロードも少しだけ走ってみました。つい、水たまりを見たらジャバァ! 砂利道でアクセルを開けると、小石が飛びどこかに当たってカンという音が……。土手の上り坂もグイグイ走ります。クロスカブの性能よりも、自分の野性味がクロスカブによって吹き出したことに驚きました(笑)。もーコレ、楽し過ぎ!

 自宅から30kmも走れば遠出気分が出る「クロスカブ110」は、ミニマルだけど、道さえあれば世界の果てまで行けそう……という気分まで標準装備。夢広がるコミューター、そんなバイクでした。

※ ※ ※

 ホンダ「クロスカブ110」の価格(消費税10%込み)は36万3000円、カラーバリエーションは取材車両の「マットアーマードグリーンメタリック」のほか、「パールディープマッドグレー」「プコブルー」の3色設定です。

【画像】ホンダ「クロスカブ110」(2022年型)の詳細を見る(16枚)

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Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

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