F1も開催される「鈴鹿サーキット」に遊園地がある理由とは? そこには本田宗一郎の熱い想いが存在
本田宗一郎の右腕、藤澤武夫のアドバイス
鈴鹿サーキットが開設された経緯には、ホンダの創業者である本田宗一郎氏の「クルマはレースをやらなくては良くならない」という言葉に端を発しています。事実、極限の状況下で走行を続けるモータースポーツの技術は、市販車の品質向上にも大きく役立てられています。
当時は、クルマやバイクが高性能化するにつれて、公道での暴走行為が問題になりつつあり、安全に性能を十二分に発揮できるサーキットという施設が求められていました。
しかし、すでに大企業となっていた当時のホンダでは、いかに本田宗一郎氏が伝説的な創業者であったとしても、サーキット建設という巨額の投資を進めるためには、他の役員の理解を得る必要がありました。モータースポーツがビジネスとしてどれだけ成功するか不明瞭だったこともあり、役員たちは決して前向きではなかったそうです。
鈴鹿サーキットの広報担当は、鈴鹿サーキット設立の経緯を次のように話してくれました。
「日本初の国際レーシングコース設立という本田宗一郎の命に対して、当時の専務であった藤澤武夫は、青少年を対象としたモーターリゼーション普及の場、つまり未来のユーザーを育てる場を併設することを提案しました。それが、いまの『モートピア』です。モートピアの建設に際して、藤澤はアメリカのディズニーランドを研究していますが、ほかの遊園地のように乗り物に乗せられるだけの遊園地ではなく、自ら運転したり操縦したりすることを楽しめるようなアトラクションがモートピアの特徴です」
モートピアで、運転することの楽しさに目覚め、そこからクルマやバイクに興味を持ってもらいたい、というのが狙いだったのです。また、モートピアという名前の由来には、英語の「ユートピア(意味は理想郷)」と発動機の意味を指す「モーター」をあわせてつくられた造語です。
そのため、モートピアでは、子ども向けの自動車教習所やモータースポーツを体感するエリアなどクルマやバイクに関わるアトラクションが多く存在します。
鈴鹿サーキットに遊園地が併設されている背景には、藤澤武夫氏という社長の右腕の存在がありました。ちなみに、鈴鹿サーキットには宿泊施設やレストラン、ボウリング場、温泉なども併設されており、現在では東海地方有数の総合レジャー施設に成長しています。
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提供:くるまのニュース