トライアンフ「トライデント660」に乗りギモンに思う 3気筒エンジンが主流じゃないのはナゼ!?

バイクでは少数派の3気筒(トリプル)エンジンですが、トライアンフでは昔も今もその優位性を一貫して信じ、ユーザーに提供してきました。2021年1月に新発売となった「トライデント660」に乗ると、トリプルエンジンの利点は数多く存在することに気づきます。

軽やかに地面を蹴飛ばす小気味よさ! 少数派であることが不思議

 アクセルを開けたときに感じる駆動力に、路面をしっかりと捉えて蹴るような力強さとダイレクト感があり、スロットルの開閉だけでもう楽しいではありませんか。大排気量車のような強烈な押し出しではなく、軽やかに地面をキックし駆け出していく小気味の良い加速が、日本では2021年1月から新型として発売された、トライアンフ「TRIDENT 660(トライデント660)」で味わえるのです!

トライアンフ「TRIDENT 660(トライデント660)」に試乗する筆者(青木タカオ)
トライアンフ「TRIDENT 660(トライデント660)」に試乗する筆者(青木タカオ)

 荒々しさを伴う、ザラついたハスキーなサウンドも耳に心地良く、右手のスロットル操作に合わせ、吸気音も重なってハーモニーし、躍動感を全身で感じられるのもたまらないと感じる筆者(青木タカオ)です。

 バイクのエンジンで3気筒は少数派ですが、どうしてなのでしょうか。「トライデント660」に乗ると、トリプルエンジンがモーターサイクルで主流ではないことにギモンを感じてしまうのです。

 歴史を振り返れば、1968年にトライアンフが排気量750ccの「T150 TRIDENT」を発売し、200km/hの最高速を誇りました。同時期にカワサキは、2ストロークのトリプルエンジンを積む「500SS(H1)」、通称「マッハIII」を海外市場に送り込んでいます。

 1976年にはヤマハが「GX750」、78年にはスズキが2ストロークエンジンの「GT380」、83年のホンダ「MVX250F」は前2気筒、後ろ1気筒を90度で分けたV型3気筒という変わり種もありました。また、85年のBMWモトラッド「K75」シリーズは、縦置きクランク水平直列3気筒エンジンというマニアックなレイアウトで、いまなお熱心なファンに語り継がれています。

トライアンフ「TRIDENT 660(トライデント660)」カラー:シルバーアイスディアブロレッド
トライアンフ「TRIDENT 660(トライデント660)」カラー:シルバーアイスディアブロレッド

 低回転域ではツインのように扱いやすく、鼓動も感じられ、高回転域では4気筒のような胸のすく加速感が得られます。2気筒と4気筒の「良いところどり」を実現できると高く評価され、ヤマハが並列3気筒のニューパワーユニットを開発し、2014年に「MT-09」に搭載するなど、国産モデルでも再び脚光を浴びていますが、かつては真ん中のシリンダーに走行風が当たらりづらく冷却面で不利などと言われ、主流にはならなりませんでした。

 そんな3気筒エンジンですが、昔も今もトライアンフは優位性を提案し続け、多くのファンを獲得しています。1990年に復活した際も「トライデント」の名がラインナップにありましたし、他社がトリプルエンジンの開発をやっていない時期も、並列3気筒の可能性を追求してきたのです。

ミドルクラスで感じる、プレーンクランクの優位性

「トライデント660」の並列3気筒エンジンでは、120度ごとに位相された3つのクランクピンが等間隔に配され、240度の等間隔爆発によって振動を打ち消します。より高いトラクション性能を獲得しようと整った点火タイミングをあえてずらすため、クランクピンを90度ずつ捻った「Tプレーン」もトライアンフは大排気量の新作エンジンに導入していますが、振動の収束に優れ、ムラなくトルクを発揮する120度プレーンクランクはミドルクラスでの優位性を改めて感じます。

排気量660ccの水冷並列3気筒DOHC4バルブエンジンを搭載し、最高出力81PS(60kW)/10250rpm、最大トルク64Nm/6250rpmを発揮する。ステンレス製エグゾーストシステムはシリンダヘッドから3本のパイプがエンジン下部で集合し、車体右側のシングルサイドサイレンサーへと導かれる
排気量660ccの水冷並列3気筒DOHC4バルブエンジンを搭載し、最高出力81PS(60kW)/10250rpm、最大トルク64Nm/6250rpmを発揮する。ステンレス製エグゾーストシステムはシリンダヘッドから3本のパイプがエンジン下部で集合し、車体右側のシングルサイドサイレンサーへと導かれる

 大排気量車のような大味なトルクフィールではなく、冒頭で述べた通り、軽やかに地面をキックし駆け出していく小気味の良い加速感を、ジャストフィットするライトウェイトな車体で存分に味わうことができるのです。

 その車体重量は190kgです。軽量でトータルバランスに優れるVツイン・ミドルスポーツとして高く評価されるスズキ「SV650」よりも9kg軽いのですから、驚きを隠せません。

 前後17インチサイズのホイールには、SHOWA製41mm倒立式セパレートファンクションフォーク(SFF)と、プリロード調整機能付きモノショックをセットしています。キャスター角24.6度、トレール107.3mmのステアリングジオメトリーと、フロント120/70R17、リヤ180/55R17のタイヤサイズで、軽快なステアリングフィールを生み出しています。

クラスを代表するオススメマシン!

 英国老舗ブランドの輸入車でありながら、車体価格(消費税10%込み)は99万5000円と100万円を下回る設定も見逃せません。走りや機能、所有欲を満たす点では価格以上の価値があることは間違いありません!

190kgの車重で小気味の良い加速感を存分に味わうことができるライトウェイトスポーツ。日本の道にちょうど良い
190kgの車重で小気味の良い加速感を存分に味わうことができるライトウェイトスポーツ。日本の道にちょうど良い

 持て余すこととなく、日本の道にちょうど良い中間排気量の評価は高まっていますが、国産モデルたちともじっくり比較検討するべき、有力候補であると言えるでしょう。

【画像】トライアンフ「トライデント660」を詳しく見る(16枚)

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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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