オートマチックのスポーツ万能大型スクーター、5世代目ヤマハ「TMAX530DX」とは!?

2001年に登場したヤマハのTMAXは、5世代目になった今でも「モーターサイクル感覚のファンライド」というコンセプトを踏襲しています。

ハンドリングはピカイチ、ヤマハらしいコーナリングマシンに進化

 大きくて安楽なスクーターというよりも、オートマチックの万能スポーツバイク。「ヤマハのTMAX530ってどんなバイク?」と聞かれたなら、そう答えるのが一番ふさわしいでしょう。初代TMAXは2001年に登場したモデルですが、当初掲げられていた「モーターサイクル感覚のファンライド」というコンセプトを現在も踏襲。そのハンドリングに磨きがかけられ、ちょっとしたコーナリングマシンへと進化を遂げています。

「TMAX530DX」に試乗中の筆者(伊丹孝裕)

 現行モデルは5世代目にあたり、2017年に大きなモデルチェンジが受けました。その時、「YCC-T」と呼ばれる電子制御スロットルが採用され、トラクションコントロールやエンジンモードを装備。また、車体は全面的に刷新され、フレーム単体で7kgも軽くなるなど、すべては走りの質を引き上げるための改良が施されたのです。
 
 TMAX530はスタンダード仕様の「SX」の他、クルーズコントロールや電動調整式ウインドスクリーン、グリップヒーター、シートヒーターを備えた上級グレードの「DX」というふたつのグレードをラインナップ。今回は快適装備が充実したDXに試乗することができました。

全長2200mm、ホイールベース1575mmのTMAX530DX

 このモデルは全長2200mm、ホイールベースは1575mmに達し、その数値だけ見ればヤマハの大型ツアラー「FJR1300A」とほぼ同等です。とはいえ、車重は218kg(FJRは289kg)に抑えられていることと低重心を実現しているため、取り回しで苦労することはほとんどないでしょう。
 
 車体サイズにネガティブな要素があるとすれば、800mmのシート高です。高さ自体は特別高くないものの、座面はかなり広く、停車時は大きく足を広げる必要があるからです。平均的な日本人男性の体格なら足つきはツマ先立ちにならざるを得ず、小柄なライダーはショップで確認しておいた方がいいでしょう。

 もっとも、既述の通りTMAXは利便性に優れるスクーターというよりもスポーツバイクの一種です。軽快なハンドリングを楽しむための設計と捉えれば、許容できる範囲にあります。

水冷・DOHC4・バルブ直列2気筒エンジンを搭載するTMAX530DX

 アルミフレームに搭載された530ccの水冷2気筒エンジンは、スロットルを開けた時に奏でる「ズオォォォ」という野太いサウンドが迫力です。「D-MODE」と呼ばれるエンジンモードには、穏やかな特性の「T(ツーリング)」とダイレクトにレスポンスする「S(スポーツ)」があり、「S」を選択した時の力強い加速感はかなりのもの。高速巡航時でも不満を覚えるライダーはいないでしょう。

 そんなTMAXの真骨頂は、高い旋回力にあります。コーナーに向かって車体をリーンさせていく時の動きは、そのサイズをまったく感じさせないほど俊敏で、乗り手が望めば簡単にフルバンクに到達。フレームの剛性やタイヤからの接地感も確保されているため、スポーツバイクとまったく同じ感覚でコーナリングを楽しむことができるのです。

スクーター特有のスカスカ感もなく下半身のホール性にも優れています

 その時に活きるのが、足つき性では難があったシートです。前後左右に身体を動かすことが容易で高い自由度があり、旋回力を意のままに引き出すためのライディングポジションに貢献。下半身のホールド性にも優れ、スクーター特有のスカスカ感はありません。

 φ41mmの倒立フォークやラジアルマウントされたブレーキキャリパー、アルミスイングアームといった装備からも、このモデルがいかにスポーツバイクを意識しているのかが分かります。コミューターとしての利便性とツアラーとしての快適性を備えながら、ライディングのよろこびもたっぷり詰め込まれたオールラウンダー。それがTMAX530DXです。

【了】

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Writer: 伊丹孝裕

二輪専門誌「クラブマン」編集長を務めた後にフリーランスとなり、二輪誌を中心に編集・ライター、マシンやパーツのインプレッションを伝えるライダーとして活躍。鈴鹿8耐、マン島TT、パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムといった国内外のレースにも参戦するなど、精力的に活動を続けている。

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