新型登場で再注目、中免で乗れるBMWスクーター「C400X」は超・実力派だった!! あらためて先代モデルに乗る

BMW Motorrad「C 400 X」は、2019年に新登場となった排気量350ccの水冷単気筒エンジンを搭載するミドルサイズ・スクーターです。どのような特徴があるのでしょうか。試乗しました。

なにもかもが「しっかり」してる!! BMWらしいアーバンモビリティ

 全6モデル。販売予定の電動スクーター「CE 04」を含めたBMWモトラッドが誇るビッグスクーターのラインナップ数です。ヤマハ「TMAX」、スズキ「バーグマン650」をターゲットとする排気量650ccの2気筒エンジンを搭載する「C650」シリーズにはじまり、超絶な発進加速を味わえる電動スクーター「C evolution」まで。原付サイズの電動モノが多い国内ブランドとは異なり、「i3」や「i8」という4輪でも電動モデルを展開するBMWらしく、プレミアムクラス向けのラインナップを誇るのはさすが。そこに加わったのが「C400」シリーズの「X」と「GT」です。その結果、ビッグスクーターでは最も豊富なラインナップを持つブランドとなっています。

BMW Motorrad「C 400 X」(2020年型)に試乗する筆者(松井勉)

 ここに紹介する「C400X」は、その2020年モデルです。登場は2019年、すでに2021年モデルのデリバリーがスタートしていますが、その直前に借り出し、お復習い試乗となりました。

 当時の「C400X」の価格は、スズキの「バーグマン400」より数万円高い設定でした。しかし、ETC2.0を標準装備し、メーカー3年保証が付帯することを考えると、価格差はほぼ無しと考えて良いでしょう。

「X」という名前から推察できる通り、アーバンモビリティでありながら、イメージはストリートクロスオーバーです。LEDのヘッドライトが左右非対称なデザインになっているのは、同社のアドベンチャーモデル、「GS」シリーズに倣ったもの。

 スタイルは軽快さが印象的。これは「C」シリーズ伝統の「フレックスケース」というラゲッジルーム拡張機能がそれを可能にしています。ヘルメットを収納する時はライダーがバイクから離れる時だと割り切り、折りたたみ式のヘルメット収納スペースを設けているのです。

 フレックスケースは、後輪上部に垂れ下がるように拡がり、走行中は利用できません。そのため、移動中大荷物を運べないものの、プロポーションはスリムで軽快感があります。

 また、これは編集部スタッフの体験ですが、フロントパートのミドルセクションにあるサイドパネルが、多少の雨からライダーの足元が濡れるのを護ってくれる、という報告も。信号待ちでは濡れますが、走っていると空力を駆使して雨粒が当たるのを抑えてくれるのです。そうした部分も含め合理的です。

シート高775mmの車体に身長183cmの筆者(松井勉)がまたがった状態

 搭載されるエンジンは400という呼称ながら、排気量は350ccです。水冷単気筒4バルブユニットを採用し、最高出力は25kW、最大トルクは35N.mと、排気量は「バーグマン400」より少ないながら、パワーで4kW、トルクは同値を発生するのも特徴です。

 車体の特徴としては、フロント15インチ、リア14インチのピレリ製ラジアルタイヤを履き、サスペンションは、フロントフォークは外径35mmのインナーチューブ持つ正立タイプ、リアにはプリロード調整が可能な2本ショックを採用するコンベンショナルなもの。また、ブレーキディスクは前後同サイズとしつつも、フロントには対向4ピストンキャリパーにダブルディスク、リアにはシングルピストンキャリパーを採用することで制動性能を引き出しています。

 ライディングポジションは、先端が細身になっているシートのお陰で足が外に開かず、足付き感も上々。少し広めのハンドルと自然な角度のグリップに手を伸ばせば、ヨーロッパスタイルのアップライトなポジションだと解ります。

 シートの前後長もあり、体格を問わず好みのポジションに収まりそうなのも特徴でしょう。メーターは6.5インチのTFTカラーモニターを採用し、通常表示では時計、気温、トリップなどの情報を選択して表示するほか、速度計を持つシンプルなもの。また左グリップにあるスイッチで選択すれば、回転計を含めた表示に切り替えることも可能です。

排気量350ccの水冷単気筒OHC4バルブエンジン、CVTギアボックスを搭載。スクータータイプでありながら力強い「バイク感」が伝わってくる

 エンジンはスクーターの単気筒らしい振動を持っていますが、バイブレーションの振幅は大きくありません。発進時にも2500rpmほどからクラッチを繋ぎ、少ないアクセル開度で効率よくスタートしてくれるので、その後の加速にもシームレスな印象があります。大きくアクセルを開ければ250では味わえない加速力を発揮。剛性感のある車体や、しっかりした足まわりから伝わる「バイク感」が早くも伝わってきます。

 イージードライブなスクーターながら、市街地のハンドリングを含め走りに光る一体感。こうした感覚こそ、BMWモトラッドが「C400X」に込めたクロスオーバーなのか、とも感じます。

 その印象は高速道路に入っても変わりません。乗り心地の良さと直進性の確かさ、車線変更時のしっかり感など、BMWモトラッド製のバイクに乗った時に感じる走りの質感と同種のものを持っています。しっかり感のレベルが高い。100km/h巡航でエンジンも車体もゆとりがタップリ。感心しました。

 それはツーリング先のワインディングを走っても同じでした。荒れた路面でも進路は乱れず、コーナリング中の旋回力、グリップ力、そしてコントロール性を含め、バイク感がしっかりあるのです。

 ペースが速くても遅くても「C400X」が発するメッセージは不変で、安心感とライディング感がしっかりあるため退屈しません。走りのパートは可も無く不可も無くという線引きが透けて見えるスクーターが少なくない中、しっかりドイツメーカーの製品、という「血」が流れているのが解りました。

シート下収納は停車中のみと割り切り、収納性を確保しながら軽快でコンパクトなスタイリングに。2本のリアショックがスポーティさを印象付けている

 ボトムレンジのスクーターだからそこまで期待せずに乗ったものの、試乗を終えてお見逸れいたしまいた、と思わず見直した「C400X」だったのです。

※ ※ ※

 参考まで、最新型で電子スロットル(ライド・バイ・ワイヤ)などを採用した「C400X」(2021年型)の価格(消費税10%込み)は87万円から、ETC2.0車載器を標準装備します。

【了】

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Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

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