モビルアーマーみたいな新型登場! ホンダ「NT1100」は冬の高速が快適すぎる!!
ホンダは日常の扱いやすさと長距離走行の快適さを両立した新型スポーツツアラー『NT1100』を3月17日にHonda Dreamより発売します。完成したばかりのニューモデルをバイクジャーナリストの青木タカオさんが試乗しました。速報インプレッションです!
グラブロかビグロか、いいやザクレロだ!
毎週日曜日の夜は『鬼滅の刃』そして『進撃の巨人』と、テレビアニメに夢中になっている筆者(青木タカオ)。もちろん『エヴァンゲリオン』や『東京卍リベンジャーズ』も欠かせませんが、心の奥底から好きなのは、なんといっても『機動戦士ガンダム』です。

6月3日、全国ロードショーの『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』を心待ちにし、日常でも「ザクとは違うのだよ、ザクとは!」などと、ついつい口走ってしまう“ガンダム世代”=厨二病なわけですが、『NT1100』を見て、まず最初に口にしたのが「モビルアーマーみたいじゃないか」という言葉でした。
同世代の人たちは一同に頷き、「グラブロかビグロか、いいやザクレロだ」と話が盛り上がります。吊り目のデュアルヘッドライトが睨みの効いたフロントマスクを形成し、最新のデイタイムランニングライト(DRL)が高級感を漂わせます。
着座部分は以外にもスリム
もちろん、宇宙空間を飛ぶことや水中に潜ることなんてできません。いつもどおり、サイドスタンドを払って車体を引き起こし、シートにまたがります。

見た目では「さぞかし重いだろう」と警戒しましたが、押し引きは意外と軽い。車両重量は248kgと、大排気量モデルとしては平均的ですが、アップハンドルで取り回ししやすいのと、低重心化、マスの集中が図られているからでしょう、さほど感じません。
ライディングポジションはゆったりとしたもの。グリップ位置が高く、ハンドルもワイド。目線が高く開放感があるのは、アドベンチャーモデルに近いというか、それと言ってもいい。
上半身の前傾は約5度と、いたって緩やか。シートはクッションが厚く(メインシート74mm、後部座席60mm)、長時間走行時の疲労軽減と快適性が図られています。

それでいて、足つき性も悪くありません。シート高は820mm。座面が絞られた形状で、足を出しやすい。身長175cmの筆者の場合、片足立ちならカカトまでベッタリと地面に着き、両足をおろしてもカカトが若干浮く程度。外観はぱっと見でボリューミーですが、またがるとスリムさを感じるから巧くできています。

■シート高
NT1100:820mm
CRF1100L Africa Twin:ローポジション810mm/830mm
Rebel1100:700mm
■車体重量
NT1100:248kg
CRF1100L Africa Twin:240kg
CRF1100L Africa Twin Adventure Sports ES:250kg
Rebel1100:233kg
※CRF1100L Africa Twin、Rebel1100:いずれもデュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)
アフリカツインやレブル1100譲りのエンジン
排気量1082ccのユニカム4バルブ直列2気筒は『CRF1100L Africa Twin』や『Rebel1100』にも採用される定評のあるパワーユニット。270度位相クランクの不等感覚爆発は、加速時に駆動輪からのトラクションを感じやすいだけでなく、心地よいリズミカルなパルス感も伴います。

前輪の浮き上がりと後輪スリップを緩和する「Honda セレクタブル トルク コントロール(HSTC)」も搭載。走行状況に応じた出力特性が選べるライディングモードは下記の通りです。
TOUR:タンデム走行などでの快適な加速感を重視。
URBAN:オールラウンドな特性。
RAIN:雨天時などの走行に適する。
USER:自分好みの設定が可能。
メーターは6.5インチタッチパネル式TFTフルカラー液晶のマルチインフォメーションディスプレイ。説明書を読まなくても、画面を見ながらの直感的なスイッチ操作で各種設定ができたことも報告しておきましょう。
シームレスな変速で“ヘルメットのコツコツ”を解消!
国内仕様の『NT1100』はデュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)のみで、クラッチレバーとチェンジペダルによる変速操作をなくし、スロットル操作など他の車体操作に集中できます。

Uターンなど、細かなクラッチ操作とともにアクセルの開閉をコントロールし、車体の姿勢にも気を使う場面では特にDCTがありがたく感じました。市街地でのストップ&ゴー、渋滞でのノロノロ運転でも威力を発揮します。
また、シームレスな変速によって、シフトチェンジ時のショックがないのもDCTの良さ。『NT1100』はタンデムでのツーリングを前提に開発され、カタログでもパートナーとのシーンが盛り込まれています。

