構成部品のほとんどが木造の自転車!? 神秘的な魅力を放つ「マホガニーバイク」にランドナーが登場

木造自転車「マホガニーバイク」を製作する「SANO MAGIC」の最新作は、ランドナータイプの自転車です。すべてが特徴的な車体の細部を見てみましょう。

造船技術を応用、高級木材から生み出される実用自転車

「SANO MAGIC(サノマジック)」は、江戸時代から八代続く佐野造船所に生まれた、佐野末四郎(さのすえしろう)さんが手がける“木造”自転車、「Mahogany Bike(マホガニーバイク)」を製作し続けています。

SANO MAGICの「マホガニーバイク」最新作はランドナータイプ。泥除けといった繊細なパーツもマホガニー材で製作。もちろん近代コンポーネントの規格にも対応している
SANO MAGICの「マホガニーバイク」最新作はランドナータイプ。泥除けといった繊細なパーツもマホガニー材で製作。もちろん近代コンポーネントの規格にも対応している

「13歳から木造艇をつくり続け、米国Wooden Boat誌から驚きを以て“SANOMAGIC”の称号を与えられるほど高度な、独自の造船技術を築き上げてきました」(SANO MAGIC公式ページより引用)

 この木造艇製造技術を活かした木造自転車は2008年に1号機が誕生し、14年目となる2022年で33号機まで製作されています。その最新モデルが、ここに紹介するランドナータイプのマホガニーバイクです。

 マホガニーバイクに使われている素材は、その名の通りマホガニー材です。木造艇や高級家具などに用いられる高級木材として知られています。樹齢150年、30年間寝かせた素材は狂いが生じることもなく、それを高度な技術で自転車の主要部品へと加工しています。フレームは緩やかな曲線を描き、木材の質感を生かした美しい仕上がりです。

マホガニー材で作られたマッドガード(泥除け)の造形は、タイヤに均等に沿った高い精度であることがわかる
マホガニー材で作られたマッドガード(泥除け)の造形は、タイヤに均等に沿った高い精度であることがわかる

 フレームとフォークはもちろんのこと、ハンドルバーやホイール、マッドガードまでマホガニー材で作られ、フロントキャリアに搭載するバスケットまで木造となっています。

 その乗り味はと言うと、かつて筆者(山本健一)がテストライドをさせていただいたシングルナンバーの車体の印象では、木材という天然素材が生み出す独特のしなり(反発)がペダリングをアシストし、まるで空飛ぶ絨毯のような、心地よいライディングフィールだったことを思い出します。

フロントバッグもマホガニー材で製作。「ちょっと可愛らしくなってしまったね」と佐野さん
フロントバッグもマホガニー材で製作。「ちょっと可愛らしくなってしまったね」と佐野さん

 SANO MAGIC初となるランドナーは、ドロップハンドルを装備したスポーツツーリングバイクです。ロードバイクとの分かりやすい違いは、荷物の積載や、さまざまな走路に対応する太めのタイヤを装備しているところでしょう。そして険しい峠もこなせるマルチな自転車です。マホガニーは、その使用用途にピッタリの素材とも言えます。

現在は拠点を軽井沢に置く「SANO MAGIC」の佐野さん。自転車を楽しむ環境に恵まれた場所で製作を続けている
現在は拠点を軽井沢に置く「SANO MAGIC」の佐野さん。自転車を楽しむ環境に恵まれた場所で製作を続けている

 気になる価格は、完成車で280万円(税別)です。走る芸術品と言ったら佐野さんに怒られてしまうかもしれませんが、機材としての美しさと人への優しさが共存する、神秘的な魅力を放つ自転車なのでした。

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Writer: 山本健一

サイクルジャーナリスト(人力バイクのほう)。ジャーナリスト歴20年、自転車競技歴25年の公私ともに自転車漬け生活を送る。新作バイクレビューアー、国内外レースイベントやショーの取材、イベントディレクターなど、活動は多岐にわたる。

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