じつは社会人や初心者に人気だった!? 知られざる「ハードエンデューロ」の魅力とは?

不整地(オフロード)を使ったモーターサイクルレースのひとつ「ハードエンデューロ」が、日本のオフロードバイクファンの間でもブームになっています。

ハードエンデューロの人気を支えている人たちとは?

 まだ一部のマニアだけの世界と思われがちな「ハードエンデューロ」というオフロードモータースポーツの楽しみ。その人気を支えているのは、じつはオフロードバイク初心者や(大怪我ができない)社会人が中心のようです。

レースには大勢のオフロードバイクファンが集まる

 では実際にどうなのでしょうか? ひとつのイベントを通じてその理由を紐解いてみます。

 2019年9月1日(日)に、千葉県の成田モトクロスパークで「2019 成田 夏祭り」という、一般参加者でにぎわうレースイベントが開催されました。

 当日は早朝からレース参加希望者の行列が見られます。主催者によれば過去最大規模とのことで、少なくとも250人が来場。当日エントリー制につき、せっかく来てもレースに出られず、レースとは別の「フリー走行」のみという来場者も大勢見られました。

 そのレースですが、上級者が順位を競い合うものだけではありません。初心者でも楽しめるステージが用意されているのです。

 ライダーの技量によって分けられるクラスは、初心者の「たまご」、中級者の「ひよこ」、上級者の「とさか」クラス。それぞれコースの難易度も変えて設定されます。

ひよこクラスは登り坂に仕込まれた2本の丸太を超える難所が。転ばずにクリアする人もいれば「転んでもいいから、とりあえず登るのを優先」という人も

「とさか」クラスのような上級ライダーだけでなく、参加者のほとんどは初心者から中級者です。そのなかで、実際に参加された方へ「ハードエンデューロの魅力」を聞いてみました。

「いままで色々なオフロードレースに出ていましたが、ここ数年はハードエンデューロばかり出ています。順位は気にはなりますが、それよりも達成感や充実感の方が大きいです。

 失敗したり、完走ができなくても、自分に足りないものが明確にわかるので、その対策で練習を重ね、結果としてクリアしたときの喜びは大きいものです。失敗を恐れない気持ちも芽生えてきましたね。

疲れてくると集中力も途切れて一本橋から離脱したり丸太でもがくライダーも。それでもなんとか短時間で脱出する術を持っている

 ハードエンデューロはそもそもスピードがそれほど速くないので、失敗しても大きな負傷になりにくいんです。スピード競技は1発で骨折しちゃいますが、いままで擦り傷や軽い捻挫くらいで済んでいます。

 色々なオフロードレースの中で、一番安心して参加できています。自分のペースで走れば、十分楽しめるところが魅力ですね」

 日本のハードエンデューロ界の第1人者、石戸谷蓮(いしどやれん)選手も話していましたが、本格的な装備ではなかったり、レース専用車両ではないヤマハ「セロー」などのトレールバイク率が高いのも、初心者が入り込みやすい土壌なのかもしれません。

とさかクラスに用意されたセクション。複数の一本橋に上手く乗ってクリアするか、下に敷かれた丸太を超えていくか……。上級者は華麗なウイリーでクリア

 そして日本国内で最大の人気シリーズとなるオフロードバイクレースは「JNCC(Japan National Cross Country)」というレースイベントです。

 2018年は年間8270台ものエントリーがあり、最終戦は500台近い参加者が集まりました。ハードエンデューロはJNCCとは全く違う客層ながら、各レースで大人気を誇るジャンルです。近年はJNCCもハードエンデューロを主催しています。

 JNCCはアメリカ発祥のクロスカントリーレース形式で開催されるオフロードレースです。クラスごとに一斉スタートし、制限時間内に設定されたコースの周回数で順位を競います。日本で「エンデューロ」と呼ばれる競技はこの形式が多く、人気を誇っています。

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 レースと言えば先を争い、少しでも上の順位を目指す世界を思い浮かべますが、ハードエンデューロでは参加者のコメントにもある通り、達成感や助け合い、応援など、心温まるシーンや笑顔が溢れています。

スタックして自分ではどうにもならない時、ほかのライダーなどに引き上げてもらう際に役立つのが「スタックベルト」。ハードエンデューロの世界では「マナー」とも言われる必需品

 そんな魅力がレース初心者にも伝わり、リピーターだけのレースではなく、新規参入もあり人気を集めているようです。

【了】

一般ユーザーでにぎわう「ハードエンデューロ」とは?

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