カワサキとレクサスは、空気が読めてない? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.182~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、カワサキとレクサスは「漢気」に溢れたブランドだと言います。どういうことなのでしょうか?

ブランドの個性が際立つ、カワサキとレクサス

 カワサキのリリースを見て、僕(筆者:木下隆之)はまた「漢(おとこ)気」を発揮してくれたと感じた。世界でも希な並列4気筒クオーター(250ccクラス)「Ninja ZX-25R」シリーズで世間をアッと驚ろかせておきながら、それでも満足できないようで、同じく4発エンジンの400ccクラスを発表した。その名も「Ninja ZX-4R」シリーズである。2023年の話題をさらうことは間違いない。

カワサキが2023年の海外市場に向けた新型モデルとして発表した「Ninja ZX-4R」シリーズは、2023年秋の国内導入に向けて準備が進められている模様
カワサキが2023年の海外市場に向けた新型モデルとして発表した「Ninja ZX-4R」シリーズは、2023年秋の国内導入に向けて準備が進められている模様

 普通自動二輪免許(いわゆる中免)で上限の排気量400ccは、「限定解除」の免許取得が身近になったことで、もはやそのクラス分けの意味が薄れ始めている。しかも排気ガス規制が厳しさを増し、ほとんどのメーカーがこのクラスのモデルラインナップを縮小している。

 ホンダは伝統の「CB400スーパーフォア」と「CB400スーパーボルドール」の生産を2022年10月をもって終了した。もはや中免マックスの4発は絶滅危惧に喘いでいるというのに、カワサキはニューモデルを発表するのだから、空気が読めないと言うか、技術屋の誇りがそうさせると言うか、ともあれ漢気を発揮したわけである。

 じつはクルマの世界にも、そんな漢気に溢れたブランドが存在する。それがレクサスだ。

 レクサスはトヨタの高級ブランドであり、上質な造り込みを信条とする。乗り心地の良い大人の乗用車あたりがイメージだろう。

 だけどレクサスには、絶滅が危惧されているV型8気筒5リッターNAエンジンがラインナップする。それは「RC F」と「LC500」の2ドアスポーツクーペに搭載される。

 サイズがかさばるV型8気筒は6気筒になり、排気量が減らされ、それによって不足するトルクをターボで補うのが最近の技術的なトレンドだ。ダウンサイジングをお題目に、排気量ダウンが進む。環境とドライバビリティを考えれば、それは正しい。

 だがV型8気筒ファンは少なくない。大排気量派も消えてはいない。ターボの強引な出力特性が嫌いな人もいる。何を隠そう、この僕がそれなのだ。

 ただ、百歩譲って2ドアスポーツクーペならばそれは許されるだろうが、レクサスはスポーツカーだけではなく、ボクシーな4ドアセダンにもV型8気筒5リッターNAエンジンを積んでしまった。それが2022年にデビューした「IS500」である。

 ちなみに、レクサスは近い将来、一切の内燃機関を捨てると宣言した。完全な電気自動車ブランドとして生きる道を選んだのだ。まるで「レクサスのカワサキ化」だ、と僕は考えている。

【画像】カワサキ新型「Ninja ZX-4R」シリーズを見る(8枚)

画像ギャラリー

Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

最新記事