昔はたくさんあった「250ccクラスの4気筒モデル」 国内初登場はいきなり“ハイメカ”だった!?
バイクのエンジンは気筒数が多いほどエラいワケではありませんが、1980~90年代は4ストロークのスポーツモデルと言えば4気筒でした。250ccクラスにも多数ラインナップされていましたが、国産モデルは初登場時からハイメカでした。
「250ユーザー」は4気筒が羨ましかった?
排気量250ccクラスのバイクは、性能と扱いやすさ、経済性とのバランスも良い人気の排気量帯です。現在は4ストロークの単気筒と2気筒エンジンが主流で、新車販売だとカワサキ「Ninja ZX-250R/RR」のみが4気筒エンジンを搭載しています。
じつは空前のバイクブームを迎えた1980年代の「前夜」も同様で、当時の250ccクラスは2ストロークと4ストロークが二分していましたが、どちらもやはり単気筒か2気筒が主流でした。
多気筒エンジンと言えば、1972年に登場したカワサキ「2500SSマッハI」の後継モデルである「KH250」(1979年が最終モデル)の2ストローク3気筒くらいでした。
しかし兄貴分の400ccクラスには4気筒のホンダ「ドリームCB400 FOUR」(1974年)が姿を消した後にもカワサキ「Z400FX」(1979年)が登場し、その後は各メーカーから続々と4気筒モデルが発売されました。
当時の250ccクラスも初の水冷2ストロークとなるヤマハ「RZ250」が登場するなど、性能面では引けを取りませんでしたが、4ストローク派の250ユーザーは、やはり4気筒に羨ましさを感じたものです。

じつは海外メーカーでは、イタリアのベネリ社が1975年に「250 Quatro(クアトロ)」という空冷4ストローク4気筒バイクを発売していました。
しかし当時は海外からの輸入車は現在ほどメジャーではなく、情報も限られていたので目にすることはおろか、このバイクの存在を知る人も少なかったと思われます。
話題に上ったが人気はイマイチ……
そして1983年3月に、ついにスズキから4気筒エンジンを搭載する「GS250FW」が発売されます。国産初の4気筒はもちろん、250ccクラスで世界初の水冷4気筒DOHCでした。
またフレームはスチール製ですが、角断面のL-BOXフレームを採用し、フルフローターのリアサスペンション(リモート式プリロード調整機構)やフロントフォークのアンチノーズダイブ機構、前輪16インチに対向ピストンのブレーキキャリパーなど、シャシーや足まわりも最先端のメカニズムが奢られました。

ところが、4気筒ならではの高回転まで電気モーターのようにスムーズに回るエンジンながら、最高出力は36psで、スズキが同年に発売した水冷2ストローク2気筒の本格レーサーレプリカである「RG250Γ」の最高出力45psに遠く及ばず……。そのため国産初の250ccクラスの4気筒車と話題に上りながらも、販売は振るわなかったようです。
しかしマイナーチェンジした翌1984年モデルで2ps増しの38psにパワーアップし、1985年にはネイキッドの「GF250」にフルモデルチェンジして最高出力を41psにアップします。
さらに翌1986年2月にはハーフカウルを装備する「GF250S」をラインナップに加え、最高出力も2ストローク2気筒のレーサーレプリカ群と並ぶ45psを発揮します。
初代の登場から僅か3年でこれだけ進化を遂げるのは驚異的であり、空前のバイクブームという時代性も強く感じさせられます。
超高回転サウンドに魅了!
スズキが「GS250FW」を「GF250」にモデルチェンジした翌月の1985年4月に、ヤマハから初の250ccクラスで4気筒エンジンを搭載する「FZ250 PHAZER(フェーザー)」が発売されました。

ヤマハは前年に発売した「FZ750」で、スペック最優先で性能を見直す設計思想の「ジェネシス」を立ち上げ、「FZ250フェーザー」のエンジンもジェネシス構想で設計されました。
45度に前傾したシリンダーにDOHC4バルブヘッドをセットしてダウンドラフト吸気することで、最初から250ccクラス最高の45psを発揮しました。
レッドゾーンが1万6000回転から始まる超高回転型に加え、4 into 1の集合マフラーが奏でる高周波の排気音も大きな魅力でした。
また、フロントカウルからテールカウルまで一体で繋がる未来的なスタイリングや、138kgの軽量な車体と750mmと低く足着き性に優れたシートも合わせて、小柄な女性ライダーからも高い支持を得ました。
なぜか「レーサーレプリカ」ではなかった
国産で250ccクラスの4気筒車が登場した1980年代の中盤は、バイクブームと共に「レーサーレプリカ・ブーム」の始まりでもありました。とくに2ストローク250ccはレーシングマシンに寄せる傾向が強く、400ccクラスの4気筒車もそれに続きました。
ところが、国産250ccクラス4気筒で初のスズキ「GS250FW」は、どちらかというとスポーツツアラー的なスタイルで、モデルチェンジした「GF250」はネイキッドです。またライバル車のヤマハ「FZ250フェーザー」のスタイルも、レーサーレプリカとは異なります。
この辺りは当時の流行を考えると少々不思議な部分ではありますが、4気筒エンジンを搭載する250ccクラスのバイクに新たな方向性を模索していたのかもしれません。
……が、この後は他のクラス同様に熾烈な「レプリカ合戦」に突入して行きます。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。






