「警視庁」と「埼玉県警」合同は初!? 都県境でライダーに注意喚起 なぜ出勤途中に橋の上で「二輪車ストップ作戦」!?

交通人身事故件数が増えています。全体の発生件数に比例して事故死者数も増えていますが、その中でも不安視されているのがバイク事故です。死亡事故が目立っています。警視庁と埼玉県警により、合同で通勤途中のライダーに向けた啓発活動が展開されました。警視庁が「二輪車ストップ作戦」で他県とタッグを組むのは初めてのことです。

初のタッグで危機感を。通勤途中のバイクを狙って事故増加に歯止め

 2024年10月18日、埼玉県と東京都の境にある荒川にかかる「笹目橋」(板橋区新河岸3丁目~戸田市下笹目)で、朝のラッシュ時を狙った大がかりな交通啓発が行なわれました。

警視庁と埼玉県警による合同の交通啓発は、都県境の荒川「笹目橋」の橋上で行われた(撮影=中島みなみ)
警視庁と埼玉県警による合同の交通啓発は、都県境の荒川「笹目橋」の橋上で行われた(撮影=中島みなみ)

 国道17号上の東京都心方向で、朝7時30分~8時30分の予定で第一通行帯を車線規制。埼玉県警と警視庁の白バイ9台、警察官約30人の間に、通勤途中のバイクを誘導してライダーに話しかけます。

「最近、バイクの重大事故が増えています」

 呼びかける警察官が、見やすく拡大した啓発チラシをライダーに掲げ、バイク死亡事故のワースト3を説明します。ライダーのために作成した警視庁のチラシには、バイク死亡事故が発生しやすい状況(通行目的別)をこう解説します。

・出勤時
・退勤時
・ツーリング

 東京都内で発生した2023年のバイク死亡事故の中で、出勤時に起きた事故は全体の29.5%で、2022年までの過去5年間の平均23.5%より割合が高くなっています。

 一見、大がかりな交通検問に見える交通啓発を通勤ラッシュの時間帯に実施したことも、事故発生状況に合わせた設定でした。都県境でこうした啓発を合同で実施することは初めての試みです。

 さらに、警察官は死亡事故の典型例を3パターンに分けて注意を呼び掛けています。

・右直事故
・単独事故
・追突、追い抜き、追い越し

 ライダーが遭遇する右直事故は、直進するバイクに対向車両が右折を試みて、バイクの進路をふさぐことで衝突する事故です。直進のバイクの優先について、対向車両の認知度を高めることも必要です。ただ、そのほかの単独事故や追突、追い越しなどに関する2つの事故のパターンは、ライダーが慎重な運転をするだけで回避が可能です。

 埼玉県内の2023年のバイク事故死者数も、前年比23人から33人に増加。バイク人身事故の増加よりも大幅なペースであることに危機感を募らせています。

「埼玉県でもバイク事故は、右肩上がりで増える傾向にある。危険なすり抜けなどに重点を置いて、交通検問型の啓発で事故の危険性を訴えている」(交通安全対策推進室)

ヘルメットのあごひも確認。できればプロテクターを装着する

 また、今回の啓発ではライダーにヘルメットの着用について注意を促す光景も見られました。通勤では小回りのきく小排気量車が使われていることが多く、装着するヘルメットの規格が合っていなかったり、あごひもの締め方がゆるく、事故時にヘルメットが外れて重傷に至るケースが問題になっています。

ヘルメットを装着していても、事故時に外れている死亡事故が減らない(撮影=中島みなみ)
ヘルメットを装着していても、事故時に外れている死亡事故が減らない(撮影=中島みなみ)

「ヘルメットのあごひもが緩んでいませんか。あごひもは指が1本入る程度にしっかり締めてください」と問われて、ライダーがあごひもに指を入れて確かめるシーンもありました。

 通勤時の事故軽減には、胸部プロテクターが有効であることも伝えられました。ヘルメットとプロテクターはセットで装備が呼びかけられていますが、プロテクターの装着はなかなか進みません。

 高速道路の走行などで大型バイクのユーザーが着用する例は増えていますが、「一般道などでの低速走行の方がプロテクターで胸部を守る効果を見込むことができる」という事故分析の結果もあります。

 一般道での胸部打撲による死亡事故は、肋骨が折れて肺にダメージを与える呼吸困難が原因となるケースが多く、プロテクターにより骨折を防ぐことで救命率を高めることができます。警察官自らが、胸のプロテクターを叩いて、装着を呼びかけました。

 交通死亡事故は、薄暮に目が慣れない秋から、世間のあわただしさで交通量が増す12月に向かって増加します。

 クルマなどと違って事故軽減装置に頼りにくいバイクの事故防止は、ライダーの運転感覚にかかっています。

【画像】「バイクを停めろ!!」初の合同交通啓発を画像で見る(12枚)

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Writer: 中島みなみ

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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