不審船から見つかった日本メーカーのボート。もしかしたら船外機も? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.258~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、「海上保安資料館横浜館」に展示されているアキレスボートを見て、微妙な気持ちだと言います。どういうことなのでしょうか。

日本メーカーの信頼性の高さが窺えるのだが……

 誇らしいのか、悔しいのか、僕(筆者:木下隆之)にとっては微妙な感情なのですが、北朝鮮が日本上陸を企てたに不審船に、どうやら日本のエンジンが使われていた可能性が高いという話です。

「海上保安資料館横浜館」に展示されているアキレスボート
「海上保安資料館横浜館」に展示されているアキレスボート

 2001年のことです。海上保安庁が九州南西沖の日本EEZ内に不審な船を発見しました。すぐに追跡を開始、停船を試みるものの逃走を企て銃撃戦に発展。ついに不審船は自爆を試み沈没。海底から引き上げた船から数々の証拠品が見つかったのです。その顛末や証拠品は、神奈川県横浜市の「赤レンガパーク」に隣接する「海上保安資料館・横浜館」に展示されています。

 資料館に展示されている工作船には銃痕が生々しく、あるいは自爆装置などが展示されており、北朝鮮との不誠実な関係が想像できるのですが、その中のひとつに、上陸用のボートがあります。それがなんと、日本のアキレス製なのです。

 アキレスのインフレータブルボート(ゴムボート)は、国内外で圧倒的なシェアを誇っています。海釣り用のフィッシングボートはもちろんのこと、激流下り、つまりラフティングや、ダイビングのためのレジャー用ボートで、もっとも信頼されているボートなのです。

 不審船乗組員が闇夜に紛れて日本上陸するためには、丈夫なボートである必要があるでしょう。その意味では、アキレスボートをチョイスしたのは賢明だったと言えます。岩や石がゴツゴツしている激流でのラフティングが可能なのですから、命懸けの上陸にもっとも適しているのでしょう。

 ちなみにアキレスのボートは、海上保安庁はもちろんのこと、全国各地の消防やレスキュー艇になっています。そんな高性能なアキレスボートをどのように入手したのかは不明ですが、裏ルートを駆使すれば可能なのかもしれませんね。

 さて、そのアキレスボートを高速で走らせるには船外機が必要です。となれば、日本のエンジンが使用されたであろうことは想像に難くはありません。

 ホンダかヤマハか、あるいはスズキか。船外機はコンパクトなエンジンですから、バイクメーカーに知見があります。陸上でライバル関係のバイクメーカーが、海上でも競っているのです。

 大型エンジンは、ヤンマーやボルボが有名ですが、小型の船外機は、日本のバイクメーカーの独壇場です。不審船から見つかったボートがアキレスですから、エンジンも日本のパイクメーカーのそれであろうと考えるのは自然ですよね。

 残念ながら自爆した船から船外機は発見されなかったので確証はできないのですが、状況的に想像するのが道理のような気がします。

 不審船上陸の手段に、日本のボートが使われており、そこに日本の船外機が組み付けられていた可能性が高いことは複雑な気持ちですね。ともあれ、一刻も早く両国の関係が良好になることを期待したいものです。

【画像】「海上保安資料館横浜館」の展示物を画像で見る(9枚)

画像ギャラリー

Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

最新記事