ハーレーがMotoGP日本グランプリで存在感!? 世界最高峰の舞台を走る“バガー”レースの可能性に迫る!!
大盛況のうちに閉幕したMotoGP日本グランプリでは、中央エントランス・グランドスタンドプラザの展示エリアにハーレーダビッドソンの巨大なブースが姿を現しました。「どうしてハーレーがMotoGPに!?」現場を取材したバイクジャーナリストの青木タカオさんは、背景にハーレーダビッドソンの新たなモータースポーツ戦略があると指摘します。いったい、どういうことなのでしょうか。
ハーレーとMotoGPとの関係性とは!?
過去最多となる12万1997人の来場者を集めた2026年シーズンのMotoGP日本グランプリの会場で、ひときわ異彩を放つブースがありました。ハーレーダビッドソンです。
「なぜMotoGPにハーレーが?」
そう思った人も少なくないでしょう。ハーレーと言えば、長距離ツーリングを楽しむ大型クルーザーやツアラーのイメージが強く、サーキットを舞台に世界最高峰のロードレースを戦うMotoGPとは、ずいぶん距離があるようにも感じられます。
ところが2026年、その関係は大きく変わりました。ハーレーダビッドソンは今シーズン、FIM公認の新たな世界選手権として「Harley-Davidson Bagger World Cup(ハーレーダビッドソン・バガー・ワールドカップ)」をスタートさせました。その舞台は、MotoGPのレースウイークエンドです。
つまり今回、もてぎにハーレーが現れたのは単なるプロモーションではありません。ハーレー自身がMotoGPと同じサーキットを舞台に、新たなレーシングカテゴリーをスタートさせているからです。
巨大なバガーが世界選手権を戦う
そもそも「BAGGER(バガー)」とは、大型のフェアリングやサドルバッグを備えたツーリング系の車両のことを指します。

そんなバイクをレースマシンに仕立て上げ、サーキットで限界まで走らせる……まさに矛盾した存在とも言えるでしょう。しかしその矛盾こそが、バガーレースの醍醐味なのです。
レースマシンのベースとなるのは、ハーレーダビッドソンのグランドアメリカンツーリングと呼ばれるツアラーシリーズのプラットフォームです。「ロードグライド」をベースに、ミルウォーキーエイト131Rと呼ばれるVツインエンジンを搭載しています。
排気量は131キュービックインチ(約2147cc)で最高出力は200馬力を超え、最高速は300km/hに達します。
車体重量はおよそ280kgで、数字だけを見ても一般的なロードレーサーとはまったく異なるカテゴリーであることが分ります。
本来なら、長い距離を悠々と走るための巨大なツアラーですが、サーキットでは深く車体を傾け、ブレーキングで前タイヤに荷重をかけ、ライバルとわずかな差を争います。
「重い」「大きい」というグランドツアラーの個性をレースの魅力に変えてしまうことに、このカテゴリーならではの面白さがあります。
MotoGPと同じ週末に世界を転戦
巨大なハーレーがMotoGPと同じサーキットを走る……その意外性こそが、ハーレーダビッドソン・バガー・ワールドカップの大きな魅力になっています。2026年の初年度シーズンは6つのグランプリにて、12レースが行われました。
アメリカ・COTAで幕を開け、イタリア・ムジェロ、オランダ・アッセン、イギリス・シルバーストーン、スペイン・アラゴンを経て、オーストリアのレッドブル・リンクでシーズンを締めくくりました。
世界中から注目を集めるMotoGPの舞台にバガーレースを組み込むことで、ハーレーはこれまでとは異なるレースファンに、その存在を強くアピールできます。
一方、MotoGP観戦に訪れたファンにとっても、これまで見たことのないカテゴリーに触れる機会となるでしょう。
初代王者はアーチー・マクドナルド
記念すべき初代チャンピオンに輝いたのは、オーストラリア出身のアーチー・マクドナルドです。Joe Rascal Racingから参戦し、全12レースを戦い抜いて初代王者の称号を手にしました。
最終ランキングはマクドナルドが202ポイントで2位のオスカル・グティエレスが193ポイント、3位のエリック・グラナドが192ポイントと、最後まで激しいタイトル争いが繰り広げられました。
つまり、これは単なるショーレースではありません。世界選手権として、すでに本格的なレースが成立していると言えるでしょう。
そしてハーレーダビッドソンは、このチャンピオンシップをさらに大きくしようとしています。
ハーレーダビッドソンのグローバルレーシングプログラムディレクターであるジェフリー・シュースラー氏は10月1日、バガーワールドカップについて次のように語っています。
「まだスタートラインに立ったばかりです。私たちは今、ここから発展させていく素晴らしい基盤を手にしています。そして、目の前には非常に大きな可能性があります」
さらに同社のブライアン・ニケス最高執行責任者(COO)も、初年度の成功とMotoGP、IRTA、FIMとのパートナーシップを背景に、FIMハーレーダビッドソン・バガー・ワールドカップへの投資を拡大していく方針を明らかにしました。
単発で終わるカテゴリーではなく、ここからが本当のスタートと考えてよさそうです。
日本GPはどうなる?
そこで気になるのが、来シーズン以降の日本グランプリでの開催です。今シーズンのもてぎには、存在感が際立つ大きなハーレーブースが出現しました。

多くのレースファンが足を運び、アパレルを購入したり、バガーレーサーを操るシミュレーターを体験していました。このシミュレーターには長い列ができるほどの人気ぶりです。
実際に体験したMotoGPファンに、「ハーレーのバガーレースが、日本グランプリで見られることを期待していますか?」と聞くと、答えは即答でした。
「もちろんです!」
バガーワールドカップは、すでにMotoGPとともに世界を転戦しました。そしてハーレーダビッドソン自身も、さらなる投資を明言しています。ならば、日本GPでその姿を見られる可能性も、決して夢物語とは言い切れないでしょう。
もてぎの長いストレートを、巨大なバガーが大排気量Vツインを唸らせながら駆け抜け、コーナーでは深くバンクし、サドルバッグを揺らしながら次のコーナーへ飛び込んでいく……MotoGPの週末に、そんな光景が加われば、より観戦客を楽しませてくれることでしょう。
「なぜMotoGPにハーレー!?」
その答えは、目前にまで迫っているのかもしれません。

Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。







































