あと2年で原チャが絶滅危機!? 原付一種の2025年問題とは

「原付」や「原チャリ」などの愛称で親しまれている原付一種は、2025年に大きな転換点を迎えるとされています。いったい、原付一種にどのような変化が起こるのでしょうか。

2025年11月以降は原付一種が新車で買えなくなる?

 2019年2月、国土交通省は新たな排出ガス規制(「令和2年度排出ガス規制」)を公布、施行しました。

 この排出ガス規制は、新型車においては2020年12月以降、継続生産車においては2022年11月以降に生産されるバイクに対して適用され、規制対応が難しい一部のモデルは販売終了を余儀なくされています。

猶予されていた「令和2年度排出ガス規制」が2025年に原付一種にも適応される
猶予されていた「令和2年度排出ガス規制」が2025年に原付一種にも適応される

 一方、原付一種の継続生産車については、2025年11月以降に生産されたバイクから規制が適用されるなど、一定の猶予期間が与えられています。

 そんな「令和2年度排出ガス規制」は、欧州を中心に採用されている「ユーロ5」とほぼ同水準の規制。国産基準の排出ガス規制の採用は先進国にとっては事実上の義務となっており、2輪メーカーにとっては避けることのできないものです。そして排出ガス規制に対応するための膨大なコストを取り戻すために、2輪メーカーは同一モデルを多くの国や地域で販売したり、車両価格を引き上げたりするなどの対策をおこなってきました。

 しかし、日本国内でしか販売されず、なおかつ安価であることが求められる原付一種では、排出ガス規制に対応するためのコストを回収することが難しいのが実情です。

 加えて、排気量の小さな原付一種では、より排気量の大きいバイクに比べて排出ガスの浄化が技術上困難であるとも言われています。原付一種のみ令和2年度排出ガス規制の適用が猶予されている背景には、こうした事情がありました。

 ただ、令和2年度排出ガス規制が公布されてから3年あまりが経過した現在、主要2輪メーカーが販売している原付一種のほとんどは、この排出ガス規制をクリアできていません。このままでは、2025年11月をもってほとんどすべての原付一種が生産終了となり、それ以降新車で購入することが難しくなってしまいます。

 こうした問題は一部で「2025年問題」と呼ばれ、日本の2輪業界の大きな転換点となる可能性が指摘されています。

絶滅or区分変更?どうなる原付一種

 では、原付一種はこのまま消滅してゆく運命にあるのでしょうか。

2025年以降も原付一種モデルが生き残るには電動化が選択肢のひとつ
2025年以降も原付一種モデルが生き残るには電動化が選択肢のひとつ

 日本自動車工業会が発表している原付一種の販売台数を見ると、1980年には約198万台だったものが2021年には約13万台にまで減少しています。

 こうした状況のなかで、日本でしか販売することのできない原付一種に2輪メーカーが注力するとは考えにくく、グローバルで販売することが可能な原付二種(排気量51ccから125cc)へと置き換えられていく可能性が高いと見られます。

 一方、既存の原付一種が生き残るためには電動化は避けられず、ただ、そこには大きな問題があります。

 複雑なハイブリッドシステムを搭載することが難しいバイクでは、電動化とはBEV化、つまり純電動バイク化しか、電動化の選択肢がありません。しかし、電動バイクは既存の部品やノウハウの転用が容易ではなく、バッテリーの原材料となるレアメタルの相場も高騰していることから、車両価格の上昇は避けられません。

 さらに、中国メーカーなどから安価かつ高性能な電動バイクが投入される可能性も高く、日本の2輪メーカーにとってビジネス上のメリットが見出しにくいカテゴリとなります。

2023年7月からは新たな区分として特定小型原付が新設され、電動キックボードなどが分類される
2023年7月からは新たな区分として特定小型原付が新設され、電動キックボードなどが分類される

 そこで検討されているのが、原付一種という枠組みそのものを見直すこと。

 具体的には50cc以下という排気量による基準を緩和し、最高出力で区分するという案が、2輪販売店を中心とした業界団体である「全国オートバイ協同組合連合会」によって提案されています。この案が実現すれば最高出力を一定以下に規制することで、現在グローバルで主流となっている125ccクラスのバイクを原付一種として扱うことができるようになります。

 そうなると、50cc以下のバイクが消滅したとしても、実用面ではほとんど影響がない上に、125ccクラスの多種多様なモデルを原付一種として手軽に乗ることが可能です。

 しかし、法改正には関係省庁などとの折衝が必要であるため、実現までには相応の時間を要すると見られます。さらに、原付二種などとの差別化も焦点となるでしょう。

 2025年11月まで残された時間はそう長くはありません。長らく続いてきた原付一種の枠組みが変更されるのかどうかに、注目が集まっています。

※ ※ ※

 いずれにせよ、「原付」や「原チャリ」として愛されてきたこれまでの原付一種のバイクたちは、2025年を境にそのほとんどが生産終了となることは必至です。

 一方、2023年7月からは新たな区分として特定小型原付が新設され、それまで原付一種に区分されていた電動キックボードなどに対する規制が緩和されることになります。つまり、既存の原付一種のユーザーのうち、より短距離の移動がメインの場合には特定小型原付の電動キックボードなど、より長距離の移動がメインの場合には原付二種のバイクなどを利用するという流れが示されつつあるのです。

 それぞれに一長一短があるこれらの乗り物ですが、現在原付一種を利用しているユーザーは、自身に合った選択肢をチェックしておくと良いでしょう。

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