バイクの駐車規制見直し通達 1年後にどうなった? 警察庁が公表

警察庁が都道府県警察に対して、バイクの駐車規制区間の継続的な見直しを求めている件で、通達1年後の全国の見直し状況がわかりました。

全国で3万532区間、総延長距離2万560kmは、バイク駐車問題解決になるか

 保有台数に対して、バイクの駐車場は供給が追い付いていません。とくに都市部や地方部でも駅前や繁華街などでは、止められる場所が不足している状況です。警察庁は2021年3月に2度目のバイク駐車規制の見直しに関する通達を出し、全国の1年間の状況が取りまとめられました。

バイクではなく貨物車を対象に、右側駐車を可能にするための「駐車可」標識。補助標識で駐車方法を説明する
バイクではなく貨物車を対象に、右側駐車を可能にするための「駐車可」標識。補助標識で駐車方法を説明する

 今回の数字は、通達から1年後の2023年3月末日時点の見直し状況の断面です。いずれも総数で、現時点では通達後の増減については公表されていません。また、二輪車だけの規制緩和が対象です。

 警察庁交通規制課によると、駐車規制区間から「二輪車を除く」の補助標識でバイクを除外した見直しは、全国で3万532区間、総延長距離2万560km。

 道路標識で「駐車可」を表示し、補助標識で「二輪車」を対象として駐車を可能にした区間は129区間、総延長3.753kmでした。

 駐車禁止から除外する区間を、警察庁のある千代田区周辺で探しましたが、見つかりませんでした。警察署にも問い合わせしましたが、探し出すまでに時間が必要とのことでした。

 駐車可の分類は、少し説明が必要かもしれません。この標識は、イレギュラーな駐車を合法とするため、指定区間を駐車可にすることを意味する標識です。

 例えば、東京都中央区銀座にあるバイク専用の時間制限駐車区間は駐車可能台数を増やすために、都内でも珍しい斜め駐車ができます。しかし、道路の左側端に沿わない斜め駐車は違法のため、駐車可の標識を併設しています。

 時間制限駐車区間(パーキングチケット/パーキングメーター)を設置している区間のことではありません。銀座のこの区間は、前述の129区間のひとつになっています。

 また、千代田区有楽町には、バイクではなく貨物車を対象にした駐車可の設置があります。一方通行の右側で荷捌き駐車スペースを設置したためですが、このように何らかの事情がある場合にしか「駐車可」は認められないため、バイクに限定した区間は、わずか129区間に留まっているようです。

警察庁のバイク駐車区間見直しは本気、同種の通達は2度目だった

 2021年3月24日、警察庁交通規制課は都道府県警察に向けて「地域の実情に応じた自動二輪車等に係る駐車環境の整備に向けた継続的な取組の推進について」(第21号)という通達を出しました。他の交通の妨害にならないことを前提に、駐車環境の整備を求める内容です。

2021年3月24日に「地域の実情に応じた自動二輪車等に係る駐車環境の整備に向けた継続的な取組の推進について」(第21号)という通達を出した
2021年3月24日に「地域の実情に応じた自動二輪車等に係る駐車環境の整備に向けた継続的な取組の推進について」(第21号)という通達を出した

「自動二輪車等の保有台数当たりの駐車場台数を見ると、依然として自動車(四輪車)に比べて少ない水準にあり、とくに大都市において自動二輪車等の駐車場が不足している状況にある」という警察庁の認識は、2018年の前通達を踏襲するもので、バイク駐車場不足についての深刻な認識を示していました。

 見直し状況の数字は、通達の中で2022年度中の実績の報告を求めていて、この報告をもとに、警察庁が取材に回答したものです。

 警察庁の通達では駐車規制区間の見直しと共に「地方公共団体、道路管理者、民間事業者等に対して、自動二輪車等の駐車需要が認められる場所において、既存路外駐車場における自動二輪車等の利用を可能とする設備等の整備や自動二輪車等が駐車可能な路外駐車場の新設が図られるよう働き掛けること」としています。

 しかし、地方自治体の中には駐車場整備を怠り、警察の取締りだけで駐車問題を解決しようとする自治体もあります。総務省も警察庁と歩調を合わせることなく、縦割り行政が弊害になっています。

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Writer: 中島みなみ

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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