ホンダ 新型「CBR600RR」登場! レースに勝てるポテンシャルを秘めた量産エンジンとは
ホンダ 新型「CBR600RR」が、2020年8月21日に発表されました。市販車によるプロダクションレースのベースモデルとしての高いポテンシャルを持つ新型には、どのような技術が投入されているのでしょうか。まずは、エンジンやシステム周りを解説します。
コンセプトは「ストレスフリー “Total Control”」
2020年8月21日に発表され、注目を集めているホンダ 新型「CBR600RR」の詳細が遂に公開されました。いったい、どのようなモデルに仕上がっているのでしょうか。まずは、エンジンやシステム周りを見ていきましょう。
従来モデルからの特徴である、高出力かつ扱いやすい出力特性と俊敏なハンドリングにさらに磨きが掛けられ、サーキット走行での優れた動力性能とワインディングなど公道での扱いやすさを高次元で両立させた新型 CBR600RRの開発は、まず、レースでのポテンシャルを如何に上げるかについての試行錯誤からスタートしています。
ホンダとしては、600㏄クラスのレースにおいて、アジアロードレース選手権でのタイトルを2016年に獲得して以降、逃し続ける結果となっていることを問題視し、現地でマシンの実際の戦力や仕様等を確認。ここで抽出された課題である、動力性能や車体の安定性とラップタイムの安定性に対し、目標を設定することで、レーシングマシンを仕上げていきました。
そして、レーシングマシンとしての性能を、2019年全日本ロードレース選手権 ST600クラス チャンピオンの小山 知良選手によるサーキットテストで繰り返し検証。同時に、アジアロードレース選手権に参戦する現役ライダーたちの協力も得て、課題の抽出と方向性の確認がおこなわれました。
そして、レースベースの基本仕様が決定したのち、量産モデルの開発に移行し、今回の新型登場に至ります。
これらの流れを経て搭載されたパワーユニットは従来型から、カムシャフト、バルブスプリング、クランクシャフトなどの材質を高強度材に変更したことで、最高出力の発生回転数を1万4000rpm に向上。
この高回転化に伴って、吸気系ではインレットポート形状を変更し、容積を2.2%増加させるとともにスロットルボディをφ40からφ44に大径化。さらに、バルブタイミングを見直すことで、高回転側での吸気効率を最大限マッチさせる諸元が与えられました。
排気系では、エキゾーストパイプ各部のサイズや板厚の適正化などを実施。低フリクション化には、もっとも効果的なピストン往復部に焦点を当て、ピストンプロフィールの変更とピストンリング外側の収納部にDLCコーティングが施工されています。
これにより、89kWの最高出力を達成し、優れたレブリミット特性を実現させました。
さらに、シリンダーヘッドのウォータージャケット形状を変更することで、燃焼室およびエキゾーストバルブシート周辺の冷却効率を向上。これは、上位モデルであるCBR1000RRRファイヤーブレードと同様の構造で、プラグを従来のタイプから7mm長いロングリーチタイプへ変更することで、プラグホール、エキゾースト周辺にウォータージャケットを設定することができ、もっとも高温となる燃焼室、エキゾーストバルブシート周辺の冷却効率を向上させています。
レースベースとして最適なエンジンを開発していく一方で、出力特性が高速側へシフトしてしまったことで、低速側の出力が犠牲になってしまう問題の解決策としては、「スロットルバイワイヤシステム(TBW)」を採用。走行状況やライダーの好みに合わせて走行フィーリングを任意に選択できる「ライディングモード」を搭載するなどセッティングの幅を広げることで、目標出力とコンセプトである「ストレスフリー “Total Control”」を実現しました。
加えて、アシストスリッパ―クラッチを新採用。クラッチレバー荷重は従来モデルに比べて32%軽減され、アシスト機能とシフトダウンに伴う急激なエンジンブレーキによる後輪からのホッピングを軽減するスリッパ―機能が備えられています。
パワーユニット周りだけでも、これほどの最新技術が搭載された新型 CBR600RRの、国内での年間販売計画台数は1000台。価格(消費税込)は、160万6000円です。
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