公道を走れるMoto2マシンが登場! トライアンフ「新型ストリートトリプル765」はマジ凄そうです
コンセプトは「公道を走れるMoto2マシン」
新型マシンは3タイプで、スタンダードモデルの位置づけの「R」と上級モデルの「RS」、そして今回初めてラインナップに加わった限定モデルの「Moto2エディション」です
いずれも見た目は従来モデルから大きく変わっていない印象ですが、全体的によりエレガントに洗練された感じです。ひと言で表現すると、昨年デビューした兄貴分たる新型「スピードトリプル1200RS」のミドル版、となるでしょうか。同じようにフロントが小顔になり、ボディもシェイプされたより現代的なフォルムになっています。
トライアンフは伝統を大事にするメーカーで、生み出される製品も少しずつ改良を重ねて熟成させていく手法がとられることが多く、ストリートトリプルシリーズも毎回、地味ではありますが確実に進化してきました。
車体とエンジンのベースは3タイプとも共通で、水冷並列3気筒はボア・ストロークや排気量こそ従来どおりですが、燃焼室とピストンが新設計となり、圧縮比を上げることで燃焼効率を高め、従来から一気に7psアップの130ps(スタンダードの「R」は120ps)を実現しています。
フレームやサスペンションも従来型をほぼ踏襲していますが、「R」の前後サスペンションがSHOWA製なのに対し「RS」はリアショックにオーリンズ製を採用するなど足まわりが強化されました。
全タイプとも、新スロットルマップを採用する進化したライディングモードと、コーナリング対応のABSおよびトラコン、クイックシフターが投入されるなど、電子制御も最新化されています。
そして、今回のトピックスはやはり「Moto2エディション」でしょう。“公道走行可能なMoto2バイク”をコンセプトに、レーシングカラーをまとい、サスペンションはリアだけでなくフロントフォークにも最新のオーリンズ製を装備しました。ハンドルもクリップオンタイプが採用され、より前傾した戦闘的なライディングポジションになっています。
ストリートトリプルのエンジンで競われる「Moto2」の様子に鳥肌!
現地発表会のコンテンツの一環としてMoto2チームに密着取材ができる機会があり、自分(ケニー佐川)はそのひとつ、「Speed Up」チームに1日、張り付いていました。同チームは、昨年のMotoGP王者であるクアルタラロもかつて所属していたイタリアの名門で、想像していた以上に多くのスタッフが関わりシステマチックに運営されていることに驚きました。世界選手権なので当たり前といえばそれまでなのですが、ピットクルーの練度や機材、ホスピタリティなど、日本だと鈴鹿8耐に出てくるメジャーチームくらいの充実度を感じました。
発表会の合間には、MotoGP各クラスの公式練習やレースを観戦するラッキーにも恵まれました。バレンシアGPでのMoto2のラップタイムは、おおむねMotoGPから5秒落ちくらいといったところでした。MotoGPクラスが最高出力240ps以上で、レギュレーションの中でやれることは何でもやってくる最強プロトタイプマシンであることを考えると、市販車ベースのエンジンを搭載するMoto2のレベルの高さが、逆に凄いなと感じます。もちろんライダーの腕も一流ですが、ストリートトリプルの3気筒エンジンのパフォーマンスも大きなファクターになっているでしょう。
Moto2マシンのやや低くビブラートがかかったように調律されたサウンドは、まさにトライアンフ3気筒そのもの。スタンドから観戦していてもコーナリングスピードはMotoGPと遜色なく、ロングストレートでの最高速は300km/hを超えます。ストリートトリプルのエンジンであんな凄い走りをしていると考えると鳥肌ものでした。
というわけで、気になる新型ストリートトリプル765の発売時期ですが、来年春頃を予定しているとのこと。日本デビューが待ち遠しいですね。
Writer: ケニー佐川
佐川健太郎(ケニー佐川)
1963年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、広告・SP関連会社を経て独立。雑誌編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。海外試乗やメーカーやディーラーのアドバイザーとしても活動中。(株)モト・マニアックス代表。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。