超絶進化を果たしたピレリの新製品「スーパーコルサV4」は「もう少しベストタイムを更新したい人へ向けた一本」!? レーシングライダー濱原颯道の市販車インプレッション

国内外で活躍するモータースポーツ総合エンターテイナーの濱原颯道選手がピレリ「スーパーコルサV4」の発表会に参加!新製品の印象を教えてくれました。

ピレリの新製品「スーパーコルサV4」を徹底インプレ

 こんにちは!ニーハオ!プロライダーの濱原颯道です。

 僕は今、台湾にいるのですが、様々なネットニュースで日本でもピレリの「スーパーコルサV4」が発売されるみたいな記事を多く見かけるようになり、「へー、みんなそんな注目してるんだー。え、僕4月に台湾で履いてたじゃん!」、と急に思い出して、そのインプレッションを書いてみたいと思います。

スズキ「隼」でも走行した。これにはSPモデルが履いてあったけど割と良かったな。
スズキ「隼」でも走行した。これにはSPモデルが履いてあったけど割と良かったな。

 日本ではサーキットユーズや峠の走り屋などに、「スパコル」の愛称で親しまれ、サーキットで使った溝のまだまだ残っている、状態のいいタイヤは高額でオークションなどに流されているピレリのスーパーコルサシリーズ。

 新品の値段が高くても、リセール性が良い事や暖まりの良さ、見た目のパターンに反して多少のウエットでもガンガン膝が擦れるなど超万能なタイヤの新製品。それが、スーパーコルサV4です。

 今回、テストをしたコースは屏東という台湾の中でも結構大きい地域の南方にある、ペンベイという年中灼熱なサーキット。過去に一度だけ、アジアロードレース選手権が開催されたみたいなのですが、一度だけという言葉でお察しください。

 凄いコースでした。何がとは言えませんが(笑)

ピレリのパーティーに参加する濱原颯道選手
ピレリのパーティーに参加する濱原颯道選手

 V4の発表会の前日は、台湾中のバイクショップを呼んでのパーティーが開催されました。

 パーティーでは、売り上げのトップ10のお店が表彰され、参加者の宿泊用に貸し切りのリゾートホテルも用意されるなど豪華な内容。参加者全員の交通費も出ているので、「このイベントって、いくらかかってるの?」と台湾ピレリのマネージャーに聞いてみたら、「1000万円かな」との事で、台湾ピレリの本気具合も伺えました。

 そんな事より、僕が今回のテストでV4を履く前に履いた事のあるスーパーコルサって、名前にVが付く前のシリーズ初期の頃の物。そのため、これまでに販売されてきたV2もV3も、僕からしたら借りて乗ったバイクに付いていて、少し味見した程度の印象しか分かりません。まあ少し味見といっても、それなりのペースで走りますけど。

 そうなると僕にとってV4は、未来のタイヤみたいな存在なのに、しゃぶり尽くすまで灼熱の中乗れるなんて贅沢な話です。

 とはいえ、従来モデルのV3に比べて「0.3秒から0.5秒、ラップタイムが上がる」という事前の噂を聞いていて、本当かよって疑っていました。

 でも走り始めてすぐに、その噂はあながち間違ってないのかもと思うような特性を感じる事ができました。

実際に履いたピレリ「スーパーコルサV4」の印象は?

 コンパウンドや構造などのカタログスペックが知りたい人は、ピレリの公式HPをチェックしてください。僕は、乗った感想のみを書きます(笑)

 皆さん、スーパーコルサのイメージって、どんな感じですか?おそらく「喰う(グリップする)」だと思うんですよ。

 他のメーカーのタイヤよりも安心感あって、コーナーに向かって飛び込んで行きやすいみたいな。でも僕らみたいなレーサーが使うと、「弱い」という印象。横方向に滑ってばかりで、その点はどうしてもスリックタイヤのドライブの良さ(縦に進んでくれる力)には、まったく歯が立ちません。

 おそらく皆さんが「え、進むじゃん」と思っているのは喰っているから進むだけであって、それ以上タイヤやサスにトラクションを掛けられる人が乗るとタイヤが潰れすぎてしまい、弱くて頼りなく感じてしまうんです。ちなみに、タイヤを潰せない人がスリックタイヤを履くと、おそらくタイムは落ちるので、その辺りは溝付きであるスパコルの方が有利です。

 しかし、そのプロライダーが弱いと感じていた点が、今回のV4はだいぶ解消されていて、本当にびっくり。表面のコンパウンドに依存せず、中の構造などでしっかりと前に進むように工夫されていたため、結果的にタイヤが減っても進んでくれる、ロングライフという良い循環に繋がる進化を遂げています。

今回用意されたV4達。名前にやる気を感じる。
今回用意されたV4達。名前にやる気を感じる。

 そのため、正直ストリートユーザーみたいに潰さない人が乗るのであれば、今回新しくラインナップに入った「ディアブロロッソコルサⅣ」がおススメ。

 スーパーコルサV4のSPやSCは公道でも乗れますが、あくまでもサーキットユーズ向けタイヤです。そこで見栄張ると、本当にストリートで怖い思いをする可能性があるので、タイヤ選択には要注意。

 フロントタイヤは履く車種にもよりますが、120の太さであれば少なくとも排気量600cc以上は欲しいです。ちなみに、スズキ「隼」に履かせた時は、流石にブレーキングで弱さを感じましたが、ダラダラと曲がる長いコーナーでのフロントタイヤの接地感はちょうど良い感じ。

 ピレリのタイヤは全般的に直立のブレーキは良く、そこから車体を寝かし込んでいく間はだいぶ良いのですが、ブレーキを離し切った際の旋回性はあまり無い印象だったのですが、その辺りも今回のV4では改善されていて、若干メッツラー製タイヤに追いついてきたと感じました。

会場はペンベイサーキット。一周3.7キロの一応国際コース。
会場はペンベイサーキット。一周3.7キロの一応国際コース。

 メッツラーとピレリは兄弟会社みたいな関係性ですが、基本的にメッツラーが少し先に進んでいるけど全体の特性としてはレーシーな傾向で、超万能というより「より速く走りたい人へ」みたいな印象があるメーカー。

 その印象に追いついたという事は、スーパーコルサV4は超万能というよりは「もう少しベストタイムを更新したい人へ」というタイヤなんだと思います。

 いかがでしたか?メーカーからサポートを受けている訳ではないので、割と好き勝手に書かせてもらいましたが、やっぱりスパコルは凄いというのが僕の結論。
 
 日本で人気の高い旧車レース、テイストオブつくばなど、大排気量でスリックタイヤが使えないカテゴリでは、間違い無く僕なら選ぶ1本です。

 皆さんのタイヤ選びの参考になれば嬉しいです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

濱原 颯道 I AM YOUR RIDER

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Writer: 濱原颯道(プロライダー)

全日本ロードレースでは国内2位、全日本スーパーモトでは国内3位の経験があり、他にもオフロードやストリートまでバイクならなんでも好きな男。普段は個人レッスンにマシンセットアップ、テストライダーなどと色々な活動をしている。バイクに関することならビギナーから国際ライダーまで、多くの人から相談を受けたりもしている。

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