自分たちのルーツを忘れない

　ミーゴスはアトランタ出身のクエイヴォ、オフセット、テイクオフの血縁関係のある3人のラッパーからなるヒップホップトリオ。オフセットとクエイヴォはいとこ同士、テイクオフはクエイヴォの甥にあたり、3人はアトランタ郊外でクエイヴォの母親に育てられました。ミーゴスとはスペイン語で「友達」を意味しながら、ドラッグを製造・販売するための廃屋をさす隠語でもあり、幼いころの彼らの境遇がそれとなく想像されるグループ名です。

　2017年に「Bad and Boujee」で米ビルボード・トップ100で初めて1位を獲得して以来、ヒットチャートの常連として現在のヒップホップシーンをリードする大きな影響力を持つようになりました。世界中のヘッズたちがこぞって踊る「ダブ」という振付（片手を斜め上にあげて、もう片方の腕を同じ方向に上げつつ顔の前あたりで曲げて、曲げたひじに向かってくしゃみをするような感じで頭をノックする動き）のオリジネイターでもあります。

　今回紹介するのは彼らの代表曲、「Bad and Boujee」。「Boujee」はブルジョワ（金持ち）のスラングで、転じて「最上級」や「イケてる」という意味です。「俺の女はワルで最上級、俺は女も金も銃もある」とラップしながらセクシーな衣装に身をつつんだ極上の美女たちとともに、街中の安ダイナーで最高級シャンパンを飲みながら、ケンタッキーやカップラーメンを食べるというミュージックビデオ。成功して最上級のものを手に入れることができるようになったけれど、自分たちのルーツである貧しかったころを忘れてはいないという意思を表現しているようです。

　MVの後半では、額に約25億円のダイヤモンドをはめ込んだことでも話題になったゲストのリル・ウージー・バートがヤマハのATVを乗り回し、仲間を引き連れて街中をクルージング。ゴージャスな美女たちはホンダCBRやスズキ 隼などのきらびやかなスポーツバイクにまたがり、誰もが納得のカッコよさです。それでも、走る場所は舗装もままならない郊外感あふれる道だったり、集まるのはゴミが放置されている土埃舞う陸橋下だったりするわけです。自らのルーツを忘れずにラップし続け、ミュージックシーンに旋風を巻き起こすミーゴスに注目です。