伝説的コメディアンの知られざる姿

　ジョン・ベルーシという名に聞き覚えがなくとも、黒服にサングラスの2人組が歌い踊る『ブルース・ブラザース』（1981年）の小柄なほうと聞けば、その姿が思い浮かぶことでしょう。『ビリー・アイリッシュ　世界は少しぼやけている』（2021年）のR・J・カトラー監督による『BELUSHI ベルーシ』は、米エンターテインメント界で嵐を巻き起こし、33歳という若さで命を落としたジョン・ベルーシの軌跡を追うドキュメンタリー映画です。

　地元シカゴのコメディ劇団でキャリアをスタートさせたベルーシ。若者の支持を集めた過激なコメディ雑誌「ナショナル・ランプーン」に端を発する舞台やラジオなどでめきめきと頭角を現し、後に『ブルース・ブラザース』でコンビを組むことになる盟友ダン・エイクロイドと親交を深めます。

　そして2021年現在も放送中の長寿コメディ番組『サタデー・ナイト・ライブ』に第一期メンバーとして、エイクロイドやチェビー・チェイスらと共に参加。70年代半ばから後半にかけての同番組には、やがて大スターとなって羽ばたいていくビル・マーレイやエディ・マーフィといった若き才能が出演し、1984年に興行収入を競い合った『ゴーストバスターズ』や『ビバリーヒルズ・コップ』へと繋がっていきます。

　そんな彼らが映画界で大活躍できたのも、1978年のベルーシ初主演作『アニマル・ハウス』の大ヒットがあったこそでしょう。本作は同年の興収ランキング第4位となり、「ナショナル・ランプーン」がおちゃらけた若者たちの内輪ジョークのレベルではない、凄まじい才能の集まりであることを証明しました。このあたりの顛末については、Netflixオリジナル映画『意表をつくアホらしい作戦』（2018年）で描かれているので、あわせて観ることで理解が深まるはず（ベルーシ役の俳優はまったく似ていませんが）。なお、『サタデー・ナイト・ライブ』はHuluで最新シーズンが配信中です。

　そんなベルーシはハーレーダビッドソンと縁があるようで、『アニマルハウス』にはハーレーダビッドソンXLCHスポーツスターが、ワイルド・ビル・ケルソー大尉役で出演したスティーブン・スピルバーグ監督の『1941』（1979年）にはハーレーダビッドソンUAが登場します。

　ジョン・ベルーシという伝説的コメディアンの人生を、そして現在まで続く米コメディ史を振り返る意味でも観ておきたい『BELUSHI ベルーシ』は、2021年12月17日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開です。