走り出す前に「暖機」しないとダメですか?

バイクのエンジンをかけたらスグに走り出さず、「暖機運転」をしないとエンジンが傷むと言われたことがあるかもしれませんが、それはホントなのでしょうか? 早朝や深夜の場合、長々とエンジンをかけていると近所迷惑ですが……。

なぜエンジンをかけてしばらくそのままにするのか?

「暖機運転」とは読んで字のごとく、エンジンを暖めるコトです。その日最初に乗る時や、寒い時期ならしばらく停めていてエンジンが冷え切った時はその都度、すぐに走り出さずにアイドリング、もしくはアイドリングより少し高い回転数でしばらくエンジンを回して、エンジンがしっかり暖まるまで待つことを暖機運転と呼びます。

多くの金属部品で構成されるエンジンは、キチンと暖まった状態で各部のクリアランスが適正になり、性能を発揮する。画像はホンダ「CBR250RR」のエンジン透視図
多くの金属部品で構成されるエンジンは、キチンと暖まった状態で各部のクリアランスが適正になり、性能を発揮する。画像はホンダ「CBR250RR」のエンジン透視図

 それでは、なぜ暖機運転をするのでしょうか?

 バイクのエンジンは多くの金属部品で構成されていますが、エンジンをかけるとシリンダー内の爆発行程によって発熱し、金属が膨張します。とくにピストンとシリンダーの隙間(クリアランス)は、エンジンが十分に暖まった状態で最適なクリアランスになるように設計されています。

 そのため、エンジンが冷えている時はクリアランスが広く、この状態で高回転まで回したり大きな負荷をかけると、エンジンが傷む原因になります。

キャブレター車は、暖機しないと走れない!?

 じつは、以前まで一般的だったキャブレター車は、暖機しないとエンジンが傷む・傷まない以前に、そもそも相応にエンジンが暖まらないと普通に走ることができませんでした。

エンジンに混合ガスを供給するキャブレター。中央付近のレバーが「チョーク」。写真はカワサキ「Z750RS」のキャブレター
エンジンに混合ガスを供給するキャブレター。中央付近のレバーが「チョーク」。写真はカワサキ「Z750RS」のキャブレター

 キャブレターは物理現象によって空気とガソリンを混ぜて混合ガスを作りますが、とくに気温が低い状態だと空気の密度が高いため、相対的に混合ガスの濃度が薄くなってしまい、エンジンがかかりにくかったり、かかってもエンストしやすかったりしました。

 そこで、ますは「チョーク」と呼ばれる混合ガスを濃くする機能を使ってエンジンをかけます。そしてエンジンが相応に暖まるまでは燃焼状態が安定しないため、スグに走り出すとギクシャクしたり、いきなりプスッとエンストするので、ある程度の暖機が必要でした。

 ところが、近年の電子式燃料噴射装置(FI=フューエルインジェクション)は、気温やエンジン本体の温度、燃焼状態などを様々なセンサーで検知して、ECU(エンジンコントロールユニット)で最適な燃焼状態になるように混合ガスの濃さを調整しています。

 そのため、気温が低かったり、エンジンをかけてスグの状態でも(性能的には100%では無いが)、ギクシャクしたりエンストしたりせずに走ることができます。

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