日本の里山で味わえるスポーツ気分 ヤマハ「YZF-R25」は走りもデザインも訴求力のある存在

ヤマハのMotoGPマシン「YZR-M1」の流れを汲み、フラッグシップモデル「YZF-R1」とのリレーションを高めた250ccクラスのスーパースポーツモデル「YZF-R25」に試乗しました。

新登場は2014年、熟成を重ね完成度が高まる

 ヤマハの「YZF-R」シリーズは、MotoGPマシン「YZR-M1」が持つイメージを頂点として、そのスタイル、性能を落とし込み「R1」「R6」「R3」そして「R25」……と構成されています。ここに紹介する「YZF-R25」は、アジアでプレミアムクラスとして人気の250スポーツバイク市場を牽引するモデルだけあり、見るとその完成度に納得します。

ヤマハ「YZF-R25」(2021年型)に試乗する筆者(松井勉)

 まずデザインにスキがありません。Mの字を思わせるカウルの先端にあるエアインテーク、そこから連なる面やラインの造形はとても凝っていて、上級機種「R1」らしさもありつつ「R25」の独自性も打ち出しています。

 同時に、このクラスで必要なコンパクトさを保持しつつ、小さく見えない存在感もあり、跳ね上がるラインのように光るランニングライト、その下に隠れたヘッドライトを見ても「R1」から始まった、パッと見ヘッドライトが見えない、まるでレーシングマシンのようなルックスがしっかり取り入れられています。

 レーシーな意匠としては、フロントフォークのアッパーブラケットの造形です。アルミ鋳造で作られたそれは、何本ものスリットが入る「YZR-M1」スタイルから引用したもの。ライダーの視界にいつも入る部分なのでこうした小技は大歓迎です。もちろん、デザイン上だけのものではなく、剛性バランスにも影響を与える部分です。構成部品を機能美の集合体にするあたり、プレミアムさをユーザーに届けようというメーカーの姿勢でしょう。

2019年のマイナーチェンジでMotoGPマシン「YZR-M1」をシンボルとする新デザインに。走行風をラジエーターに送り込むM字型ダクトやサイドカウルのクロスレイヤード・ウイングを装備

 ではエンジンはどうでしょうか。排気量249ccの水冷直列2気筒DOHC4バルブエンジンを搭載し、180度クランクにより隣り合うシリンダー内をピストンが互い違いに上昇、下降を繰り返す、等間隔で爆発するのが特徴です。始動すると、グルグルグルグルというアイドリングの排気音がするのもそのため。エンジン特性は低回転から高回転までアクセルの開け方によって予想しやすく、扱いやすさと言う面では抜群です。

 ライディングポジションは適度な前傾姿勢となるもので、スタイルから想像するよりも市街地やツーリングでリラックスしたポジションだと感じました。スクリーンの奥に見える液晶モニターも、コントラストが明確で見やすいもの。乗ることにどこにもストレスが無いのです。

「YZF-R25」の個性は、エンジンが持つキャラクターにより走り出しからとても親しみやすいものでした。2000回転台でシフトアップをしてもスルスルと走ってくれますが、3000回転以上でアクセルワークに対するレスポンスが明確に同調し始めます。7000回転周辺を使いながらシフトチェンジを駆使し、アクセルをひねり、開度を大きく取りながら加速するのは「楽しい!」の一言。とくに9000回転以上をキープすれば鋭さが加味され、走りのコントロール全てにスポーティさがさらに数段上がります。

ライダーの視界に入るハンドルクラウンはMotoGPマシン「YZR-M1」を彷彿させる肉抜き加工を施したアルミ鋳造製に

 こうした走りのフィードバックと、日本ならあちこちにある里山の道のマッチングがとても良いのも特徴です。ハンドリングは直進から旋回にさしかかる時の動きに軽快さがあり、カーブに合わせてバイクのリーンアングルがキープしやすい。それでいて切り返しのキッカケも掴みやすく、軽快な動きも魅力です。なにより全体を通して安心感があり、走りにどんどん引き込まれていきます。それを可能にする車体全体のチューニングもなかなかです。

 ブレーキは必要にして充分。ペースを上げたワインディングでも不満がなく、減速時にコントロールのしやすいタイプで、発生した減速Gをフロントフォークがしっとり受け止めるため、車体の挙動がつかみやすいのも、幅広いライダー層に巧くマッチングするようパッケージされている証拠でしょう。

 250ccクラスに求める走りは幅広いもの。スタイルに惚れて最初のバイクに「YZF-R25」を選ぶ人にとっても、ライトウェイトスポーツとして選んでも満足度が高いと思います。

 現在、このクラスには4気筒推しのカワサキ「Ninja ZX-25R」や、クラス最速というメディア評価も高いホンダ「CBR250RR」など、性能、エンジンなど高性能な魅力を振りまくバイクが多いなか、カタログスペックを見ると確かに「YZF-R25」が大人しく見えるかもしれません。

日本の里山の道とのマッチングが抜群に良い印象

 しかし、乗ってみるとまとまりの良さ、デザインなど、所有物として検討するための訴求力があるスポーツバイクであることが再確認出来ました。

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 ヤマハ「YZF-R25 ABS」(2021年型)の価格(消費税10%込み)は65万4500円です。

【了】

【画像】ヤマハ「YZF-R25 ABS」(2021年型)の詳細を見る(10枚)

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Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

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