僕らのアドレス125が大人の階段のぼった! 従来型オーナー「羨ましい」と悶絶!!
アドレス愛が強すぎる従来型オーナーのバイクジャーナリスト青木タカオさんが、新型アドレス125に試乗。「羨ましい」と悶絶しながら細かすぎる部分もチェックする熱いレポートをお届けいたしましょう。
オシャレに大変身!
先代のアドレス125を所有する筆者(青木タカオ)としては、新型を見てまず最初に感じるのは「オシャレになった」「あか抜けた」という驚き。

丸みを帯びたシルエットで、ヨーロッパの街にも似合いそうなネオレトロ路線のデザイン。ヘッドライトはLEDになり、レンズのまわりは高級感のあるクロームボディで彩られているではありませんか!
これはチョットした戸惑いでもあり、通い慣れたバイク屋さんがメーカー直系の正規ディーラーとして堂々たる看板を掲げて、まるで輸入四輪車のディーラーのようなハイソな店構えになったかのようで、嬉しくもあり、少し照れて距離を置いてしまったりしまうのです。
しかし、従来型オーナーとしては、リアルにたいへん気になる新型アドレス125。乗ってみると、自分のような既存ユーザーも納得の出来栄えだったから、ここでレポートさせていただきましょう。

それは町のバイク屋さんが見た目こそ大きく変わったものの、店の中に入ったらお馴染みのオヤジさんや奥さまが以前と変わらない笑顔で迎えてくれたときのような安堵感と言いますでしょうか、「やっぱりアドレス125はいいなぁ」と思うのでした。
新型にはフェンダーがある!
学生時代の初恋の相手が、大人になって再会したら一段と美しくエレガントに……。えっ、もう“たとえ話”はいいですって? 失礼いたしました。自分、新型アドレス125の進化を体験し、気持ちの高ぶりが抑えられない模様でございます。

まず、新型アドレス125がスタイリッシュになったとひと目で感じさせるポイントは、ふんわりと膨らんだ曲線基調のデザインにあります。そして新型には、スチール製で上質感のあるフロントフェンダーが備わっているから驚きを隠せません。
従来型はフロントフェンダーレスでノーズが尖っていて、“やる気まんまん”とでも言いましょうか、グイグイ行きまっせ! といったアグレッシブな走りを予感させるものでした。
初代キャッチコピーは「僕らのアドレス」
ノーズの尖ったスタイルは、原付1種のスクーターながら若者たちに“速さ”をアピールし、1987年に登場した初代アドレス50から脈々と受け継がれてきたものです。

レーサーレプリカブームの時代に発売された初代のキャラクターは、強烈なほどに濃いものでした。当時、スペック至上主義は50ccにまで影響を及ぼし、ホンダのタクトが5.8馬力ならヤマハ・ジョグは6馬力に。ならばと、アドレス50は6.5馬力でデビューし、翌年のアドレスチューンでは7馬力と競争を激化させます。
「僕らのアドレス」が初代のキャッチコピーで、“僕ら”とはヨンヒャクやニーハンがまだ買えなかったゼロハン(死後!?)ライダーたち。16歳の誕生日を迎えると、最初にまずやることが原付1種免許の試験を受けに行くことだった彼らは、タクトかジョグかアドレスかで大いに悩んだのでした。
マイナーだった原付2種で大ヒット
アドレスシリーズの人気を決定づけたのは、後にスクーターの主戦場となる原付2種クラスで大ヒットしたモデルでした。

50ccベースの軽い車体、前後10インチホイールの車体に2スト100ccエンジンを積み、“通勤快速”と呼ばれるほどの俊足っぷりを発揮した1991年発売のアドレスV100です。20万円を切るリーズナブルな価格設定もあり、原2スクーターの人気を牽引をする存在となっていきます。
4スト化の波がやってきて、ロングセラーだったアドレスも2005年にV125へと進化。量産市販車初のアルミフレームを1983年のRG250ガンマに採用するなど、先取りが大好きなスズキはクラス初となるフューエルインジェクションをアドレスV125に導入し、“通勤快速”の座は譲らんと言わんばかりにクラス最軽量(車体重量85kg乾燥)を誇ったのでした。
変わっていなくてよかった重要ポイント
車名から“V”が外れて、快適さも重要視された作り込みがされたのが、筆者の所有する先代。2017年にフルモデルチェンジし、試乗すると「これはいい!」とすぐに近所のスズキワールドで新車を購入したのですが、あれから5年が経ちます。

