ヤマハの新型アドベンチャーモデル「テネレ700」の「テネレ」って、なに?

ヤマハから注目の新型オフロードバイク「Tenere700(テネレ700)」が発表されました。その車名になっている「テネレ」の由来をご存知でしょうか?

かつて数々の名勝負を生んだ、ダカール・ラリーのルートだった

 ヤマハのアドベンチャーバイク「テネレ」の系譜は、ダカール・ラリーの歴史とともにあります。そしてそのネーミングはアフリカ大陸の国のひとつ、ニジェールにある「テネレ砂漠」に由来します。

2019年に国内導入が発表されたヤマハ新型アドベンチャーバイク「Tenere700(テネレ700)」に乗る筆者(松井勉)

 広大なサハラ砂漠の一部で、吹く風が砂を動かしてできた砂丘のつらなりはもちろん、まるで水の抜けた遠浅の海底のように平らな砂の大地が続く場所もあります。

 なぜこの砂漠がヤマハのバイクの車名になったのか。それは時計を1978年12月まで巻き戻す必要があります。1978年の暮れ、パリのトロカデロ広場には2輪、4輪、トラックなど、およそ陸を走れる車両が冒険ラリーのスタートを待っていました。

 パリからフランス国内を南下し、地中海沿いの街からフェリーでアフリカ大陸の国、アルジェリアへ渡ります。その一団こそ「第1回パリ~ダカール・ラリー」の参加者たちでした(飲料水メーカーがスポンサーで、この年のラリーは「オアシス・ラリー」と呼ばれました)。

 それから毎年、ダカール・ラリーはフランスを発ち、アルジェリア、ニジェール、マリ、モーリタニアなどの国々を経由し、セネガルの大西洋岸沿い、ダカールをゴール地点として、文化、国境を越えた3週間1万kmの冒険ルートで競われました(2009年より南米大陸へ舞台を移し、ゴール地も変わりましたが“ダカール”の名称を継承しています)。

ヤマハ「XT600 Tenere(1983年)」

 このラリーのルート中盤にあり、いつも名勝負が繰り広げられたのが、ニジェールのテネレ砂漠でした。

 第1回を含む多くのダカール・ラリーで勝利を重ねたヤマハが、1983年にリリースしたバイク、それこそが「XT600テネレ」だったのです。ラリーレプリカのルックスで、テネレは瞬く間に人気機種になります。

冒険の象徴として、「テネレ」は脈々と受け継がれていった

 当時、フランスなど欧州ではコミューターやツーリングバイクとして、オンロードもオフロードも走れるデュアルパーパスモデルが大人気でした。

2019年もヤマハはダカール・ラリーに挑戦している。車両は「WR450F Rally」、写真のライダーはF・カイミ

 細身で軽量、単気筒エンジンを搭載したデュアルパーパスバイクの機動性は、街の石畳もモノともしません。その分、どのモデルも燃料タンクは小さく、シートは細身で、バッテリーも貧弱なもの。夜間走行の要であるヘッドライトも、ロードバイクに比べて明るいとは言えません。排気量が大きくなるとパワフルな分、余計小さいタンクが徒(あだ)にもなります。

 そこにダカールフレーバーを入れたXT600テネレは、容量30リットルの燃料タンク、60/55wの当時としては明るいハロゲンヘッドランプ、そしてデュアルパーパスモデルには珍しく、前輪にディスクブレーキを装備して新しさもアピールしていました。長距離ラリーをオマージュしたパッケージは瞬く間に市民権を得て人気モデルになったのです。

 その後、1988年にはフレームマウントのフェアリングを備え、デュアルヘッドライトを持つスタイルに進化します。

 1989年には排気量750cc、並列2気筒エンジンを搭載する「スーパーテネレ」がデビュー。単気筒エンジンの「テネレ」も排気量660cc、5バルブの水冷エンジンを搭載した新型にフルモデルチェンジしています。

 さらに1994年、大型のフェアリングを持つスタイルになり、その後2008年、単気筒エンジンのテネレはモデルチェンジを果たし、生産が続きます。

 また2010年には、排気量1200ccのクロスプレーンエンジンやシャフトドライブの駆動方式を採用し、よりツアラー仕様になったフラッグシップモデル「スーパーテネレ1200」が登場します。

ヤマハ「XT1200Z Super Tenere(2010年)」

 国内では初代「XT600テネレ」のみが市販され、その後は逆輸入車として流通したため、テネレは“知る人ぞ知る存在”でした。

 こうして歴史を振り返ると、ヤマハの定番モデル「セロー」よりも歴史が長く、世界で愛されるビッグアドベンチャーツアラーであることが解ります。そう、ヤマハにとって「テネレ」は大切な看板モデルなのです。

【了】

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Writer: 松井勉

オートバイ関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行う。海外のオフロードレー スへの参戦や試乗テス によるインプレッション記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

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