「えっ、まだあるの!?」2スト125ccクラスのヤマハ「YZ125X」で味わうクロスカントリーモデルの刺激!!
ヤマハのオフロード競技モデル「YZ」シリーズには、モトクロスだけでなく自然の地形を走るクロスカントリーやエンデューロに対応した「X」モデルも用意されています。その125ccクラスを担うのが「YZ125X」です。2ストモトクロッサー「YZ125」をベースに開発された2027年型のクロスカントリー競技用モデルに、バイクジャーナリストの青木タカオさんがスポーツランドSUGOの林間コースで試乗しました。
いまなお健在、2スト125ccクラスの刺激!!
「これだよ、これっ!」と、思わず声が出そうになります。アクセルを開けた途端、2ストローク125ccらしい甲高いサウンドとともにエンジンが一気に吹け上がり、鋭い加速を見せる。軽量な車体はフワッと浮くような感覚で、前へ飛び出していきます。
乗ったことがある人なら、きっと合点がいくでしょう。やっぱりこの感覚は4ストでは味わえません。昨今ではすっかり乗る機会が減ってしまった2サイクルエンジン、さらにキャブレター仕様です!!
「えっ、そんなのあるの!?」と思う人も少なくないかもしれません。ヤマハはオフロードコンペティションモデルの「YZ」シリーズで、今なお2ストロークモデルをリリースし続けています。

今回、スポーツランドSUGO(宮城県)の林間コースで筆者(青木タカオ)が乗ったのは、クロスカントリー競技用の2027年型「YZ125X」です。モトクロッサー「YZ125」をベースに、自然の地形を走るクロスカントリーやエンデューロで扱いやすいよう、エンジンやサスペンションなどに専用セッティングを施したレースマシンです。
ところで、クロスカントリーモデルとは?
ヤマハ「YZ」シリーズにおけるクロスカントリーモデルには、車名の末尾に「X」がつきます。サイドスタンドが備わり、モトクロスモデルでは19インチのリアホイールを18インチ化していることが外観上の主な違いです。
タイヤのエアボリュームを確保しやすい18インチ化は、荒れた路面での追従性やトラクションにもつながります。エンデューロモデルでは、すっかり定番となっています。
シリンダーやピストン、コンロッド、クランクケース、V-FORCE4リードバルブ、チャンバーなど、エンジンの主要部品は「YZ125」と共通です。
一方で、クロスカントリーで重要になる低中回転域の扱いやすさを高めるため、圧縮比やYPVS(ヤマハ・パワー・バルブ・システム)、CDI、キャブレターセッティングなどに専用設定が施されています。

実際に乗ってみると、ハッキリと違いがわかります。ジャンプやフープス(連続ギャップ)など、人工的に造られたコースを舞台にスプリントレースを行うモトクロスでは、エンジンを高回転域まで一気に吹け上げ、鋭い加速を引き出せるパワー特性が重要です。
対して、シングルトラックや林間部など、道なき道を長時間走り続けるクロスカントリーやエンデューロでは、低中回転域の粘り強さと扱いやすさも欠かせません。
「グズらない・止まらない」最新の2スト
SUGOの林間セクションには、木の根がいたるところにあり、石が転がり、日陰には湿ったスリッピーな路面もあります。場所によっては、歩くような速度までペースを落とさなければなりません。
かつての2スト125ccクラスでは、回転を落としてしまうと途端に力を失い、クラッチを使いながらエンジンを再びトルクバンドまで引っ張り上げるような場面が少なくありませんでした。
ところが、最新型の「YZ125X」は違います。低回転域でも粘り強く、エンストしそうな気配がありません。どこからでもグズらずに車体を前へ押し出してくれます。
タイトなコーナーで速度が落ちきっても、アクセルを開ければピックアップよく加速し、トルクバンドを絶えず意識しながら、忙しくクラッチを操作する必要もありません。
低い回転域からトップエンドまで、自然にパワーをつないでいける。それでいてアクセルを開けて引っ張り上げれば、2ストらしい伸びやかな回転フィールがしっかり残されています。
そんな出力特性を支えているのが、ヤマハ独自の「YPVS」です。排気ポートの作動タイミングを回転数に応じて変化させることで、低回転域では扱いやすさを、高回転域では力強い伸びを引き出します。
つまり、常にクラッチを使ってエンジン回転をキープしなければならないような神経質さがありません。

燃料供給にはケイヒンPWK38Sを採用し、TPS(スロットル・ポジション・センサー)と3Dマップ制御CDIユニットを組み合わせています。
昔ながらのキャブレターに、現代の電子制御を融合しているわけです。2ストロークらしいフィーリングを残しながら、クロスカントリーマシンに求められるトラクション性能を引き出しているのは、こうした技術の積み重ねによるものでしょう。
日本仕様専用のサスペンションがありがたい
クロスカントリーでは路面状況が刻々と変化します。「このラインで行く」と決めていても、木の根や石が想定外に現れることがあります。そんなとき、大きな武器になるのが車体の軽さです。
身体を動かし、ハンドルやステップに入力すれば、車体がスッと向きを変える。ラインを外してしまっても、すぐに修正できます。ライダーの入力に対する反応がとてもダイレクトで、マシンを自分の手足のように操っている感覚が強いのです。
前後サスペンションはKYB製で、日本仕様には専用セッティングが施されています。細かな凹凸を丁寧に吸収し、リアタイヤが路面をしっかりと捉えてくれます。
低速で難しいセクションを抜けるときにはしなやかに動き、速度が上がった状態で大きな入力を受けても、ストロークの奥でしっかりと車体を支えてくれる。単純に柔らかいわけではありません。動きはしなやかだけれど、必要なところでは踏ん張る。このバランスが、長時間走るクロスカントリーでは効いてきます。
競うだけじゃない、オフロードを楽しむために
「YZ125X」には、セルスターターがありません。混合ガソリンを使用し、エンジン始動はキックのみ。エンジンを止めてしまったときは「セルがあればラクなのに……」と思う場面も正直あります。

しかし、キックペダルを踏み下ろせば、エンジンは素直に目を覚まします。その行為にも、こうした超軽量・競技マシンならではの面白さがあります。
車体重量はわずか97kgです。シート高は970mmでスペックだけ見れば過激そのものですが、実際に走らせてみると、その軽さがオフロードライディングを驚くほど自由に楽しませてくれます。
上級者がレースで競うのはもちろん、オフロードをこれから楽しみたいビギナーが、基本を身につけるにも適した1台ではないでしょうか。

Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

