シートも運転席だけでなくパッセンジャー側の快適性、座り心地を徹底追求し、オプションパーツでもバックレスト付きのトップケースが最初から用意されました。
また、フロントがボリューミーなのも、リヤまわりにラゲッジケースを備えたときに好バランスだと開発チームも教えてくれます。
話をDCTに戻すと、変速のショックがないと、タンデム走行で起こりがちなシフトチェンジに前後のライダーのヘルメットがコツコツと当たる不快さを解消してくれます。今回の試乗は残念ながらソロだけでしたが、次回はぜひタンデムで長い距離を乗ってみたいものです。
ロードスポーツならではの前後17インチ
ロードスポーツツアラーと名乗るのは、前後17インチならではの軽快感と安定性をバランスさせたハンドリングで納得がいきます。キャスター角26度30’、トレール108mmに設定、前輪分担荷重を51%にしつつ、前後150mmと長めのサスペンションストロークを与え、最低地上高173mmを確保しました。ワインディングを気持ちよく駆け抜け、荒れた路面も神経を尖らせずに走破できます。

また、フロントまわりはボリューミーなものの、ステアリング機構にヘッドライトやメーターなどは一切備わってなく、ハンドリングが軽やかなことも疲れにくさに貢献しています。アルミテーパーハンドルはラバーマウントされ、不快な振動もありません。ハンドル切れ角が38度と大きく、小回りが効くことも付け加えておきましょう。
フロントブレーキは、ニッシン製対向4ピストンラジアルマウントキャリパーと310mmディスクの組み合わせ。ホイールはハブを中空構造とした「ファインダイキャスト製法」を採用。

スポークがリムに斜めに接する交差形状で、路面からの振動をしなやかに受け止め、旋回時には高い剛性を発揮。スポーティさな走りを実現しつつ、快適な乗り心地と高い安心感を両立しています。そう、全方位にスキのないオールラウンダーなのです。
真冬の高速道路も寒風知らず
高速巡航力の高さには、目を瞠るものがあります。6速100km/h巡航は3300rpmでこなし、エンジンはそこからまだまだ余裕たっぷりと言わんばかり。ジェントルながらパンチの効いたサウンドを伴いつつ、高回転までパワーが盛り上がっていき、ハイスピードレンジでこそ真価を発揮と言わんばかりです。

クルーズコントロールはセット後も1km/h刻みで速度調整ができ、高速道路で重宝しました。なければならないと思うほど、ありがたい。
大型のウインドスクリーンは高さと角度を5段階に手動で調整可能。最も高い位置はローポジションから165mmも上がり、風はもう上半身に当たりません。
ウインドプロテクションへのこだわりは、強力なハイスピードツアラーらを敵に回す欧州市場でも成功を収めるカギなのでしょう。腕まわりをアッパーディフレクター、足もとをロワーディフレクターで守り、真冬の試乗だったにも関わらず寒さも感じないから驚きます。グリップヒーターが標準装備され、『NT1100』は新車時から防寒仕様でもあるのです。

装備面を言えば、ETC2.0車載器も新車時から備わっていて、6.5インチタッチパネル式TFTフルカラー液晶のマルチインフォメーションディスプレイは見やすく、Apple CarPlayやAndroid Autoに対応し、スマートフォンをUSBケーブルで接続することにより、スマートフォンのアプリケーションを使用することができます。
ただひとつ不満なのは、ウインドシールドの上げ下げをシートから降りてしなければならず、これを走行中でも操作できるよう電動化していただけたら言うことがありません。高速道路に入る前に、せっかく秀逸な風防を下げたままにしてしまっては、次のパーキングエリアまでその恩恵にあずかれないのです。
ついに日本上陸!
さて、ホンダは欧州でオールラウンドに使えるツーリングモデル『NT650V Deauville』(1998~2005年)、『NT700V Deauville』(2006~2013年)を販売してきましたが、日本ではまだ馴染みがありません。スポーツとツアラーが融合し、快適で多用途性に優れる「NT」が、今回の新型『NT1100』の登場でついに日本のバイクファンに浸透していく予感がします。

価格は168万3000万。マットな仕上げでモダンな印象の「マットイリジウムグレーメタリック」と、エレガントな色合いで洗練された印象の「パールグレアホワイト」の計2色が設定されました。厳冬の高速が快適すぎたので、今度は夏真っ盛りにも乗ってみようと思います。

Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。





