跨ると足つき性は大きく変わりません。身長175cmの筆者の場合、片足立ちなら余裕でカカトまで地面にベッタリ届きます。足もとも広く、膝がインナーパネルに当たりそうという窮屈さも感じません。
両足を出すと、シートの座面が真っ平らで先端が絞り込まれた形状なので、意識せずとも前寄りにお尻がずれて足が出しやすいことがわかります。着座ポイントは自然と前よりになるものの、両足ともしっかりと地面に足が届きます。

スペックを確かめるとシート高は770mmで、先代より25mm高くなっているから差を感じるはずですが、自分が所有するアドレス125は【フラットシート仕様】だったことを思い出します。シート高は760mmですから、新型との差はわずかに10mm。ほとんど変わらないと感じたのも合点がいきます。
変更がないのは、大きくてフラットなシートで、ゆったりとしたライディングポジションとなること。そして、そのままで良かったと感じる広々としたフロアボードです。
足を少し投げ出したり、逆に後ろへ折り曲げてみたり、自由度の高い乗車姿勢なのは相変わらず。オーナーとしては、これがとても重要だと思っています。
装備内容の進化が羨ましい
シンプルなメーターは大きくて見やすいアナログのままですが、小型の液晶ディスプレイが埋め込まれているではありませんか! 指針式の燃料計がバーグラフ式にデジタル表示され、走った距離を知ることができるトリップメーターや電圧計、時計も切り替えて目視することができます。これら機能は、はっきり言って羨ましい!

ブルーやグリーンに点灯して、どういう意味があるのだろうと思いましたが、すぐにわかります。穏やかに走って、燃費のよい運転の状態ですと緑、通常は青なんですね。これは安全運転啓蒙に役立ちそうで、筆者もまたグリーン点灯で走行しようと心がけるのでした。
フロントインナーパネルの左側には、オープンタイプの小物入れがありペットボトルが収まる大きさ。その上には、スマートフォンの充電などに便利なUSBソケットを標準装備しているのも見逃せません。従来型にUSBソケットはなく、スズキワールドにて納車時に追加装備してもらったので、これもまた羨ましいかぎりです。

筆者の場合、フロントフックもフル活用するのですが、これを膝の前だけでなく、シート下の股ぐらに追加装備しているのもポイントが高い。どのようにして使うのか、吊り下げられるのは小さい袋や小振りなカバンに限定されるはずですが、引っ掛けるところは多いほどありがたいものですから、チェックポイントとして挙げておきましょう。
給油がしやすくなった
ガソリン給油口が車体後部、テールライトの上に配備されたのも大きな変更点と言えるでしょう。キーロックでキャップごと外れ、従来のシートを開けるという動作を省略しています。キャップにはクロームが施され、見た目にもリヤエンドでアクセントになっています。

丈夫で大きいリヤキャリアを標準装備していましたが、握りやすいグラブバーへと刷新されているのも全体のイメージを刷新することに影響を及ぼしました。トップケースを備えるユーザーが多いはずですが、リヤキャリアやトップケース、アダプタープレートなどはオプションにて設定されます。
また、マフラーのヒートガードもクロームメッキで仕上げられ、立体エンブレムであったりと車両全体で上質感が演出されているのも、新型の推しポイントになっています。こうしたところが所有欲を満たしてくれるのでしょう。
優れた加速力は健在!
アドレスを選んできたユーザーの中には、肝心なのはダッシュ力という人も少なくないでしょう。コンパクトで軽量な空冷SEP(スズキ・エコ・パフォーマンス)エンジンは、低中速重視の味付けでキビキビ走ります。

見た目こそ穏やかになっているものの、実際の車体サイズは全長を75mm短縮し、車体重量も4kg減らして105kgに。最高出力こそ9.4→8.7PSへ下げたものの、鋭い加速感はしっかり受け継がれ、ゼロ発進もライバルらと比較しても遜色ないか、リードできるのではないでしょうか。

とはいえ、フロント12インチ、リヤ10インチの足まわりを持つ車体は落ち着いていて、乗り心地は快適志向。メーターを見ると、ブルーよりグリーンの点灯で走行したくなるのでした。
左ブレーキレバーを握ると前後ブレーキが同時に作動し、安定した制動をサポートするコンバインドブレーキも採用。ヤンチャだったアドレスが、落ち着いて気品さえ感じるシティーコミューターへ成長を遂げているのです。
自分を含め、少し大人になったユーザーさんたちに好評を博すこと間違いなしでしょう。
Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。