排気量規定が廃止されたAT限定大型二輪の試験車両は「オートバイ型」に替わるのか? それとも……

改正道交法が施工されてAT限定大型二輪免許の排気量上限(650ccまで)が廃止されました。スクーター以外にもクラッチ操作を必要としないバイクがあるなか、教習車はどうなるのでしょうか?

AT限定大型二輪の、教習車両はどうなる?

 2019年12月1日、改正道交法が施行され、日本国内では排気量650ccまでのスクーターしか発売されていないという理由で限定されていたAT限定大型二輪免許の0.65リットル(いわゆる650cc)以下の限定が廃止されました。

スズキ「スカイウェイブ650」(2014年型)の教習車仕様

 AT限定大型二輪免許の運転免許試験合格者数は、大型二輪全体が約8万人に対してわずか100人(平成30年)ですが、受験者数は平成29年から30年を比較すると132人から156人と大幅に増えていて、需要が高まっていることがわかります。

 今回の改正道交法施行では、試験車両や指定教習所での教習車両も「総排気量0.70リットル以上1.300リットル以下」に変更されました。また、これまで「スクーター型」に限定されていた試験車両等の形状の規定が廃止されました。

 これまで使われていた試験車両等はスズキのスカイウェイブ650でしたが、すでに生産終了し、カタログ落ちしています。

 それらの試験車両等は「当分の間は従来のものを使用できることとする」(警察庁の通達)とのことですが、今後、教習や運転免許試験の車両はまたがって乗るタイプの、いわゆる「オートバイ型」AT二輪に変更されるのでしょうか? それとも、四輪の中型や大型免許の試験等ではトラック型またはバス型を選べるように、AT二輪免許もオートバイ型またはスクーター型のどちらかを選べるようになるのでしょうか?

Dual Clutch Transmission(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を搭載するホンダ「CRF1100LアフリカツインDCT」はクラッチ操作不要で走行が可能

 警察庁に質問したところ、以下の回答をいただきました。

「令和元年12日1日以降、大型自動二輪車免許に係る試験車・教習車両については、MT・ATの区分に関わらず、700cc以上の排気量の自動二輪車(※実際には600cc以上1300cc以下)となりますが、当分の間、AT限定大型自動二輪免許については、排気量600cc以上の自動二輪車を試験・教習車両として用いることができます。

 したがって、各運転免許試験場・教習所においては、独自に試験・教習車両(オートバイ型・スクーター型)を選定しているものと承知しております」

 つまり、各都道府県の運転免許試験場や各地の指定教習所の入札や仕入れの状況による、ということですね。とはいえ、発売されている700cc以上1300cc以下のAT二輪車はかなり限られている現状があります。

 現在発売されている該当するモデルは、ヤマハがFJR1300Aと同AS、ホンダはDCTを装備するNC750Sと同X、CRF1100L Africa Twinと同Adventure Sports、そしてX-ADVの7機種です。

ヤマハ「FJR1300AS/A」は排気量1297ccの直列4気筒エンジンを搭載し、6速ATを装備する

 スズキ、ヤマハ、ホンダに新型の教習車両や試験車両の発売予定がないかどうかそれぞれ尋ねたところ、いずれも「まだ公式に発表できる情報はない」とのこと。

 現実的にはNC750シリーズのDCTモデルが有力候補となるでしょう。

 もし今後、スズキ「スカイウェイブ650」がホンダ「NC750」にとって替わるとなると、体格や身体障害などの理由があってスクーター型で教習や試験を受けたいライダーにとってはややハンディにも思えます。

 じつは身体障害者の場合、自分で用意した車両を持ち込むこともできます。もし希望があれば各教習所や試験場に相談してみるとよいでしょう。

 免許さえ取得すれば、AT限定でも排気量1800ccのホンダ「Gold Wing Dual Clutch Transmission」だって運転が可能となりますね!

【了】

AT限定大型二輪免許で運転可能なバイクは?

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Writer: 小林ゆき(モーターサイクルジャーナリスト)

モーターサイクルジャーナリスト・ライダーとして、メディアへの出演や寄稿など精力的に活動中。バイクで日本一周、海外ツーリング経験も豊富。二輪専門誌「クラブマン」元編集部員。レースはライダーのほか、鈴鹿8耐ではチーム監督として参戦経験も。世界最古の公道バイクレース・マン島TTレースへは1996年から通い続けている。

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