「そんなにいいバイクなのか?」 BMW Motorrad「F 450 GS」500kmのロングランで感じた3つの気になる要素
BMW Motorrad新型「F 450 GS」は、全てが新開発となる排気量420ccの並列2気筒エンジンを搭載するミドルクラスのアドベンチャーモデルです。約500kmの試乗で、ちょっと気になったポイントを紹介します。
ひとつの理想形ではあるけれど……
我ながら思い切ったタイトルを付けたうえに、冒頭から前言撤回的な発言になりますが、BMWモトラッドの最新作となる「F 450 GS」は、非常にいいバイクです。
2026年9月に開催された国内試乗会に参加した私(筆者:中村友彦)は、一般道と悪路をメインとするツーリングが大好きな自分にとって、このモデルはひとつの理想形だと感じました。
しかも、コストダウンの気配がほとんど見当たらず、シリーズの長兄である「R 1300 GS」に匹敵する質感を備えていると言うのに、価格は近年の400~500ccアドベンチャーツアラーの平均内に収まっていて、仕様違いの価格(消費税10%込み)は「エクスクルーシブ」=96万1000円、「スポーツ」=98万4000円、「GSトロフィー」=103万3000円と、「ほぼ100万円」です。他メーカーにとって、この設定は相当な脅威になるでしょう。
ただし私を含めて、国内試乗会に参加したテスターがあまりにも絶賛するので、世の中には違和感や不信感を抱いている人がいるのではないでしょうか。
そこで当記事では、試乗会の後に改めて「F 450 GS」をじっくり乗り込んだ際に、気になった要素を記したいと思います。
「林道最強!!」ではない?
長野県白馬村で開催されたメディア向けの国内試乗会で、私の印象に残っているのは、スキー場内の移動用として整備された未舗装路(悪路と言うレベルではなく4輪でも普通に通行可能)を走った後に、オフロードを得意としているテスターから「林道最強」という言葉が出てきて、多くの参加者がその言葉に同意したことです。
確かに、このバイクの悪路走破性は予想以上に素晴らしくて、私自身も、前輪が19インチ、車重が178kgのバイクでも、「ここまで行けるのか!!」と大いに驚きました。

とはいえ、国内試乗会より条件が悪い未舗装路、普段の私が愛車のホンダ「SL230」(前輪は21インチで車重は115kg)でよく出かけている酷道を走ってみると、19インチの前輪は路面の障害物に弾かれた際の挙動がちょっと怖かったですし、大きな石がゴロゴロしているガレ場や滑りやすいヌタヌタ路面、行き止まりでのUターン時には178kgという車重に手強さを感じたのです。
もっとも、だからと言って私は「林道最強」という言葉を否定したいわけではありません。このモデルにそういう印象を抱くかどうかは、路面の状況・難易度や、ライダーのスキルによりけりで、普段の林道ツーリングで4輪がほとんど入ってこない酷道をメインとし、オフロードの腕前が残念ながら万年中級以下の私にとっては、やっぱり前輪が21インチで車重が軽い250cc以下のトレールバイクが「林道最強」だと思いました。
高速巡航時の「落ち着き感」は……
BMWモトラッドがこれまでに販売した車両の多くは、一定速度での高速巡航を得意としています。そして「F 450 GS」での高速巡航は、べつに不快ではないのですが、快適と言うレベルではありませんでした。
その原因はエンジンです。この車両が搭載する新規開発のパラレルツインは、スロットルを開け始めた際の反応と低中回転域のトラクションが素晴らしく良好な一方で、135度という独創的なクランク位相角を採用したためか、あるいはバランサーが1軸式だからか、はたまた組み立て精度に問題があるのか、全回転域で「ワシャワシャ」&「ザワザワ」した感があって、6000rpm以上ではハンドルやシート周辺に適度な振動が発生するため、高速巡航時に何となく落ち着きの悪さを感じるのです。
と言っても、このあたりの感じ方は人それぞれで、誰もが私と同じ印象を持つわけではないはずです。

ただし、例えば現在の「GS」シリーズ全車を集めて、高速道路を使って長距離移動する機会があったら、目的地に到着する頃に最も心身が疲れているのは「F 450 GS」でしょう。
などと書くと、兄貴分モデルは排気量に余裕があるうえにクルーズコントロールを装備しているのだから、それは当然だろう、というツッコミが入りそうですが、過去に私が体験したホンダ「NX400」やロイヤルエンフィールド「ヒマラヤ450」(いずれもクルーズコントロールは未装備)は、このモデルより高速巡航が快適だったように思います。
解消できなかった「ERC」の違和感
仕様違いの中で上位グレードである「GSトロフィー」は、BMWモトラッド初のメカニズムとして、左手で行うレバー操作が不要になり、エンストの心配が無い「ERC(イージー・ライド・クラッチ)」を採用しています。
そしてこの機構の出来はなかなか秀逸で、基本的にクラッチ操作を面倒と感じたことがない私も「これは楽だ……」と感じました。
ところが、速度が1ケタ台にまで落ちる未舗装路のガレ場やヘアピンカーブ、渋滞路で4輪の後ろをトロトロ進むような状況だと、2700rpm付近というクラッチがつながるポイントが高すぎるのです。
もっとも国内試乗会での私は「5分で慣れる」という印象を抱いたのですが、普段の自分のフィールドでこのバイクを走らせると、要所でいつもより多めにスロットルを開けることの違和感が、なかなか解消できませんでした。

ただし私がそう感じたのは、国内試乗会から約1週間後に、ホンダ「CB400スーパーフォアEクラッチ」と「CBR400RフォアEクラッチ」を体験したからかもしれません。
構造が別物なので安易な優劣は付けられないですが、ホンダのEクラッチは、駆動力が伝わる回転数に違和感が無く(ゼロ発進だと2000rpm以下)、スロットル操作はいつも通りという印象だったのです。
それでも自信を持って「オススメできる」
さて、とりあえず思いつくままに記してみましたが、そういった要素を確認した後も、私の「F 450 GS」に対する評価は下がりませんでした。
と言うのも、私が普段の林道ツーリングで走っているルートは一般的とは言えませんし(4輪だけではなく2輪と遭遇する機会も少ない)、細かいことを気にしなければ100~120km/hでの高速巡航はごく普通にこなせますし(BMWが公表する最高速は165km/h)、もっと距離を乗りこむことでERCの違和感は解消できそうな気がするのです。
そんなわけで、もし周囲の友人知人から「F 450 GS」の購入を相談されたら、ここに記した気になった要素を述べつつも、私は自信を持ってオススメするつもりです。

また、現在の自分が所有している車両の中から何台かを手放して、代わりに「F 450 GS」を入手したら、かなり充実したバイクライフが送れそうな気がしています。
ちなみに、BMWモトラッドの車両は特別なアナウンスが無くても、初年度よりは2年目、2年目よりは3年目がより良くなっていることが珍しくないのです。
となると、前述したエンジンのワシャワシャ&ザワザワ感やERCの微妙な設定は、来年か再来年には解消される可能性があるので、あまり急ぐ必要はないのかもしれません。
Writer: 中村友彦
二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。


















