レース中にマシンが炎上! どう処理するの? レースオフィシャルの仕事に密着

エンジンやモーターなどの動力と燃料を積み、マシン性能ギリギリのレベルで速さを競うモータースポーツ。その特性上、クラッシュやマシントラブルなど、なんらかの理由により、レース中にマシンが炎上してしまうアクシデントが稀に起こってしまいます。そんな時、レースの裏側ではどのような処理が行われているのでしょうか。

2019-2020 FIM EWC 開幕戦 ボルドール24時間の場合

 クルマやバイクを性能ギリギリまで使って走らせ、スピードや操作技術を競うモータースポーツ。エンジンやモーターなどの動力と燃料を積んだ乗り物で競うという競技の特性上、クラッシュやマシントラブルにより、レース中にマシンが炎上してしまうアクシデントが稀に起きてしまいます。

 そうなると、燃えている場所や規模により、赤旗を出してレース自体を中断させるか、セーフティーカー(SC)を介入させて、追い抜きを禁止した状態でペースをコントロールしてレースを続行させるか、どちらかの対応が取られます。

レース中にマシンが大きな煙を上げて炎上する様子

 現地で観戦していても、偶然目の前でアクシデントが起こらない限り、赤旗やSC中の状況を把握するのは困難です。

 自宅のモニターや観戦席からの景色を見ながら、まだかまだかとレースの再開を待った経験がある方も多いのではないでしょうか。

 レース中にマシンが炎上してしまった場合、いったいどのような処理が行われているのか、2019-2020 FIM 世界耐久ロードレース選手間(EWC) 開幕戦 ボルドール24時間でのオフィシャルの消火活動に密着しました。

レース中のアクシデントにより、セーフティーカーランが行われている様子

 2019年9月21日から22日にかけて、フランスにあるポールリカールサーキットで行われたEWCの開幕戦は、現地時間の15時にスタートするも約3時間後、悪天候により約12間レースが中断するという異例のレースとなりました。

 そして翌朝6時にレースが再開されてからは、天候は回復する一方で、前日の悪天候が嘘のような晴天となったのですが、スタートから約18時間が経過したところでF.C.C.TSRホンダ・フランスのマシンにトラブルが発生します。

 ライダーは手押しでマシンをピットに戻すも、その際に路面にオイルを撒いてしまったようで、11コーナー付近で転倒者が続出する事態に。

 その転倒したなかの2台、WEBIKE・SRCカワサキ・フランスとYARTヤマハのマシンが接触し、炎上。レースは再びセーフティーカーランとなりました。

炎上するマシンに向けてオフィシャルが必死で消火器を噴射する様子

 セーフティーカーランが続くなか、11コーナーではマシンの炎がタイヤバリアにまで広がり、大炎上。

 まずは、コーナー付近にあるオフィシャル用テントに常備されていた消火器で、決死の消火活動が行われます。

火災現場に駆け付けた消防車

 そして消防車が到着し、さらに消火器が追加され、燃えている場所だけでなく、その付近もすべて消火剤の泡で埋め尽くされました。

 この泡だらけの光景を見て、「もう火は消えているのに、ここまで泡だらけにする必要があるのか」と、少し疑問に思いますが、この泡のような消火剤は「泡消火剤」と呼ばれるもので、冷却効果と、燃焼物を覆うことによって生じる窒息効果によって消火する仕組みだそうです。

泡消火剤に埋め尽くされたマシンの様子

 マシン、タイヤバリアなど、11コーナー付近で燃えていた火が完全に消えたところで、消火剤の泡のなかからマシンがサービスロードに引っ張り出されましたが、その頃にはまっ黒焦げ。

 ほとんどバイクの原型をとどめていなかったため、積載用のクルマに乗せるだけでも大苦戦。数人がかりでやっとという状態でした。

 では、コース上に残った大量の泡はどうなったのかというと、マシンをコースから引っ張り出すのと同時ぐらいに、大きな掃除機のような機械を背負った男性が数名登場。

ブロアーで泡消火剤を吹き飛ばすオフィシャル

 このブロアーと呼ばれる機械の風圧で、一気に泡をコース外に吹き飛ばし、4輪ブラシ式路面清掃車(ロードスイーパー)で最終仕上げ。

 コース上から危険要素がすべて取り除かれ、SCが介入してから約45分後に、SC解除。レースは無事に再開されました。

※ ※ ※

 大きなクラッシュなどでレースが中断しても、観戦している人たちに細かい状況が伝えられることはあまりありません。

「クラッシュがあったのは知っているけど、いったいいつ再開されるのか」そんな気持ちで、再開を待つことがほとんどだと思います。

 しかし、実はそんなレースの裏側では、安全を保つためのオフィシャルによる決死の作業が行われているのです。

 クラッシュやアクシデントが起こったら迅速に処理し、最速でレースを再開させるオフィシャルの戦いに注目してみるのも面白いかもしれません。

【了】

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