走行中のヘルメット、あご紐をしてなかったら違反になる?

バイクを走行する時、必須アイテムのひとつとしてヘルメットが挙げられます。では、もしもヘルメットのあご紐をつけずにバイクを運転した場合、違反になるのでしょうか。

ヘルメットのあご紐、つけなかったらどうなる?

 ヘルメットを被らずにバイクを運転している人を見かける機会はあまりありませんが、あご紐をしめず、ベルトを垂れ下げたまま運転している人は、たびたび見かけます。

「うっかり締め忘れてしまった」、「そもそも普段からあご紐をしない」など、あご紐をしない理由は、人によってはさまざまかもしれません。

あご紐をしめることは必須ではなく努力義務
あご紐をしめることは必須ではなく努力義務

 クルマの場合、シートベルトしない状態でクルマを運転すれば、取り締まりの対象になりますが、ヘルメットのあご紐をしないでバイクを運転した場合は、違反にあたるのでしょうか。

 道路交通法には「乗車用ヘルメットの基準」に関する7項目が定められています。その中のひとつに、「衝撃により容易に脱げないように固定できるあごひもを有すること」という記載があります。これには、「あご紐をする」ではなく、「固定できるあごひもを有する」となっているので、あご紐の装備がついていることが最低条件だと見てとれます。要するに、あご紐の装備があるヘルメットを着用する義務はあるが、「あご紐をしめて着用しなければならない」とは明記されていないのです。

 このことから、あご紐をしないでバイクを運転しても、ヘルメットは着用していることになるため、違反にはならないことになります。あご紐をしないで、白バイに止められても反則切符を切られることはなく、ほとんどが注意を受けるだけで終わるようです。

 ただ、あご紐が切れていたり、固定するパーツが破損している場合などは、「固定できるあごひもを有する」ことにならないので違反になる可能性があります。つまり、ヘルメットの着用は法律で決められているものの、あご紐をしめることは必須ではなく努力義務にとどまっているのが現状といえます。

あご紐を正しく装着しなければ、ヘルメットの性能を十分に発揮することができません
あご紐を正しく装着しなければ、ヘルメットの性能を十分に発揮することができません

 しかし、あご紐をせずにバイクを運転しても法律上に問題がないとは言え、正しく装着しなければ、ヘルメットの性能を十分に発揮することができません。そもそも、ヘルメットの最大の役割として、事故にあった際にライダーの頭部を守ることが挙げられます。

 あご紐をしめずにクルマや障害物などとぶつかり、その衝撃でヘルメットが脱げてしまったら、被っていないことと変わりないでしょう。もしもの時にライダーの命を守ってくれるのは、ヘルメットのあご紐にかかっているといっても過言ではありません。

 警視庁のデータによると、2021年中に都内で発生したバイク乗車中の死亡事故の致命傷の部位の割合は、頭部が60%以上を占めています。そのうち、約37%のライダーが事故発生時にヘルメットが脱落していました。

 もし、あご紐をしっかり締めて頭が守られていれば、ケガだけで済んだ可能性があり、いかにヘルメットのあご紐が重要かがわかります。事故にあった際に、被害を最小限におさえるためにも、ヘルメットのあご紐はしっかりとしめる習慣をつけることが重要といえます。

ヘルメットの形状別の着用者の割合は、「ジェット型」が37.8%と一番多い
ヘルメットの形状別の着用者の割合は、「ジェット型」が37.8%と一番多い

 また、2021年の9月から10月におこなった警視庁の調査によると、ヘルメットの形状別の着用者の割合は、「ジェット型」が37.8%と一番多く、次いで「フルフェイス型」が34.8%、「半キャップ型」が27.2%と最も少なくなっています。

 そのうち、あご紐の結束状況は、「適正に結束」が72.6%で大多数を占めるなか、「緩く結束」が21.6%、「結束なし」が5.3%という具合です。このうち、「ゆるく結束」と「結束なし」のヘルメットの形状別の割合は、「フルフェイス型」が17.9%と一番少なく、次いで「ジェット型」が29.0%で「半キャップ型」が37.4%と最も多くなっています。

 このことから、一番顔の露出が少ないフルフェイスのヘルメットを装着したライダーが、最も安全意識が高いことがうかがえます。

ヘルメットを選ぶ際は、安全基準に適合した製品を選びましょう
ヘルメットを選ぶ際は、安全基準に適合した製品を選びましょう

 ちなみに、ヘルメットを選ぶ際は、「PSCマーク」もしくは「SGマーク」、「SNELLマーク」のついているものを選ぶことが重要です。PSCマークがない乗車用ヘルメットは法律で販売が禁止されており、国が定めた安全基準に適合した製品につけられています。

 また、SGマークは製品安全協会の安全基準に適合した製品につけられており、マークがない場合は、商品の欠陥による人身事故の賠償金が受けられなくなります。なお、この2つのマークは、同じラベルに表示されてヘルメットに貼られていることが多いようです。

 そして、あご紐をしめていても緩い状態だと、事故のときに脱げてしまいヘルメットの役割を果たすことができません。あご紐をしめたときに、あごとベルトのすき間に1本程度の指が入るくらいの余裕があると快適に装着することができます。

※ ※ ※

 ヘルメットのあご紐をしないでバイクを運転しても、違反切符を切られることはなく、ほとんどが注意喚起で終わるようです。しかし、あご紐をしていなければ、ヘルメットの性能を十分に発揮することができません。バイクに乗るときは少しの距離でも、必ずあご紐をする習慣をつけることが命を守ることにつながります。

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