“自転車以上バイク未満” 毎日でも乗りたい電動モトクロッサーSUR-RON『Light Bee L1E』の気軽さたるや!

じわじわと人気が高まりつつある『SUR-RON(サーロン)』の電動モトクロッサー「Light Bee L1E」に乗りました。一般道で走らせてみると、開発コンセプトである「ファンライド」に納得。新しいバイクの可能性に挑戦したくなる魅力を備えた電動バイクだったのです。

抜群の足着き性と軽さ、扱いやすさで走る楽しみが広がる

「Light Bee L1E」は、2014年に中国で設立された『SUR-RON』(以下、サーロン)がリリースする電動モトクロッサーです。日本では2020年5月より『KOHAKU JAPAN(コハク・ジャパン)』が正規総輸入代理店として販売がスタートしました。競技車両(いわゆる保安部品無しの仕様)である「Light Bee X」、「Light Bee S」のほか、公道を走ることができる「Light Bee L1E」(原付2種)、「Light Bee L1J」(原付1種)をそろえています。

SUR-RON「Light Bee L1E」※前後17インチ、オンロードタイヤを装着した仕様

 サーロンはカナダを含む北米やヨーロッパで広くファンを獲得しているということで、日本でも販売開始から約1年ながら、注目を集めつつあります。2021年9月下旬には、日本初となるサーロンのみのレースイベント「第1回 SUR-RON CUP」をモトクロスヴィレッジ(埼玉県川越市)で開催し、46名の参加者を集めました。

 今回試乗したのは、原付2種に区分される「Light Bee L1E」(以下、ライトビー)です。競技車両「Light Bee X」の公道仕様とも言えるモデルですが、前後ホイールは19インチから17インチへ、タイヤはオンロードタイプに変更され、一般道での用途に向けた仕様となっています。

 内燃機関のモトクロスバイクと比べても、車体は非常に細身でコンパクト。ほとんどモトクロスバイクに乗った経験がない筆者(伊藤英里)でも、一目見て「これなら乗れるかも」と思えました。

 またがってみると、足着きは驚くほどに良好です。身長153cmの筆者でも、かかとが少し浮く程度。本来のシート高は802mmで、筆者の体格にとってはそこまで低いわけではありません。しかし、車体が細身で足をまっすぐに下ろすことができ、また、サスペンションがよく沈むうえに、前後17インチホイールということで、さらに足着き性のよさに貢献しているようでした。

身長153cmの筆者(伊藤英里)がオンロード仕様の「Light Bee L1E」にまたがった状態。両足の足裏半分くらいが接地する印象。車体も軽く細身のため、取りまわしや足着き具合に不安はまったくない

 足着きのよさに自信を得て、早速公道を走らせます。ライトビーはふたつの走行モードを備えており、ひとつは「スポーツモード」、もうひとつは「エコモード」です。スポーツモードではスロットルを開けると心地よい加速感を味わうことができます。電動バイクらしい初速からのトルク感があり、クルマやバイクの中で走っていても、初速で遅れをとることはまったくありませんでした。そのトルク感が、扱いにくいほどではなく、とても走りやすいのです。

 一方のエコモードでは、加速がやや穏やかで、最高速度は約53km/hでした。また、スロットルを開けてからのレスポンスが少し過敏で、道路のちょっとした凹凸で思わぬ加速をしてしまうこともありました。スポーツモードではそこまでの反応はしないため、モードによって味付けが異なっているようです。

 このふたつの走行モードでは回生ブレーキの利きにも違いがあり、スポーツモードはスロットルを戻すと回生ブレーキの利きを感じます。一方、エコモードではほぼ回生ブレーキは利いていないようでした。抵抗がほとんどない状態となるので、スピードが乗った状態であれば下り坂でスロットルをオフにし、自転車のように下っていくこともできます。その間、バッテリーは使用していませんから、なるほど「エコ」走行ができるわけです。状況に応じて走行モードを考えることも、走る楽しみを生んでいました。

車体がとても細いので、駐輪場でもわずかなスペースに停めることができる ※公園の管理事務所の指示に従って駐輪しています

 それにしても、ライトビーは本当にフレンドリーなバイクです。コンパクトな車体で車両重量も62kgと軽いので、取り回しにもまったく苦労することがありません。足着きのよさ、そして軽さ、操作の容易さによって、ある種のストレス無しに走ることができるのです。

 2週間ほどこのバイクを走らせてみましたが、自転車よりも楽に、そして内燃機関の原付スクーターよりも気軽に走ることができる、と感じていました。動きが軽快なのでUターンが苦にならず、寄り道も楽です。すれ違うことができないような小道にもサッと入っていけます。

 筆者はライディングスキルが高い方ではないので、バイクに乗るときにはいつも緊張感をともなっていましたが、このライトビーに乗るときには、良い意味でそういう緊張感無く走ることができました。扱いきれる安心感があり、走っていて不安が無いので、ライダーの気持ちに余裕ができます。余裕があるから視野も広がって安全性も高まり、そしてなにより、走っていて楽しいのです。走るほど、このバイクが「ファンライド」に軸足を置いていることに納得したのでした。

 これまでバイクに乗ったことがない人にとっても、気負いなく走らせることができるような、バイクを楽しむハードルを下げるバイクのように思います。これまでモトクロス経験がほとんどなかった筆者でも、あまりの扱いやすさに「このバイクならオフロードを走ってみたいかも……」と誘惑されてしまいました。

イグニッション(キーシリンダー)はハンドル手前のメインフレームに配置。その手前にはスマホなどの充電に重宝するUSBソケットを備え、バッテリー残量を表示する小窓のついた黒いカバーの下にバッテリーを搭載する

 電動バイクで気になる“電費”を検証したところ、約50kmがライトビーの基本的な航続距離と考えられます。ツーリングは難しいでしょうが、車体から漏れる液体がほとんど無いので、レジャーバイクとしてクルマに積むとしても、内燃機関のバイクよりシビアに考えずに済みそうです。

 日常にも溶け込み、さらにレジャーバイクとしても活躍する、バイクを楽しむ可能性をどんどん広げてくれる電動バイクではないでしょうか。

※ ※ ※

 SUR-RON「Light Bee L1E」の価格は56万6500円(消費税10%込み)です。

【了】

【画像】公道仕様のSUR-RON「Light Bee L1E」を見る(15枚)

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Writer: 伊藤英里

モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。

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