電動バイクはスクーターだけ? バラエティゆたかな海外メーカーとは異なる日本の事情とは

海外ではさまざまなタイプの電動バイクが登場していますが、日本はどうなのでしょうか? スポーツタイプの電動バイクが市販される日は来るのでしょうか。

電動バイク、海外メーカーの方が力を入れている気がするのはなぜ?

 バッテリーを積み、電気モーターで走る「EV」(=電動の乗りもの)は、「未来の乗りもの」「次世代のエネルギー」「近い将来ガソリンエンジンにとってかわる」などと言われ、早20年以上が経ちます。EVのクルマは街中で少しずつ増えていますが、EVのバイク、電動バイクはまだまだ普及レベルではないようです。

アメリカのZERO MOTORCYCLESが手掛けるスポーツタイプの電動バイク「SR/F」

 日本のバイクメーカーも1990年代からEV開発に取り組んではいますが、これまで市販してきたのは原付スクーターばかりで、スポーツタイプはまだ発売されたことがありません。

 海外メーカーであれば、たとえばアメリカのZERO MOTORCYCLES、イタリアのENERGICAなどがスポーツタイプの電動バイクを発売しているほか、ドイツのBMW Motorrad、イタリアのADIVAなどはEVで大型スクーターをラインナップし、日本でも販売しています。

 日本が世界に誇る4大メーカー(ヤマハ、ホンダ、スズキ、カワサキ)が、電動バイクの分野で後塵を拝しているように見えるのですが、なぜなのでしょう?

 自社製の電動バイクレーサーで、マン島TTレースやアメリカのパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムに挑んでいる、Team MIRAI代表の岸本ヨシヒロさんにお話しをうかがいました。

「日本のバイクメーカーがEVでスポーツバイクを市販化しない一番の理由は、やっぱり“儲からないから”でしょうね。いまはまだバッテリーの値段が高いですし、ビジネスにならないと判断すれば手を出しにくい分野だと思います。

 逆に海外、とくにアメリカのメーカーはベンチャーマインドが違うと感じます。彼らは無いものを作るという“モノ作り”マインドだけでなく、“市場を作る”ところまで視野に入れて開発しているんです。日本のメーカーはその点が苦手なんでしょうね」

2019年のマン島TTレース TT Zeroクラス参戦の電動バイクレーサー「韋駄天X改」とTeam MIRAI代表の岸本ヨシヒロ氏(2019年5月15日撮影)

 EVでレーシングバイクを開発していて、一番の魅力はどういう点なのでしょうか?

「パワーをダイレクトに伝える、圧倒的な加速感ですね。トルクもエンジンでは出せない領域ですし、ギア操作もなくドカンとパワーが出ます。EVならではの加速感は、例えば直列4気筒やVツイン、2ストエンジンの乗り味がそれぞれ違うように、電動は電動でしか感じられない乗り味があります」

※ ※ ※

 これまでモータースポーツの発展にはレースの土壌がありましたから、世界各国のレースで電動バイクが活躍し、やがて一般の人たちにもひとつのジャンルとして電動バイクがある、と捉えてもらえるようになるといいですね。

【了】

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Writer: 小林ゆき(モーターサイクルジャーナリスト)

モーターサイクルジャーナリスト・ライダーとして、メディアへの出演や寄稿など精力的に活動中。バイクで日本一周、海外ツーリング経験も豊富。二輪専門誌「クラブマン」元編集部員。レースはライダーのほか、鈴鹿8耐ではチーム監督として参戦経験も。世界最古の公道バイクレース・マン島TTレースへは1996年から通い続けている。

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