タイヤのサイズは様々でも“外径”はあまり変わらない!? ロードスポーツバイクは前後17インチが主流 ナゼ?
バイクに様々なカテゴリーがあるように、それらのバイクが履くタイヤも色々な種類があります。また同じカテゴリーでもタイヤのサイズはたくさん種類があります……が、“外径”はそれほど大きく変わらないようです。
タイヤの「径」にもトレンドが?
バイクには様々なカテゴリーがあり、それぞれの用途に合ったタイヤを履いています(ハイグリップ、スポーツ、ツーリング、オフ&アドベンチャーなど)。
また同じカテゴリーのバイクでも、車種や排気量によってタイヤのサイズは異なります。
ものすごくザックリ言えば、大排気量車ほどパワーも車両重量も増えるので、それに対応するため幅の広いタイヤを履いています。これは時代も影響しており、大排気量化やハイパワー化に合わせてタイヤも徐々に太くなった(幅広になった)と言えます。
そしてオンロードのスポーツ車に関して言えば、幅だけでなくタイヤの「径」も、時代によるトレンドがあります。これはレースに参戦するレーシングマシンが大きく影響しています。
ここではオンロードスポーツを中心に、バイクのタイヤのサイズの変遷を振り返ります。
タイヤ径の表記は「ホイールのリム径」のこと
まずはサイズの変遷の前に、タイヤの「サイズ表記」を簡単におさらいします。サイズの表記はタイヤの側面(サイドウォール)に刻印され、バイクメーカーのホームページの諸元(スペック表)にも記載されています。

たとえばヤマハ「YZF-R25」の場合は、前輪が110/70-17M/C(54S)で、後輪が140/70-17M/C(66S)です。最初の数字が「タイヤの総幅」を表し、単位は「mm(ミリメートル)」です。次の数字は扁平率で、こちらはタイヤの総幅に対する「タイヤの高さ」を「%(パーセント)」で表しています。
そして「-(ハイフン)」の後の数字が「ホイールのリム径」で、単位はインチです。
じつはタイヤの「外径」は表記されていませんが、この数字(ホイールのリム径)はタイヤの外径(直径)の目安としてよく使われており、この数字に注目してみます。
レーシングマシンを踏襲するが……
市販バイクが登場したのは1900年代初頭(英国発祥のロイヤルエンフィールドや米国のインディアンなど)ですが、当初は自転車の車体にエンジンを載せたような形態で、タイヤも自転車のようにかなり大径でした。
しかしバイク専用のフレームが登場し、性能を競うレースが本格化してくると、1950年代頃までは20インチや19インチのタイヤが主流になりました。
現代のオンロードスポーツ車と比べると大径ですが、当初はサスペンションのストロークも短く、ロードレースも専用のサーキットだけでなく公道でも開催されたため、荒れた路面に対応するにも、安定性を重視した大径タイヤを装備したものと思われます。
しかしエンジンの進化や大排気量化でパワーが増して高速化が進んだ1960年代頃のレーシングマシンは、後輪18インチ/前輪19インチがメジャーになり、それは当時の市販車にも反映され、英国のトライアンフや日本のホンダ「ドリームCB750FOUR」(1969年)やカワサキの「Z1」こと「900 Super4」(1972年)も同じタイヤ径を採用していました。
しかし世界的なバイクの盛り上がりとレースでの性能進化は目覚ましく、ロードレース界では1970年代後半頃から前後ともに18インチが主流になったかと思ったら、1980年代初頭にはホンダやスズキは前輪に16インチを投入しました(対するヤマハは前輪17インチを採用)。
当時は「クイックなハンドリングを狙って前輪を小径化」と言われ、市販車では250~400ccクラスのレーサーレプリカを筆頭に、カウリング非装備のモデルや大排気量車まで瞬く間に前輪16インチが流行しました。

