もしもヤマハ「NMAX155」を買ったら? 便利すぎてオールインワンになるのがコワイ!?

ヤマハ“MAX”シリーズでは、軽二輪枠(排気量126ccから250cc)に2つの「NMAX」が用意されています。車体を共通とする「NMAX155」と125ccの「NMAX」です。どちらにも優位点があり、いずれかを選べるのはユーザーにとってありがたいところでしょう。今回は「NMAX155」に乗ってみます。

ヤマハスポーツスクーターの要“MAX”シリーズ

 車検がなく経済性に優れる軽二輪枠は、スクーターにとって大きな市場です。1990年代半ばから2000年代にかけてはビッグスクーターブームとなり、ヤマハ「マジェスティ」がシーンを牽引しました。

ヤマハ「NMAX155 ABS」に試乗する筆者(青木タカオ)

 いまでもヤマハのラインナップは充実し、注目は排気量155ccクラスです。250ccが「NMAX」だけなのに対し、「NMAX155」「マジェスティS」「トリシティ155」(LMW=3輪)と選択肢が広く、このセグメントに対するヤマハの意気込みを強く感じます。

 そのなかで強い存在感を見せているのが、“MAX(マックス)”シリーズです。「TMAX530」を頂点に、250ccの「XMAX」があり、そして車体を共通とする「NMAX155」と「NMAX」(125cc)という顔ぶれ。400や125もあったマジェスティではなく、現行ではMAXシリーズが中心にいる印象があります。

 そこでMAXシリーズを調べてみると、“スポーツバイクのDNAを受け継ぐスポーツコミューター”と公式ホームページで説明されていました。共通するのは眼光鋭いフロントマスクで「NMAX155」や「NMAX」といった弟分たちもヘッドランプとポジションランプをLED化、ハイビーム時には中央のライトも光って3灯となり、迫力満点です。

プラス30ccの排気量が余裕の走りを生み、高剛性の車体と好相性

 肝心な乗り味はどうしょう。今回ピックアップするのは「NMAX155」です。心臓部はヤマハ・スクーターでお馴染み、アルミ鍛造ピストンやオールアルミ製DiASilシリンダー、オフセットシリンダーを採用し、高効率燃焼、高い冷却性、ロス低減で走りと環境性能を高次元で両立した“BLUE CORE”(ブルーコア)エンジンを搭載します。

ヤマハ「NMAX155」ビビッドパープリッシュブルーカクテル5

 125ccのボディのままプラス30ccのアドバンテージを得ているわけですから、走りがよりキビキビ軽快となるのは想像に容易いでしょう。ただし、NMAXより劇的に速いというわけではありません。

 乗り比べると、加速の良さや最高速で155が上回り、余裕を増していることがわかるのでプラス30ccの恩恵を明らかにできますが、普段このクラスに乗っていなければ気付かないかもしれません。

 スペックを見ると、車体重量127kgに対して128kgとわずか1kg増しとしながら、最高出力12PSから15PS、最大トルク12Nmから14Nmと向上しています。全域で力強く扱いやすいのは、回転数に合わせてカムが切り替わる可変バルブ機構を採用しているからです。これは125でも搭載し、NMAXの大きな魅力といえます。心臓部がブルーコアではないマジェスティS(最高出力は同じ15PS)にはありません。

2人乗りも可能でリアシートにはグラブバー、車体側面左右には可倒式のタンデムステップを装備

 馴染みのない人には気付かない程度と書きましたが、その差が走りに大きな影響を及ぼしていることは確かです。ねじり剛性に優れるセンターフレームを用いたバックボーンタイプのシャシーは、前後13インチのワイドタイヤを履く足まわりを含め、155ccエンジンとの好相性を感じます。

 マジェスティS(車体重量145kg)より17kgも軽いにも関わらず、車体の挙動やハンドリングは落ち着いていて安定感充分。高速道路を走行できることを優位性とする155ccですが、ハイスピードでの走行もしっかり想定されて開発されていることがわかり、交通量の多い都市高速ならクルマの流れをリードできるのでした。

都市高速を利用する人には絶対オススメ!

 筆者(青木タカオ)は1年ほど前に原2スクーターを新車で購入し、日常の足としてフル活用していますが、満足している中でひとつだけ不満に感じるのが、首都高速を走れないことです。その点、このクラスは死角なしと言えるでしょう。もちろんランニングコストなどで差が出てきますが、稼働率を考えるとその差は大きくなかったと感じています。

高速道路も走行可能で市街地ではキビキビ走りシート下収納もある便利すぎるスクーター

 なのでユーザー目線からも、都市圏に住み、スクーターを移動の足として使う人にはオススメしたいところです。ただしセカンドバイクとしたとき、利便性に優れすぎて、メインとするバイクに乗らなくなる恐れがあるのは間違いありません。それだけはご承知おきください。

 最後に、155ccクラスのスクーターと気になる車体価格(消費税10%込み)も列挙しておきましょう。

ヤマハ「NMAX155 ABS」38万5000円
ヤマハ「マジェスティS」37万9500円
ヤマハ「トリシティ155 ABS」48万4000円
ホンダ「ADV150」45万1000円
ホンダ「PCX150」38万600円
ホンダ「PCX150 ABS」40万2600円

【了】

【画像】ヤマハ「NMAX155 ABS」(15枚)

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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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