バイクの兄弟車は“お兄さんの方が高い”のが当たり前……ではなく“弟の方がお買い得”!?
同じメーカーでコンセプトやスタイルが共通する排気量違いのバイクを「兄弟車」と呼ぶことがあります。排気量が大きい方がお兄さんで、価格が高いのも当然に感じますが、本当にそうなのでしょうか?
排気量が大きく高性能な“兄”モデル
同じメーカーでコンセプトやスタイルが共通する排気量違いのバイクを「兄弟車」と呼ぶことがあります。排気量が大きい方が「お兄さん」で、価格が高いのも当然に感じますが、本当にそうなのでしょうか?
排気量の大きな「兄」の方が、最高出力や最高速度が高く、装備面でも充実している場合も多いので当然な気がする、というか疑問に思わないかもしれません。
たとえばヤマハのスポーツネイキッドの「MT」シリーズは、何種類もの排気量をラインナップしています。
国内販売モデルでは6兄弟にもなり、他にも足まわりや装備が豪華な「SP」仕様や、AT免許で乗れる「Y-AMT」仕様のような「従兄弟(いとこ)」も存在します。

まず長男の「MT-10」は排気量997ccの並列4気筒エンジンを搭載し、最高出力は166馬力もあり、ライディングをサポートする電子デバイスも満載で、価格(消費税10%込み)は192万5000円です。
次男の「MT-09」は888ccの並列3気筒(125万4000円)、三男の「MT-07」は688ccの並列2気筒(96万8000円)、四男の「MT-03」は320ccの並列2気筒(68万7500円)、五男の「MT-25」は249ccの並列2気筒(63万2500円)、そして末っ子の「MT-125」は124ccの単気筒(49万5000円)になります。
エンジンの気筒数が変われば部品点数が変わるので、当然ながら価格に反映されます。また「排気量:最高出力:スピード」はある程度比例するので、排気量が多いほどパワーやスピードに対応する車体の強度なども高める必要があり、これも価格に影響します。
その意味では「MT」兄弟の価格差は、相応に「順当」に感じます……が、もう少し掘り下げてみましょう。
見た目ソックリでも兄の方が高い
ここで注目したいのは「MT-25」と「MT-03」です。他の車両はコンセプトやスタイルの流れは共通ですが、エンジンやフレームなど車体を構成する部品はほぼ共通性はありません。
しかし「MT-25」と「MT-03」は、ほとんどの部分が共通です。2026年モデルはカラーバリエーションも共通なので、車名のデカールを見なければ判別できないほどソックリです(ヒールガードのデザインは異なる)。
スペック表を見比べても、異なるのはエンジンの排気量とそれに関連するスペック(最高出力や最大トルク、燃料消費率など)とトランスミッションの変速比くらいで、車両の各部サイズや重量も完全に同一です。
すると部品点数も構造も基本的に同じなので、製造コストは変わらず、車両価格が同じでも良いのでは? ……とも思います。
じつはスペック表をよく見ると、両車のタイヤは前後ともにサイズや荷重指数は同じですが、「MT-25」はバイアスタイヤで速度記号が「S」(最高速度180km/h)で、「MT-03」はラジアルタイヤで速度記号が「H」(最高速度210km/h)になっています。
これは前述の「排気量:最高出力:スピード」に対応するための違いですが、そのためタイヤの原価に価格差はあるかもしれません。これは同社の「YZF-R25」と「YZF-R3」でも同じ関係になっています。
もしかすると他の部品にもタイヤのような違いがあるかもしれませんが、それほど多岐に渡るとは思えません。
というワケで、意地悪な考え方をすると「MT-25」と「MT-03」の価格差(5万5000円)は、少々大きいのでは……と感じなくもありません。
また近しい関係性の兄弟車としては、スポーツヘリテージの「XSR125」と「XSR155」では、スペック表を見る限りでは(エンジン関連の他は)2次減速比のみが異なっており、タイヤは同一です(「YZF-R125」と「YZF-R15」の違いも同様)。
それでもやっぱり「兄モデル」の方が、車両価格は相応に高くなっています。

このように、「屁理屈」的に「兄弟車の価格差」を見てきましたが、車両の価格は部品の原価や製造の手間だけで決まるものではなく、生産台数や販売地域なども含めて様々な要素が関係しています。
また随分と昔の話ですが、メーカーから「製造コストが同じでも、排気量が少ない(数値的な性能で劣る)弟モデルは価格を下げないと売れないから大変だ」と聞いたこともあります。
その意味では、兄モデルが高額なのではなく、弟モデルはリーズナブルでお買い得、とも考えられます。
いずれにしても、メーカーは昨今の材料費の高騰や調達が困難な状況に対応しながら、バイクを生産しているのではないでしょうか。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。









