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ハリウッドスターからも支持されるカスタムビルダー「木村信也」 渡米直前に作られたカブ・カスタムに込めた想いとは

近年、日本のカスタムバイクシーンは世界から注目を集めるほどに成長を遂げていますが、その火付け役といえる人物が、現在米国で活躍する木村信也氏でしょう。ここではそんな同氏が渡米前に手掛けたカスタム・カブを紹介していきます。

日本が誇るスーパーカブをベースに世界に示したジャパニーズ・カスタムスタイル

 1990年代に日本のハーレー・カスタム・シーンで一大ムーヴメントを巻き起こし、世界にまでその名を轟かせたビルダー、木村信也氏。1992年に愛知県岡崎市で『リペアショップ・チャボ』を設立した同氏は、その後『ZEROエンジニアリング』にて数々のカスタム・ハーレーを生み出し、2006年からは拠点をアメリカに移して『チャボ・エンジニアリング』として活動を続けています。

車両はベースがホンダC100であることを一瞬で判断出来ないスタイル。ビルダー、木村信也氏の独創性を強く感じさせます

 そんな木村信也氏が渡米の直前に日本で製作した一台のカスタムには、ともすれば自らの『原点回帰』を示唆する意味があったかもしれません。

 昭和の時代なら10代の頃に「手近にある原チャリをイジった」という経験があるという方も多いと思いますが、木村信也氏がベースに選んだのは1960年式ホンダC100。OHVエンジンを搭載した、いわばスーパーカブの元祖といえるモデルです。

 90年代、それまでハーレー・カスタム・ビルダーのイメージが強かった同氏が、あえてこの車両を選んだことには、繰り返しを承知で言えば何か深いメッセージが隠されているような気がします。

 累計販生産数で一億台超ともいわれている日本を代表するこのモデルをベースに、木村信也氏が注いだ技の数々は、あくまでも斬新。日本でカスタムを行う場合、400cc以上のモデルだと『車検制度』があり、それが足かせとなることもありますが、『hoon』と名付けられたこの一台からは木村氏が何にも囚われず、自由な発想で対峙したことが伺えます。

サイドビューはネックが寝た『ゼロスタイル』のハーレー・カスタムを彷彿とさせるシルエット。写真からは伝わりにくいかもしれませんが、車体はかなりコンパクトです

 スクエア(角型)となったメインフレームはネックが寝たハーレーの『ゼロ・スタイル』を踏襲したシルエットとなっているのですが、そこに散りばめられたディテールの数々は製作されてから13年以上の時を経て見ても尚、唸らされるもの。
 
 あたかもヴィンテージのガス燈を横たわらせたようなデザインのガソリンタンクや、本来ヘッドライトがあるべき箇所に取り付けられたホーン、そしてエンジン前方に備えられたヘッドライトなど、その発想の数々は心の底から湧き起こる創作意欲を、そのまま素直に具現化したかのような雰囲気を漂わせており、対峙したスタンスは芸術家のソレに近いのかもしれません。

世界から注目を集める日本のカスタム・ビルダー

 実際、木村信也氏は渡米してから、カスタムを製作する上で多くのビルダーが使用するイングリッシュホイール(板状の金属の表面を滑らかに整える工作機械)を捨て去り、手によるハンマリングにこだわって車両の外装を製作しているのですが、同じ曲線が二つとないフィニッシュは、やはり、油絵の具で描きあげたアートを彷彿とさせるものです。

タンクは鉄とアルミ、二つの素材を掛け合わせたハンドメイド。手仕上げならではの造形が芸術作品のようなムードを醸します

 ちなみにカリフォルニアのチャボエンジニアリングには、ブラッド・ピットやオーランド・ブルームなどのハリウッドスターも訪れ、木村信也氏にカスタムをオーダーしているのですが、ハリウッドセレブである彼らも、地上に二つとない唯一無二のアートを求めているのかもしれません。メーカーから出荷された工業製品と違い、金を積めば簡単に手に入るワケではないものを求める心理は、ともすれば人間の究極の欲求なのではないでしょうか。

 近年は我が国のアニメやゲームが『COOL JAPAN』として注目され、世界中から多くの視線を集めていますが、一般的には知られていないものの、じつはチョッパーの業界においても日本人ビルダーが世界から高い評価を受けています。

 そして、その中で第一人者といっても過言ではない木村信也氏が、活動の拠点を米国に移す直前に日本を代表するスーパーカブというモデルをカスタムの素材として選んだ行為には、何か一つの意味があると思います。

 チャボエンジニアリングによる『hoon』という名のミニ・チョッパー……大げさ抜きにこの車両も日本が世界に誇るべき一台です。

【了】

世界から注目を集める木村信也氏製作のカブ・カスタム

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Writer: 渡辺まこと

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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