江東区、大型バイクも駐輪場へ駐車可能に 段階的条例改正で駐輪場の“不可能の壁”を崩す
東京都江東区の区立自転車駐輪場で2022年度から、排気量125ccを超える自動二輪車の利用が始まりました。用意されたのは定期利用3台とわずかですが、地方自治体が整備に乗り出した極めて珍しい取り組みです。今後の広がりが期待されます。
2021年の条例改正から、わずか2年で前進
自転車駐輪場の利用は地方自治体が定める自転車条例で決められます。江東区は1985年に制定。自転車と排気量50ccまでのバイクが対象でした。2007年、駐車監視員制度が導入され、バイクにも厳しい取締りが実施されるようになりましたが、その後も条文は変わりませんでした。
条例が改正されたのは、2021年4月のことです。自動二輪車の中でも125cc以下のバイクの利用が50cc駐車スペースと兼用で可能になりました。それから1年後の2022年4月、一部で125cc以下の条件が削除され、自動二輪車の月ぎめ定期の利用が可能になりました。JR亀戸駅北口に位置する「亀戸駅北口第三自転車駐車場」に用意された、わずか3台分です。幅1m×奥行2.2mの駐車枠内に入る車両であれば、とくに制限はありません。地方自治体が駐輪場に大型バイクを受け入れる、極めて珍しい取り組みです。
江東区には駐輪場が約50カ所あります。50ccのバイクはそのうち17カ所で利用可能ですが、36年間その条件は変わりませんでした。2021年に条例改正が行われた後は、わずか2年で変化が起きました。
行政自身が作る“不可能の壁”を崩せ
「排気量50ccを超えるバイクも利用できるようにすべきではないか」。流れが変わったのは東京オートバイ協同組合(野間健児理事長)の要望を受けた地元区議会議員の間に、駐輪場の利用を原付と自動二輪で区切ることに意味がない、という理解が広がったからです。駐輪スペースが狭くて止められないのは仕方ないことですが、50ccバイクの駐輪スペースで止められる125ccのスクーターなら利用は可能です。
自転車条例の基本となるのは、自転車法という法律です。この法律で規定する原付とは、排気量50cc以下、道路交通法の免許区分に基づく原付バイクのことです。そのため自転車条例でも「原付」=50cc以下。排気量が51ccを超えるバイクは自転車法の対象外なので、駐車場整備も対象外と考える地方自治体は、じつは多いのです。
駐車のための規則を、運転するための免許区分で決めることには、そもそも無理があります。乗用車駐車場で駐車可能な車枠があるのに、軽自動車しか止めてはいけないということはありません。行政自身が作った“不可能の壁”は、国土交通省も課題と認識。地方自治体に解消を呼び掛けていますが、今も多くの地方自治体が、バイクの受け入れに取り組んでいません。
江東区は駐車スペースに止められるのであれば、原付も自動二輪車も受け入れるという方針で条例を改正。段階的に利用対象を広げて、利用者の理解を深めています。条例改正に力を注いだ公明党・中根卓也区議は今後の展開について次のように話します。
「自転車駐輪場はほかにもあるので、状況を見ながら受け入れを進められるように要望を重ねている。とくに50ccバイクは125ccバイクに移行しつつあるので、それに合わせた受け入れの拡大を目指している。大型バイクも受け入れが始まったので、できるところから拡大を進めたい」
駐輪場で自動二輪を受け入れる、江東区内の4カ所
■亀戸駅北口第三自転車駐車場(亀戸1-41-2)
125ccまでの定期利用:月額3000円(23台)
126cc以上の定期利用:月額5250円(3台)
■南砂町駅西口自転車駐車場(南砂3-9先)
125ccまでの定期利用:月額3000円(7台)
125ccまでの一時利用:日額200円(30台)
■潮見駅自転車駐車場(潮見2-6)
125ccまでの一時利用:24時間200円(8台)
■新木場駅南自転車駐車場(新木場1-5)
125ccまでの一時利用:24時間200円(45台)
※日額=朝9時から翌朝9時までの24時間以内
Writer: 中島みなみ
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。