受け継がれるホンダの大型プレミアムツアラー「Gold Wing Tour DCT」の魅力とは!? 2020年モデルを振り返る

排気量1833ccの水平対向6気筒エンジンを搭載するホンダの大型プレミアムツアラー「ゴールドウイング・ツアー」のDCTモデル(2020年型)に試乗しました。どのような魅力があるのでしょうか。

ホンダのフラッグシップツアラー、やはりモデルチェンジ前から凄かった!?

 ホンダのプレミアムツアラー「Gold Wing Tour(ゴールドウイング・ツアー)」の2020年モデルに試乗しました。すでに2021年モデルが発売されていますが、復習のためにテストしてきたわけです。結論から言います。このバイク、素晴らしい! 超ゴージャス、超快適、そしてこのサイズにして凄く乗りやすいのです。

ホンダ「Gold Wing Tour DCT」(2020年モデル)に試乗する筆者(松井勉)

 まあ、取り回しは重たいですし、駐める場所にもスペースが必要です。でも、リバースギアもあり、じつはそれほど体力勝負ではないのです。

 試乗車はDCT(Dual Clutch Transmission:デュアル・クラッチ・トランスミッション)モデルです。2020年モデルまではMTモデルが存在しましたが、2021年からはDCTに一本化、これはユーザーさんからも支持が高かったのでしょう。

 このDCTはホンダ独自の技術で、AT的使いやすさと、MTミッションを自動変速するシステムのコンバインドによるドライブ感を減衰させないもの。ホンダのモーターサイクルでDCTを搭載するモデルでは唯一、7速を採用しています。ATモードとMTモードがあるので、左スイッチボックスにあるパドルを使って気持ち良くシフトしながら走ることも可能です。

 DCTモデルの特徴のひとつとして「ウォーキングスピードモード」があります。これは取り回し時、前進と後進をエンジンでアシストしてくれるもの。専用スイッチでシフトし、パドルシフターを使って「+」で前進、「-」で後進できるのです。正直、これがあれば取り回しへの不安を大きく減らせるものだと言えるでしょう。いえ、一度体験したら、これ無しではいられません。

ホンダ「Gold Wing Tour DCT」(2020年モデル)

 このバイクの特徴であるエンジンは、水平対向6気筒です。2018年のフルモデルチェンジの際に採用された、ジェネレーターをスターターモーターとして活用する機構のため、エンジンのユニット重量も先代モデルより軽量小型化されています。またアイドリングストップ、AppleCarPlayやAndroid Autoを使い、スマホ画面をミラーリングすることで、ナビをメーターパネルに表示できるのも特徴です。

 シャーシでは、軽量化されたアルミツイニューブフレームを採用し、フロントサスペンションはテレスコピックフォークからダブルウイッシュボーン式としています。これにより車輪の支持とサスペンション機能を分けることになり、滑らかな路面追従性を実現。テレスコピックフォークのようにストロークと同時に前輪がエンジン側に近づく構造ではないため、理想的なジオメトリーを維持しています。

 さあ、走り出しましょう。キーレスのため、イグニッションはコンソール状のダイヤルを回すだけ。スターターボタンなどはハンドルスイッチ側にあります。音も無く回り出す6気筒エンジンは静かでスムーズ。ビリビリくる振動もナシ。エンジン音、排気音はバイクらしいエモーショナルな成分に加え、おもてなし成分が配合された高級なもの。

 DCTのセレクターを「D」にしてアクセルを開けると、絶妙な半クラッチ操作で巨体はゆるりと前進開始します。エンジン回転数は2000以下、それでもトルク感は充分です。それでいて2気筒、3気筒、4気筒とは異なる超絶スムーズな回転感です。

 1500rpmほどでシフトアップされ、市街地でも程なく6速へ。自動シフトするDモードでなんの不満もなく走ります。交差点を曲がる時、近くの路面が見えないから不安かな、と少し思いましたが、自然なリーン速度と適度な前輪の切れ方がバランスしていて、自然な操舵フィーリングでスルッと曲がります。

排気量1833ccのモーターサイクルとしては唯一(ホンダ調べ)となる水平対向6気筒エンジンを搭載。写真はDCTモデル

 正直、ビッグバイクの中のビッグバイク、というサイズです。MTモデルでアクセル、クラッチをバランス良くコントロールしながら同じ場面を走行したら、緊張感はまるで違ったでしょう。クラッチを操る、それはライダーにとって小さくない心理的負担でもある、とDCTのゴールドウイング・ツアーは教えてくれました。

 赤信号で停止すると、アイドリングストップが働きます。その止まり方もじつにスウィートです。コトンと消えるように停止するエンジン。単気筒スクーターのように最後に身震いするようなことはありません。そして再スタート時もアクセルの操作に合わせ、テーブルマジックのようにシュンと再始動します。そこからの加速も滑らか。少しアクセル開度を多めにとると、巨体からは想像出来ないほどのダッシュを見せてくれます。乱暴ではなくジェントルに、しかも力強く……。

 高速道路では電動のスクリーンを調整すれば快適性を高めることが可能です。1人の時はもちろん、パッセンジャーと走るときにスクリーンを起こすと、防風性と風の巻き込みが変わります。とにかく大事なゲストへのおもてなしもバッチリなのです。

 言い忘れましたが、ワインディングをはじめ、市街地でもブレーキング時の扱いやすさは文句の付け所がありません。しっとりしなやかに速度調整ができて、イザと言うときにガツンと握っても不安定な姿勢になることもありません。これはサスペンション機構などシャーシ性能の高さと協調したもの。周囲から「あんなに大きなバイク、操るのは相当な腕がいるよね……」と思われそうですが、ライダーはじつにリラックスして走りを楽しめるのです。

ライディングモードの選択で、よりバイクらしいスポーティな走りもこなす大型ツアラー

 ちなみに、峠道でも持て余さないのがまたスゴイところ。スポーツバイクのようにバンク角は深くありませんが、タイヤのグリップ、旋回性、加速力もスポーツできるバイクです。レイン、エコノ、ツアー、スポーツと4つから選択できるライディングモードをいじれば、動けるビッグツアラーなのです。これはスゴイですよ!

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 今回試乗した2020年モデルのホンダ「Gold Wing Tour DCT」の発表当時の価格(消費税10%込み)は338万1400円です。

【了】

【画像】あらためて、2020年モデルのホンダ「Gold Wing Tour DCT」詳細を見る(13枚)

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Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

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