「ホンダ」「ヤマハ」「スズキ」「カワサキ」はすべて人の名前に由来?

世界をリードする日本の2輪メーカーですが、その名はすべて創業者の名前に由来しています。海外メーカーの名の由来はさまざまであるのに、なぜ日本のメーカーは創業者の名前に由来しているのでしょうか。

日本の4大メーカーはすべて創業者の名前に由来

 日本を代表する2輪メーカーであるホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの4社は、いずれも世界中で高いシェアを誇っており、バイク大国日本を象徴する存在となっています。

 そんな日本を代表する2輪メーカー各社のブランド名は、いずれも創業者の名前に由来しています。たとえば、「ホンダ」が創業者である本田宗一郎氏にちなんでいることはよく知られています。

写真左:「ホンダ」創業者の本田宗一郎氏
写真左:「ホンダ」創業者の本田宗一郎氏

 戦後まもない1948年に本田技研工業株式会社を創業した本田宗一郎氏ですが、その前年の1947年に初の自社製エンジンである「A型エンジン」を完成させています。ホンダによれば、このA型エンジンこそが「ホンダ」の名が与えられた初の製品だといいます。

 50.3ccの排気量を持つA型エンジンを取り付けた「原動機付自転車」は大ヒットとなり、その後世界中を席巻することになる「スーパーカブ」シリーズの基盤を築きました。

 ヤマハもまた、創業者の名前に由来します。

創業者の山葉寅楠氏とオルガン組立工程
創業者の山葉寅楠氏とオルガン組立工程

 2輪メーカーとしてのヤマハ発動機株式会社は、1955年に楽器メーカーであるヤマハ株式会社から派生する形で誕生します。

 ヤマハ株式会社の源流は、オルガン製作会社として1887年に創業した日本楽器製造株式会社ですが、その初代社長である山葉寅楠氏の名字をとった「ヤマハ」がブランド名として用いられました。

 当初はヤマハ株式会社の子会社という立ち位置であったヤマハ発動機株式会社ですが、売上高はヤマハ発動機のほうが大きく上回っており、現在では兄弟会社という関係になっています。

 織機メーカーとして1909年に誕生した鈴木式織機製作所を源流としているスズキも、創業者の名前にちなんでいます。

写真中央:「スズキ」創業者の鈴木道雄氏
写真中央:「スズキ」創業者の鈴木道雄氏

 スズキが2輪事業に参入したのは戦後の1952年のことですが、戦前は織機メーカーとして名を馳せており、そこで得られた精密加工の知見が後に登場するバイクやクルマへと活かされています。

KATANAに乗るスズキ自動車の鈴木俊宏社長
KATANAに乗るスズキ自動車の鈴木俊宏社長

 なお、現在の社長である鈴木俊宏氏は、創業者の鈴木道雄氏以来の直系親族の社長となっています。

 そして、カワサキも、川崎造船所の創業者である川崎正蔵氏に由来しています。川崎造船所は現在の川崎重工業であり、日本の近代化に貢献した企業のひとつです。

創業者の川崎正蔵(左)と初代社長の松方幸次郎(右)
創業者の川崎正蔵(左)と初代社長の松方幸次郎(右)

 1953年に2輪車用エンジン「KE-1」を発売したカワサキは、1961年に初のバイクとして「B7」を発売、その後メグロ(目黒製作所)を吸収合併した後、1965年に名機として名高い「W1」を発表することになります。

 川崎重工業のモーターサイクル部門として、長きにわたってグループ全体をけん引してきたカワサキですが、2021年に分社化し、カワサキモータースジャパンとなりました。

海外メーカーの由来はバラエティ豊か!

 創業者の名前に由来している日本の2輪メーカー各社ですが、海外メーカーの場合はどうなのでしょうか?

 たとえば、イタリアの名門ドゥカティやアメリカの雄ハーレーダビッドソン、モトグッツィやビューエルなどが創業者の名前に由来しています。

左:ウィリアム・A・ダビッドソン、ウォルター・ダビッドソン Sr.アーサー・ダビッドソン、ウィリアム・Sハーレー
左:ウィリアム・A・ダビッドソン、ウォルター・ダビッドソン Sr.アーサー・ダビッドソン、ウィリアム・Sハーレー

 一方、創業者の名前に由来していないケースも少なくないようです。

 一例として挙げられるのが、ドイツ語の「バイエルンのエンジン工場」の頭文字をとったBMWや、ハスクバーナ川の近くに工場を建てたことに由来するハスクバーナなど、地名に関する名称をもつメーカーです。

 また、KTMのように、創業者2名の名前と創業の地の頭文字を組み合わせた、ハイブリッドな例も見られます。

 このように、日本と海外のメーカーを比較すると、海外の方がバラエティに富んだ由来を持っているようです。では、なぜ日本の2輪メーカーの名は、創業者の名前に由来しているのでしょうか。

 この背景には、戦前の日本にあった家督制度があると考えられます。「家督を継ぐ」や「家名を上げる」という言葉があるように、日本では古来より「家」という単位が重視されてきました。

 戦後に西洋的価値観が一般化してからは、日本でも「個」が尊重されるようになりましたが、2輪メーカー各社が創業した当時はまだまだ「家」という単位が根強く、社名や製品名に「家」の名を付けることが一般的だったと考えられます。

 近年では、マーケティング上の観点から家名を掲げる企業は少なくなっているようですが、日本の2輪メーカー各社はすでにその名が定着しているため、あえて変更されるということはないようです。

※ ※ ※

 新興国におけるホンダのシェアは圧倒的であることから、東南アジアなどのある地域では「ホンダ」という言葉がバイクそのものを指す場合もあるといいます。

 そうした地域の人々が、「ホンダ」が創業者の名前に由来していることを知っているのかは定かではありませんが、世界で最も有名な日本人の名字のひとつと言えるかもしれません。

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