【現地】グランドスタンド前のスタート位置から見た2023年「マン島TTレース」決勝の様子
現存する世界最古のバイクレースとして知られる「マン島TTレース(Isle of Man TT Races)」が、2023年5月29日~6月10日の日程で開催されました。5日間の予選を順調に終え、いよいよ始まったレースウィークの模様をお伝えします。
「スーパースポーツTTレース1」ダンロップ選手がレコードラップで22勝目を挙げる
モーターサイクルによる伝統の公道レース、「マン島TTレース(Isle of Man TT Races)」(以下、TTレース)の決勝(レース)ウィークが6月3日の土曜日に始まり、開幕戦の「スーパースポーツTTレース1」でマイケル・ダンロップ選手(Honda CBR600RR)が1周(約60km)のラップタイム17分31秒825、平均時速129.136マイル(206.618km/h)というコースレコードを記録して優勝しました。
TTレースの開幕戦は例年、最高峰クラスの「スーパーバイクTT」からでしたが、今年はこれまで教会の日曜礼拝を配慮して行なわれなかった日曜日にも初めてレース日が設定され、「スーパーバイクTT」はレースウィーク2日目の日曜日に移動となりました。
ということで決勝1日目の「スーパースポーツTT」は、4ストローク4気筒600ccを中心としたクラスで、ほかに3気筒675cc、2気筒750ccも参戦できます。
参戦している主なマシンは、ホンダ「CBR600RR」、ヤマハ「YZF-R6」、スズキ「GSX-R600R」、カワサキ「Ninja ZX-6R」、トライアンフ「DAYTONA675」などですが、ACU(オート・サイクル・ユニオン:イギリスのレース統括団体。日本での日本モーターサイクルスポーツ協会「MFJ」に相当する)の「スーパースポーツNEXT GENERATION」と、FIM(国際モーサータイクリズム連盟)の「Phase2ホモロゲーション」のレギュレーションにしたがい、636ccのカワサキ「Ninja ZX-6R」も出場しています。
「スーパースポーツ」クラスはもともと、TTレースが世界グランプリシリーズの一戦だった時代の「ジュニア」と呼ばれる中間クラス(350ccまでの4ストロークと2ストロークによるクラス)が移行したものです。
1977年には世界グランプリシリーズから外れ、新たに現在の世界スーパーバイク選手権シリーズ(WSBK)の元になった市販車改造クラスの「TT-F1」(4ストローク750cc)、その下位クラスの「TT-F2」(4ストローク600cc)と「TT-F3」(2ストロークまたは4ストロークの250ccから400cc)が創設されました。
そこから市販車4ストローク600ccのクラスとして定着したのが「スーパースポーツ」クラスです。
今回優勝したマイケル・ダンロップ選手は、TTレース100周年の2007年にTTレースデビューしています。今回の優勝で22勝目となりましたが、そのうち10勝は「スーパースポーツ」での優勝です。
現役最多優勝記録を持つ、ジョン・マクギネス選手の23勝に追いつくのか。また伯父の故ジョイ・ダンロップのTT最多26勝にどれだけ迫れるのか……。
「スーパースポーツTT」のレース1を終え、このあとダンロップ選手は「スーパーバイク」、「スーパーストック」、「スーパースポーツ」、「スーパーツイン」、「シニアTT」と、計7レースに出場する予定です。
【スーパースポーツTTレース1結果:4周/エントリー64台/出走55台/完走41台】
1位
#6 マイケル・ダンロップ(Yamaha YZF-R6)
所要時間01:11:22.090
平均時速126.880マイル
2位
#10 ピーター・ヒックマン(Triumph Daytona ST765R)
所要時間01:11:34.420
平均時速126.516マイル
3位
#2 ディーン・ハリソン(Yamaha YZF-R6)
所要時間01:11:34.814
平均時速126.504マイル
41位
#59 山中正之(Honda CBR600RR)
所要時間01:20:22.400
平均時速112.664マイル
Writer: 小林ゆき(モーターサイクルジャーナリスト)
モーターサイクルジャーナリスト・ライダーとして、メディアへの出演や寄稿など精力的に活動中。バイクで日本一周、海外ツーリング経験も豊富。二輪専門誌「クラブマン」元編集部員。レースはライダーのほか、鈴鹿8耐ではチーム監督として参戦経験も。世界最古の公道バイクレース・マン島TTレースへは1996年から通い続けている。