カワサキ「Z900RS」とスズキ「KATANA」 乗り比べてわかったそれぞれの個性

往年の名車へのオマージュが込められた2台の国産ビッグバイク。カワサキ「Z900RS」とスズキ「KATANA」を乗り比べてみました。

人気の国産ビッグバイク、選ぶとしたらどちらなのか?

 現在の国産ビッグバイク市場は、カワサキ「Z900RS」とスズキ「KATANA」の2択!? そう思えるほど、この両モデルの人気は他を圧倒しているわけですが、それゆえ「一体どちらがいいの?」と悩んでいる人も多いでしょう。そこで今回は、2台を同じシチュエーションで試乗し、ハンドリングやエンジンにどんな違いがあるのかを体感してみました。

ワインディングを走ってみると、それぞれ得意な速度域が明確に

 一番わかりやすいのは、得意な速度域の違いです。ざっくり分けると、低中速域が心地良いZ900RSに対し、KATANAは中高速域が“しっくり”します。街中をスイスイ走れるのがZ900RSだとすると、KATANAはワインディングや高速道路で本領を発揮するタイプ、と言い換えられます。

 その要因は、まず車体の構造にあります。Z900RSは重心が低く、それに伴ってシート高も下げられているため、大型バイクにまたがっているというプレッシャーがほとんどありません。加えてハンドリングも軽く、まるで中型バイクのようにクルクルと旋回。車重も車体サイズもKATANAとほぼ同じながら、グッとコンパクトに感じられるとっつきやすさが魅力です。

スズキ「KATANA」に乗る筆者(伊丹孝裕)

 一方、KATANAはシートにまたがると腰高な印象で、乗車姿勢は見た目よりも前のめり。結果的にハンドルへ体重を乗せやすく、それを活かしてガツッとブレーキを掛けてからフロントタイヤの旋回力を引き出す……というスーパースポーツ的な乗り方が似合う本格派です。サスペンションにも硬めのセッティングが施され、ユルユルと流すよりも積極的に操ることを楽しむ生粋のスポーツバイクとして仕立てられています。

穏やかな「Z900RS」と、刺激的な「KATANA」

 エンジンにも同様の差があります。Z900RSの最高出力は111psで、最大トルクは6500rpmで発揮。KATANAの排気量はZ900RSよりも50cc大きいだけですが、こちらの最高出力は148psに達し、最大トルクの発生回転数も9500rpmとかなり高め。そこには低中回転域を重視しているZ900RSと、中高回転域においしいところがあるKATANAという明確な差があるのです。

カワサキ「Z900RS」に乗る筆者(伊丹孝裕)

 基本的に穏やかなZ900RSにはネイキッドらしいフレキシビリティが、KATANAにはハイスペックがもたらす刺激があり、それぞれの印象をシンプルに表現するなら「柔」のZ900RSと「剛」のKATANAという一文字がふさわしいでしょう。

 とはいえ、これらはあくまでも直接比較し、両モデルの違いを探るための仕事モードで評価した時の話でもあります。

 Z900RSのエンジンが高回転まで回り切った時に発する「カーン」という澄んだ音は、かつての空冷エンジンを思わせる刺激に満ちていますし、KATANAに搭載されているエンジンは、フレキシブルな特性を武器に世界耐久選手権と世界スーパーバイク選手権を制した2005年型GSX-R1000用のユニットを改良したもの。

初代のイメージを踏襲する2台の現行モデル

 つまり、Z900RSもKATANAも単体で評価するとパワーもトルクも充分以上あり、あらゆるステージで及第点を大きく超えるパフォーマンスを披露。そこにあるのは、優劣というよりも味つけの差のようなものです。

 電子デバイスがいくつか盛り込まれていますが、その部分にも差はほとんどありません。どちらにもABS、スリッパークラッチ、トラクションコントロールが装備され、Z900RSのトラクションコントロールが2段階なのに対し、KATANAには3段階が設定され、少し細やかになっている程度。

スズキ「KATANA」とカワサキ「Z900RS」

 というわけで、ここまであれこれ書いておいてなんですが、どちらのメーカーに思い入れがあるか、どちらのスタイルが好きか……という好みで選んでも失敗しない秀作と言えます。

 価格(税込)は、カワサキ「Z900RS」が132万8400円、スズキ「KATANA」が151万2000円です。

 多くのメーカーやショップから続々とカスタムパーツがラインナップされていますから、それぞれのモチーフになった900SUPER FOUR(Z1)やGSX1100S(初代カタナ)と同様、じっくりと楽しめる息の長いモデルになっていくはずです。

【了】

カワサキ「Z900RS」とスズキ「KATANA」、どちらがお好み?

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Writer: 伊丹孝裕

二輪専門誌「クラブマン」編集長を務めた後にフリーランスとなり、二輪誌を中心に編集・ライター、マシンやパーツのインプレッションを伝えるライダーとして活躍。鈴鹿8耐、マン島TT、パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムといった国内外のレースにも参戦するなど、精力的に活動を続けている。

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