the「燃費」じつはツーリング適正も高いスポーツマシン ヤマハ「YZF-R7」の実走燃費はどうだ?

排気量688ccの直列2気筒エンジンを搭載するヤマハ「YZF-R7」は、ネイキッドモデル「MT-07」をベースにスーパースポーツに仕立てられています。実際に走るとツーリング適正が高く、その燃費を実走で計測してみました。

走っていて楽しい、それこそがツーリングで味わう醍醐味のひとつ

 気になるあのバイクの燃費を計る、意外とマジメなバラエティー企画のthe「燃費」です。今回のテスト車はヤマハ「YZF-R7」(以下、R7)です。このバイクは人気のネイキッドモデル「MT-07」のフレームやエンジンをベースにしながら、細部をスーパースポーツに仕立てています。しかし乗ってみるとツーリング適性がスゴイ。ならばしっかり燃費もチェック、となったわけです。

実際の燃費はどうなのか? ヤマハ「YZF-R7」を走らせる筆者(松井勉)
実際の燃費はどうなのか? ヤマハ「YZF-R7」を走らせる筆者(松井勉)

 the「燃費」では毎回同じルートを使い、市街地、高速道路、ツーリング路(快走路)で実走燃費を計測しています。ペースは周囲の流れに合わせた休日のツーリングをイメージして「とある休日のツーリングの燃費」を探求しています。計測方法は、区間毎に車載の平均燃費計が示す数値を記録し、記事に記載した区間距離は取材時にそのバイクが示すトリップメーターの距離です。

「YZF-R7」のスペックですが、2人乗りでの60km/h定地燃費値は41.6km/l、WMTC(クラス3-2)の燃費値は24.6km/lとなっています。燃料タンク容量は13リットル、レギュラーガソリンが指定です。

 ちなみに「MT-07」のそれは、2人乗り60km/h定地燃費値が38.8km/l、WMTC(クラス3-2)の燃費値は同じ24.6km/lとなっています。60km/h定地燃費値が違うのはナゼ? 車重は「R7」が188kgで「MT-07」が184kgと、むしろ「MT-07」が有利なハズです。

 理由は二次減速比だとthe「燃費」取材班は睨みます。ドライブチェーンが後輪を回すスプロケット(歯車です)の歯数が「R7」は42T、「MT-07」が43Tと、ひとつ違います。

 エンジン側のスプロケットの歯数は16Tと同じなので、「R7」が伸び重視、「MT-07」は同じ速度なら到達時間を短く、パワフルに加速するギア比と言えます。

 後輪のタイヤサイズは同じなので外径は同じとすれば、「MT-07」の方が60km/hで走行中のエンジン回転数が「R7」より若干高くなる、というのがその違いを生んだようです。

 実際、the「燃費」ルートではどんな結果となったのでしょうか。

市街地でも乗りやすい、「MT-07」譲りのエンジンフィール

 the「燃費」の市街地計測ルートは、都内の神宮外苑近くから始まります。周回道路の一部を通り、ホンダ本社がある国道246号の青山1丁目交差点を左折。赤坂、皇居の堀を経由して丸の内周辺のオフィス街をひと回り。銀座、築地を経て豊洲方向へ抜け、そのまま首都高湾岸線沿いを走る国道357号の東雲付近までという12.4kmです。

いざ、燃費の実走計測へ。市街地燃費計測では丸の内オフィス街も経由
いざ、燃費の実走計測へ。市街地燃費計測では丸の内オフィス街も経由

 ルートの多くは片側3車線で交差点での赤信号では待ち時間もそれなりにあります。また、銀座周辺では歩行者が横断する人数によって停止時間が長くなることも。これまでの経験上、停止時間が長いとアイドリングで燃費値に影響します。

 今回は比較的スムーズに交差点を通過できたこと、渋滞と呼べるほど交通量も多くなかったこともあって、結果は21.4km/lでした。

 市街地で「R7」の乗りやすさは特筆モノでした。前傾姿勢が強いのが市街地速度では堪えますが、エンジンの回転フィールはマイルドで扱いやすさは「MT-07」譲り。通勤でも毎日乗れそうなバイクです。