しかしレーシングマシンの前輪16インチは、鋭くバンクしたり軽快性を狙ったわけではなく、高速化に対応するハードブレーキングに耐えられるようにトレッド幅(路面に接地する面)を拡大し、フルバンクでの旋回時のグリップを高めるために、タイヤのショルダー部(トレッド面の端)を延長するのが本来の目的でした。
たとえば18インチや17インチでもトレッド幅とショルダー部を拡大することはできますが、そうすると必然的にタイヤはかなり外径が大きくなってしまいます。
じつはロードスポーツ車のハンドリングや運動性能を進化させていく長い歴史の中で、「タイヤの外径はコレくらいがバランスが良い」というサイズが解っており、その外径を超えてしまわないように、前輪16インチが生まれたわけです。
前述したように、タイヤのインチサイズはホイールのリム径(すなわちタイヤの内径)を表しており、レーシングマシンは前輪16インチと言っても外径は17インチとあまり変わりません。
ただし当時流行した市販車の前輪16インチは、実際の外径が本当に小径化したモノもあり、ハンドリングはクイックですが安定性に欠ける車両も少なからずありました。
その後のレーシングマシン(WGP500マシンなど)は1980年代中盤ごろから前後17インチが主流になり、市販ロードスポーツ車も徐々に前後17インチが増え、1990年代には主流になりました。

しかしロードレースの頂点であるWGP500がMotoGPに替わった2002年頃から、トップカテゴリーのこのクラスのタイヤに前後16.5インチが登場します(試験的には1990年代前半に16.5インチが使われた例もある)。
2ストローク500ccから4ストローク990cc(当時のレギュレーション)によるパワーアップと最高速度の上昇に対応するグリップ性能の向上が目的で、これもトレッド面積を拡大しつつ、タイヤの外径を大きくしないための手段でした。
ところが、それまではレーシングマシンのタイヤサイズ(ホイールのリム径)は同時期の市販スポーツモデルに反映されるのが常でしたが、市販車に16.5インチは反映されず17インチのままでした。
その明確な理由は定かではありませんが、バイクメーカー的には市販ロードスポーツ車で主流となった17インチのホイールを、新たに16.5インチで量産するのはコスト的にも容易ではなかったと思われます。またタイヤメーカーも、既存の17インチと新規の16.5インチを並行して開発・製造・販売するのは大変でしょう。
とくにスーパースポーツモデルにとって「レーシングマシンと同じ装備」は大きな魅力ですが、果たして市販車にそこまで限界性能が必要なのか? という部分もあったと思われます。
とはいえ16.5インチの登場のタイミングが、仮に1980年代半ばのレーサーレプリカブームの時代だったら、もしかすると市販車も16.5インチが主流になっていたかも……という気がしなくもありません。
ともあれ、トップカテゴリーのMotoGPクラスのタイヤは前後16.5インチ一択となっていましたが、2016年からは前後17インチに変更されました。これはタイヤサプライヤーがブリヂストンからミシュランに変更されたタイミングで、理由としては「市販車用タイヤに技術のフィードバックを行いやすくするため」と言われています。
排気量が変わっても外径はほぼ同じ
タイヤも様々な進化を遂げていますが、ロードスポーツ車のタイヤ径はこの30年余りも17インチが主流になっており、125ccクラスから1000ccを超えるビッグバイクも然りです。
もちろん小排気量車とビッグバイクではパワーや車両重量も異なるので、タイヤの総幅はもちろん荷重指数やスピードシンボル(そのタイヤが耐えられる荷重やスピードの制限値)も異なりますが、じつは「タイヤの外径」は大きな差がありません。

その最たる理由は「人間のサイズが変わっていないから」です。この30年でも少しずつ平均身長は高くなってはいますが、それほど大きくは変わっていません。
人間のサイズに合わせてシート高やステップの高さ、そしてサスペンションのストロークを設計していくと、必然的に大まかなバイクのサイズが決まり、そこにセットするタイヤの外径もおおむね一定になるワケです。そしてバイクの運動性やタイヤの性能を求めたら17インチになった、という流れです。
その意味でタイヤの17インチは、スポーツバイクが100年余りかけて到達した(現時点での)ベターなサイズと言えるのではないでしょうか。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。












