排気バルブ開くといよいよ本領発揮! 「CBR1000RR-R ファイヤーブレードSP」を公道で乗ってわかったこと!!

「サーキットベスト」というピュアな目標を掲げ開発されたホンダ・スーパースポーツの最高峰『CBR1000RR-R FIREBLADE SP』を公道で乗ってみるとどうなるのか。バイクジャーナリストの青木タカオさんが試してみました。

公道では不向きなレーシングポジション

「CBR1000RR-R ファイヤーブレードSP」は、乗車姿勢からして問答無用のレーシングポジションです。セパレートハンドルのグリップを握り、バックステップに足を乗せると、容量16Lの燃料タンクを抱きかかえるかのような前傾姿勢で、まるで陸上短距離走のクラウチングスタートのような格好。ニーグリップがしっかりと決まり、内ももやくるぶしのフィット感も申し分なし。取付角35度に設定されたコンパクトなウインドスクリーンに隠れようと身をかがめれば、前面投影面積が極端に小さくなり、クラス最小の空気抵抗(CD値)0.270を実現するのです。

CBR1000RR-R FIREBLADE SPで公道試乗を行う筆者(青木タカオ)

 容赦なき前傾のライディングポジションは、サーキットNo1を目指したマシンですからツーリングには不向きですが、跨って直線を300km/hを駆け抜けることを想像しただけでワクワクするではありませんか。公道で走るなら高速道路の制限速度がリミットですから、その究極ともいえるエアマネジメントの実力を存分に発揮することは出来ませんが、100km/h強でも高い防風効果を感じることができ、朝飯前とはこういうことを言うのでしょう。余裕たっぷりというか、持て余している自分が『CBR1000RR-R FIREBLADE SP』に対して申し訳ない気持ちになってきます。

ダウンフォース効かなくとも嬉しいウイングレット

 その最たるものが、ダウンフォースを発生させるウイングレットかもしれません。左右のダクト内側へ縦に3枚ずつ配置され、加速時のウイリー抑制やブレーキングおよびコーナリング時における安定感の向上に貢献していますが、公道走行での速度域で果たして効果があるのか……。ただし、大排気量スーパースポーツでそれを言い出したら、もう疾うの昔から公道で性能をフルに発揮することなんてできません。最高峰マシンに乗っているというロマンに浸れれば、それで充分ではないでしょうか。

CBR1000RR-Rのシート高は830mm、身長175cmの筆者(青木タカオ)の両足はつくがカカトは浮きます

 シート高は830mmで、身長175cmの筆者(青木タカオ)が両足立ちすると指の付け根まではしっかり届きますが、カカトは浮きます。片足立ちなら着座位置からお尻もズレて、カカトまで地面にべったり。参考までに「CBR1000RR」のシート高は820mm、「YZF-R1」は855mmで、リッターSSとすれば標準的と言えるでしょう。

 カウル内にはフルカラーTFT5インチ液晶画面があり、メーターディスプレイを針式メーターをイメージしたアナログタイプやバーグラフ式にしたデジタル仕様など好みや用途によって選べます。上級仕様車のSPですので、オーリンズ製電子制御NPXフロントフォークが採用され、フォークトップから配線が伸びているのもムード満点です。

ハンドル切れ角よりラムエア優先!

 搭載する水冷DOHC4バルブ直列4気筒エンジンは最高出力218PS/14,500rpmを発揮し、81.0×48.5mmのボア・ストローク比はMotoGPマシン「RC213V」と同寸。軽量化と高回転化を両立するセミカムギアトレイン、慣性重量を約75%削減するフィンガーフォロワー式ロッカーアーム、高強度化と約20%の軽量化を実現するチタン鍛造コンロッドを採用したエンジンは、吸気バルブ挟み角を11→9度に狭角化し通気効率を向上しています。

アクセルを開けると8000rpmほどで一段とパワフルになるCBR1000RR-R

 ジェントルなサウンドは5000rpmを超えたあたりから排気バルブが開き、一気に図太く迫力が増し、その排気音が聴きたくて、さらにアクセルを開けると8000rpmほどで一段とパワフルになり、いよいよトルクバンド。スロットル操作にリニアに反応し、高回転まで胸のすく回転フィールが味わえました。

 アッパーカウルにはRC213Vと同等の開口面積を持つラムエアダクトがあり、エアフィルター面積を従来比25%拡大したエアボックスまでストレートに繋がっています。ラムエアダクトの断面積を増やしたことで、ハンドル切れ角は「CBR1000RR」より3度狭まって25度に。試しに片側1車線往復2車線の狭い道でUターンしてみますが、取り回しのことなど想定していませんからなかなか手ごわい。ハンドルを切り返して、車体の向きはようやく変わります。方向転換は広いところでゆっくりするのが得策でしょう。

公道走行は移動と割り切り、走りの歓びはサーキットで!!

 前後サスペンションももちろんサーキット向けのセッティングですが、公道でもしなやかに動き、乗り心地も良好。ハンドリングは落ち着いていて、速度域の高いコーナリングを前提とした安定志向の車体とマッチしています。マシンの向きをグイグイ変えていくには、ライダーが積極的に荷重をかけて操らなければなりませんが、バイク任せでゆったり走っているつもりでも、いつの間にかハイスピードでコーナーを駆け抜けているから、オーバースピードには要注意でしょう。公道で乗ってみましたが、一般道や高速道路は移動と割り切って、サーキットでスポーツライディングを楽しむライダーにオススメと言えそうです。

【了】

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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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