高速道路だってへっちゃら!? とは言え1時間ごとに休憩がベターかも

 the「燃費」の高速道路計測は次の2区間、合計81.4kmで行なっています。区間1は、アクアライン連絡道の「木更津金田IC」から館山自動車道「富浦IC」直近のコンビニエンスストアまでの55.8kmという往路。区間2は、館山自動車道「富津中央IC」からアクアライン連絡道「木更津金田IC」までの25.6kmという復路です。

東京都内から千葉県木更津エリアへ移動し、高速道路での燃費計測に向かう
東京都内から千葉県木更津エリアへ移動し、高速道路での燃費計測に向かう

 ともに、アクアライン連絡道は80km/h制限、館山自動車道は、往路では100km/hから80km/h、70km/hと変化し、復路では100km/h制限の区間を走ります。また、館山自動車道は計測区間中平坦路が少なく、アップダウンが連続しています。

 高速道路での「R7」は、低く構えながらカウルがあるので、ライダーが上体を少し前に倒すと走行風の影響が少なくなります。しかし、一定速度で移動する高速道路です。スポーツ走行で前傾姿勢は1時間なら頑張れるけど、2時間目はキツそう……と思うのでした。

 燃費値は、交通量が少なくスムーズだった往路が28.3km/lで、アクアライン連絡道で交通量が多く、ペースは60〜80km/hで走ることになった復路が31.2km/lと出ました。

快走路を行く「YZF-R7」 急かされることなく味わえる楽しさ

 the「燃費」のツーリング燃費は次の3区間、合計87.7kmで計測しています。

the「燃費」の計測ルートで立ち寄る千葉県の「大山千枚田」にて
the「燃費」の計測ルートで立ち寄る千葉県の「大山千枚田」にて

 区間1は、高速道路計測区間(往路)を終えた直後にある国道127号沿いのコンビニエンスストアからスタート。県道296号から「安房グリーンライン」を南下して房総半島の南端エリアへと移動する22.2km。

 区間2は、南端エリアから国道410号で太平洋側の海岸線をまわりながら北上。途中、県道34号から西へ向かって「大山千枚田」へと移動する39.4km。

 そして区間3は「大山千枚田」から県道34号へと戻りさらに西へ。県道182号「もみじロード」で北上し、国道465号、国道127号線を経由して館山自動車道「富津中央IC」までの区間です。

 それぞれの区間で平坦路とアップダウンとワインディングがおよそ半々で存在する房総半島の快走路です。信号が少なく一定のペースで走り続けられるのも特徴と言えます。

「YZF-R」シリーズの一員であることは間違い無いが、ワインディングでは攻めずとも楽しめる、走っている時のバイクとの一体感がスバラシイ
「YZF-R」シリーズの一員であることは間違い無いが、ワインディングでは攻めずとも楽しめる、走っている時のバイクとの一体感がスバラシイ

「R7」は良質なツーリングバイクです。内陸でのんびりしたペースを保っても苦にならず、ワインディングを攻めずとも走りが楽しめます。一定のペースでカーブへと進入しても、寝かせたバンク角に合わせるように高まる旋回力。「YZF-R」の名に間違いはありません。急かされず、でもこの一体感。バイクを楽しむ深み、とでも言いましょうか。

 気になる燃費結果は、区間1では「安房グリーンライン」からほぼ車に遭遇せず、上りも下りもマイペースで走って31.9km/l。区間2では海岸線沿いでゆったりとクルマのペースに合わせた移動で燃費が伸び、「大山千枚田」に上る道で数値を落としたものの33.6km/l。最終となる区間3では「もみじロード」のワインディングで鋭い旋回性を味わいつつも33km/lと、700ccクラスとしては上出来な結果です。

ツアラーとしても太鼓判です!

 合計181.5kmの計測区間を走行し、市街地、高速道路、快走路での総合燃費は27.96km/lでした。スタイルは抜群。ポジションがロングでは疲れるものの、この走り、この燃費なら出かけたくなります。良いバイクでした。

ツーリング想定のthe「燃費」計測ルートを走り終え、ゴール地点の千葉県木更津エリアに到着
ツーリング想定のthe「燃費」計測ルートを走り終え、ゴール地点の千葉県木更津エリアに到着

■ヤマハ「YZF-R7」燃費結果
総合評価:☆☆☆☆★(ホシ4つ)
市街地:21.4km/l
高速道路:29.7km/l
快走路:32.8 km/l
平均:27.96km/l

【画像】ヤマハ「YZF-R7」の燃費性能は? 実際に走って調査! を見る(11枚)

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Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

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